琥珀色の戯言

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【読書感想】お金で世界が見えてくる! ☆☆☆☆


お金で世界が見えてくる! (ちくま新書)

お金で世界が見えてくる! (ちくま新書)

Kindle版もあります。

お金で世界が見えてくる! (ちくま新書)

お金で世界が見えてくる! (ちくま新書)

内容紹介
お金は時代をよむ「最強の武器」である!
お金はどう使われているか? 世界の経済はどう動くのか? お金と世界情勢のつながりとは? 日本、アメリカ、ヨーロッパ、アジア、中東、アフリカ、仮想通貨ビットコインまで、世界のお金を徹底解説。ドルの秘密、ユーロの本質、円と社会の関わりなど、お金を見れば、世界の動きは一目でわかる! いまの世界を理解するために必要なエッセンスが、この一冊に。


▼本書で扱うトピックス
円、ドル、ユーロ……世界を動かすお金のすべて
日本銀行の責任と日本の未来
・「ユーロ危機」はなぜ起きたのか
・アメリカドルが抱えてきたもの
・「アラブの春」の後に起きたこと
北朝鮮はなぜインフレになったのか
・独裁者なき後の紙幣はどうなるか
……etc.


「お金」を通じてみた現代史。
このタイトルからは、お金というものについての基礎知識や経済学についての説明の新書ではないかと思っていたのですが、実際は、いま世界で注目されている国では、どんなお金が使われ、どんな経済政策が行われてきたのか、というのが国別に章を立てて紹介されている本でした。
「経済学」というよりは、「各国の歴史を語ること」に重きを置いた内容です。


この新書を読んでいると、お金、とくに紙幣に何が描かれているかというのは、その国が重視しているものの象徴なのだな、ということがわかります。
日本では、その時代の権力者の顔が印刷された紙幣というのが発行されたことはないのですが、外国、とくに独裁制が敷かれているような国では、珍しくもないことなのです。


その結果、こんなことも起こるんですよ、と池上さんは紹介されています。

 独裁国家は、紙幣に独裁者の肖像画を入れるという話は、第2章の北朝鮮のときに取り上げました。でも、もし独裁者が倒された後は、その紙幣はどうなるのでしょうか。
 その典型例が、ここに掲載したリビアの紙幣。旧1ディナール紙幣です。カダフィ政権崩壊後、私はリビアに取材に入り、そこで手に入れました。カダフィ大佐肖像画の顔の部分が塗りつぶされているのがわかりますね。国民は、カダフィの顔など見たくないと、それぞれ勝手に顔をサインペンなどで塗りつぶして使っているのです。
 受け取る方も、見たくないのですから、そのまま通用しています。

実際にカダフィ大佐の顔が真っ黒に塗りつぶされた紙幣の写真も掲載されています。
日本人であり、日本で生活している僕の感覚では、「お金に落書き(?)して良いの?」と思うのですが、リビアでは、これが普通に使えるのか……
そんなことして、使えなくなったらどうするんだろう、とか心配するよりも、「とにかく独裁者の顔なんか見たくない!」のだなあ。
独裁者から解放された人たちの「怨み」は凄い。


また、こんな「すわりが悪い額の紙幣の話」も紹介されています。

 もし日本のお札に、150円紙幣や450円紙幣、900円紙幣があったら、どうでしょうか。
 ちょっと考えられないですよね。そんな奇妙な紙幣が存在していた国、それが不思議の国だったミャンマーです。ミャンマーの通貨の単位はチャット。15チャットや45チャット、90チャットなどの紙幣が使われていたことがあったのです。写真は、その45チャット紙幣です。
 それどころか、25チャット、35チャット、75チャット紙幣が使われていたこともあります。

 アウンサン亡き後、独立したビルマ共産党少数民族が反乱を起こして国内は混乱に陥ります。これに業を煮やした軍部は1962年にクーデターを起こし、ネ・ウィン将軍が全権を掌握。一党独裁社会主義国家を樹立します。
 この時代に、奇妙な紙幣が発行されたり、突然廃止されたりを繰り返します。1985年には20チャット、50チャット、100チャットが廃止され、代わって25チャット、75チャットが発行されました。合計すれば100チャットになるというわけです。
 さらに15チャット、30チャット紙幣も発行されます。
 ところが1987年には25チャット、35チャット、75チャットも廃止、その代わりに(代わりになるのか、どうか)45チャット、90チャットが発行されたのです。
 ビルマは星占いの盛んな国。私が2013年1月に取材に行ったときにも、多くの庶民が人生を占ってもらっていました。奇妙な紙幣も、ネ・ウィン将軍のお抱え占い師が示した「縁起のいい数字」に合わせて発行しただろうと庶民は噂をしたものです。


 25とか、75というのは、「半分の半分」「4分の1」という感覚で、わからなくもないのですが35チャットとか45チャットなんていうのは、お金の計算が大変だし、「なんでそんな中途半端な紙幣を出したんだ?」と言いたくなりますよね。
 ミャンマー(当時はビルマ)の人たちも、大変だったのではないでしょうか。
 しかし、それ以上に驚いたのは、「こんな中途半端なお金をつくった理由」が、庶民には明示されていないことなのです。
 みんな不便だったでしょうし、不満もあったはず。
 でも、それを黙って受け入れざるをえないのが「独裁国家で生きる」ということなのですね……

 
 南アフリカ共和国では、長年、紙幣に動物が描かれていたそうです。

 金額の低い順から高い順に、サイ、ゾウ、ライオン、バッファロー、ヒョウの5種類です。
 これらは「ビッグ5(ファイブ)」と呼ばれています。白人が狩猟をしていた頃、この5種類の動物が、大きな獲物として人気があり、こう呼ばれたのです。その人気動物が、紙幣の肖像画になっていました。


 ところが、2012年の11月から発行された新紙幣には、人間の肖像画が描かれることとなりました。

 それにしても、これまでなぜ人間の肖像画でなく、動物が描かれていたのか。そこには、肖像画にふさわしい人物を選ぶことができなかったという南アフリカの負の歴史があったからです。それがアパルトヘイトであり、それと果敢に戦ったのが、マンデラでした。マンデラは、新生南アフリカを建設します。マンデラだけが、紙幣の肖像画になる資格があったのです。


 それぞれの国にとって、「お札に描かれる人物」というのが、まさに「象徴」であるというのが、伝わってくるエピソードです。
 日本の場合は、「政治家は時代や見るひとの立場によって評価が変わってしまうことがあるので、文化人を起用している」ようです。
 お金はお金、というふうに割り切っていられる日本という国は、幸福なのかもしれませんね。
 少なくとも、お札を一枚一枚塗りつぶすような手間が不要な分くらいは。

 

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