琥珀色の戯言

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オール・ユー・ニード・イズ・キル ☆☆☆☆



近未来の地球。侵略者の激しい攻撃に、人類の軍事力ではもはや太刀打ちできなくなっていた。対侵略者の任務に就いたウィリアム・ケイジ少佐(トム・クルーズ)は、戦闘によって命を落としたのだが……


参考リンク:映画『オール・ユー・ニード・キル』公式サイト


2014年24本目の劇場での鑑賞作品。
金曜日の夜、19時からの回で、、観客数は10人くらいでした。
2D字幕版。


この『オール・ユー・ニード・イズ・キル』って、映画館で予告編をみた時点では「たぶん映画館では観ない映画」に仕分けしていたんですよね。
「日本原作」「トム・クルーズ主演」っていうのがババーンとスクリーンに表示されるのをみて、「ああ、そういう『日本人のハリウッドコンプレックス』みたいなのを刺激して、集客しなきゃいけないような映画なのかな」なんて、思ったりもして。


しかしながら、公開されてみると、ネット上ではけっこう評判が良い。
ちょうど他の観たい作品を見尽くしてしまっていたこともあり、今回、映画館でこれを選んだのです。


僕は、桜坂洋さんの原作本『All You Need Is Kill』は未読でしたので、原作との比較はできませんでしたが、観ながら、「ああ、これは『STEINS;GATE』だ!」と思っていました。
まあ、それだけでネタバレになってしまうところもあるので、『STEINS;GATE』って何?っていう人は、知らないまま映画館に行くことをオススメしておきます。
ちなみに、『STEINS;GATE』のXbox360版が発売されたのは2009年10月で、『All You Need Is Kill』は2004年に発表されていますから、『All You Need Is Kill』のほうが先、なんですけどね。


個人的には、この『オール・ユー・ニード・イズ・キル』、けっこう楽しめたのですが、その最大の要因は、この映画、少なくとも前半は「この後、何が起こるのか、ちょっと予想がつかない」ことだったのです。
僕はそんなに映画マニアじゃないんですけど、ハリウッドのSF超大作って、最初の15分〜30分くらい観れば、だいたい、どんな展開で、どんなオチになるのか、見当がつくじゃないですか。
それこそ、先日御紹介した、『スタジオジブリ』の鈴木敏夫プロデューサーの、

 じつはショックだったのは別のこと。若い人に多かった感想です。「何だ、月へ帰っちゃうのか」、こんな感想を言ったのは一人二人じゃない。つまり単にストーリーを追っている。表現を気にしていない。ぼくはいままでずいぶん映画を観てきて、ストーリーなどはおぼろげだが、シーンはいまでもはっきり思い出せるという経験をしてきています。表現の仕方にこそ影響を受けてきた。そういう観方をしないのか。映画に期待しているものがまるで違ってしまっていることにショックを受けたんですよ。現代は、どう表現しているのかがすっとんでしまって、お話の複雑さのほうにだけ関心が向いている、そんな時代なんだなということを、あらためて思い知らされました。

という『かぐや姫の物語』への反応に対する嘆きにもつながってくるのですけど。


いち観客としての僕に言わせると、いまのハリウッド映画の「超大作」って、失敗できないからなのか、あまりに「公式どおりのストーリー」ばかりで、「表現」云々の前に「またこんな話か……」とがっかりしてしまうのです。
それに比べると、この『オール・ユー・ニード・イズ・キル』は、原作未読であれば(そもそも、読んでいないので、この映画がどのくらい原作に忠実なのか、全くわからないんですが……すみません)、「この難関ゲームを前にした有野課長のような状況を、いったいどうやって打開するんだ?」という「先が見えないワクワク感」が味わえます。
「あらすじで読む」と、「ああそういうことね」という感じなのですが、映像として、その絶望的な状況を目の当たりにすると、本当にもう、果てしない絶望感です。
観ていると、よくケイジは「正気」でいられるなあ、って思うんですよね。
その苦悩をあえて描かないのが、この作品の流儀なのでしょうけど。


というわけで、もし興味がある方は、なるべく事前情報を仕入れずに観ることをオススメしておきます。
すごく感動したり、クライマックスが盛り上がったりするような映画ではないのですが、こういう「次はどうなるんだ?」という気持ちで観られる映画って、けっこう久しぶりでした。
後半になればなるほど、オチがどう収束していくのか見えてきてしまうので、僕はつまらなくなってきたんですよね。こういう映画も、けっこう珍しい。


以下はネタバレ感想です。


本当にネタバレですからね。この映画に関しては、とくに「予備知識を得ないで観ること」推奨です。

それにしても、最近、というか21世紀に入ってから、「タイムループもの」って増えましたよね。
「タイムループ」だけではなく、「過去に戻って歴史を改変する」という作品も。
アニメ映画の『時をかける少女』もそうですし、スティーブン・キングは『11/22/63(イチイチニイニイロクサン)』という長編を書きました。
あの同時多発テロの影響なのか、なんとなく、いまの時代を生きている人間には「自分たちは『間違った時代』を生きているのではないか?」という感覚があるんじゃないかなあ。
村上春樹さんの『1Q84』の世界のように。


この『オール・ユー・ニード・イズ・キル』って、「無限にコンティニューできる、超高難易度のゲーム vs 絶対に諦めないゲーマー」みたいなものなんですよ。
プレイヤーは、死ぬたびにパターンを学習して、上達していく。
そして、クリアを目指す。


しかし、実際にそれを目の当たりにしてみると「ゲームオーバーになることが許されないゲームって、きついよなあ……」と考え込まずにはいられません。
人生もセーブできたり、コンティニューできたり、「強くてニューゲーム」できたりすればいいのに!って、僕もずっと思っていたのですけど、この映画で、本当にそれが可能な世界というやつを見ると、「じゃ、死んでリセットしようか」の繰り返し。
「限りある命だから、人は真摯に生きるんだ!」と、『銀河鉄道999』の星野鉄郎のようなことを考えてしまったりもするのですが、この作品そのものは、そんな「お説教じみたもの」じゃなくて、「ゲームのようなことが現実世界でできたら……というのを、ニヤニヤしながら作ってみた」ようにも見えるのです。
何度も何度も惨殺される主人公を見ているうちに、こちらも感覚がマヒしてきて、ゲームのキャラクターに対するのと同じように「あっ、また死んだ」とつぶやきながら、苦笑してしまうようになりました。
そういう「死に慣れてしまう感覚」を味わえることこそが、この映画『オール・ユー・ニード・イズ・キル』の本当の「特徴」なのかもしれません。


この世界の「ルール設定」が、いまひとつわかりくいのは事実です。
敵の正体や、やりたいことも、はっきりしない。
そこで、「これは『現実的』ではない」と反発するか、「ああ、この『世界設定』は、こんな感じなんだな」と受け入れるかで、この映画を楽しめるかどうかが決まってくるのです。


All You Need Is Kill (集英社スーパーダッシュ文庫)

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