琥珀色の戯言

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【読書感想】YouTubeで食べていく 「動画投稿」という生き方 ☆☆☆


YouTubeで食べていく 「動画投稿」という生き方 (光文社新書)

YouTubeで食べていく 「動画投稿」という生き方 (光文社新書)


Kindle版もあります。

YouTubeで食べていく?「動画投稿」という生き方? (光文社新書)

YouTubeで食べていく?「動画投稿」という生き方? (光文社新書)

内容(「BOOK」データベースより)
動画投稿で稼ぐ人が増えている。多くの再生回数が見込めそうなテーマを立てて自分で出演、撮影・編集までこなす、いわば「ひとりプロダクション」。休日の副業にしている人から、ある程度の収益が見込めるようになったのち、動画一本で生計を立てる人まで活用法はさまざまだ。広告収入を上げるコツ、SNSでの拡散法、最適な動画共有サイトは人によってそれぞれ異なる。「稼ぎたい」「有名になりたい」という願望は、YouTubeで簡単にかなえられるのだろうか?日本で最も動画共有サイトの立ち上げに携わってきたビデオブロガーが、トップクリエイターたちへのインタビューを交え、動画投稿ビジネスについて考える。


僕はずっとブログを書いているので、文章系のブログでの、広告やアフィリエイトについてはそれなりの知識があるつもりなのですが(自分自身が稼げているかどうかはさておき)、YouTubeでの動画投稿でお金を稼いでいる人たちがいるというのは知りませんでした。
文章系の個人ブログを書く人とYouTubeニコニコ動画に投稿する人たちって、なんとなく「近い」ような気がしていたのだけれど、この新書を読んでみると、やっている人も観ている人も、けっこうはっきり分かれているんですね。
たしかに、僕自身、動画共有サイトは、ほとんど観ないものなあ。

 今やテレビをしのぐほどの影響力を持つと言われる動画サイトですが、これ一本で食べていくとは一体どういうことなのでしょう?
 現在、動画投稿で得た収益で生活しているのは北米のYouTubeユーザーが中心ですが、一説によると、日本におけるYouTube動画の総再生回数は米国に次いで世界第2位とも言われます。こうした、YouTubeに動画をアップして人気者になったり、お金を稼いだりしている人たちのことを”ユーチューバー”と呼びます。


文章を書くことに比べると、なんとなく「敷居が高い」ような気がする動画投稿の世界なのですが、どのくらい「儲かる」のか?
報酬に関して、グ―グルでは1再生あたりの報酬額は公開しておらず、ユーチューバーも報酬の詳細は公開してはいけない規約になっているそうで、著者は、おおまかな目安として、次のように書いています。

 報酬額は変動しますしユーチューバーによっても違ってきますが、だいたいの見当としては、1再生あたり0.1〜0.3円というところでしょう。仮に1再生当たり0.1円だとしたら、1万回再生されて1000円。100万回再生されて10万円です。「動画投稿で稼げる!」といったオイシイ話を耳にしたことのある人は、あまりの少なさに意外に思えるのではないでしょうか。
 動画で稼ぐこと。動画一本で食べていくことは、本当に大変なことです。報酬を得るために、ユーチューバーたちはどうやったら動画を見てもらえるか、100万回再生されるネタとは何か、頭をひねっているのです。


「1万回で1000円」か……
大ホームランを飛ばせれば、かなりの稼ぎになる可能性はあるんですけどね。
この本によると、韓国のミュージシャンPSY(サイ)のミュージックビデオ「江南スタイル」は、約20億回も再生されているそうです。
あのミュージックビデオが、再生回数に応じてお金がもらえるような契約をしていたとすれば、2億円くらいの報酬になったと思われます。
しかし、こういうのはごく一握りの成功例であり、「100万回再生された大ヒット動画」でも10万円とするならば、1ヵ月に30万稼ぐのも大変なことです。
オリジナルの動画で持続的に稼いでいくのなら、それなりに準備も必要でしょうし。
著者は、主にデジタルガジェットの紹介を動画で投稿しているそうなのですが、大阪芸大の映像学科出身で、映像作家としても受賞歴があります。
動画投稿の世界は、文章だけのブログで食べていくよりも技術が必要なため競争率は低いのかもしれませんが、参入障壁はけっこう高そうなんですよね。
そりゃ、素人が撮ったブレブレの動画とか、誰も観たくないだろうし。


この本のなかでは、実際に”ユーチューバー”として稼いでいる人たちへのインタビューや、著者の「YouTubeで再生してもらうための工夫」が紹介されています。
著者は、通勤電車などで、実際にリサーチを行い、ある仮説を導きだしました。

 こういったことを何度か繰り返してふと考えついたのが、「通勤中にiPodで見る動画コンテンツに最適な尺はおよそ90秒」だということです。私自身の体験から得た仮説でしたが、のちにYouTubeや視聴時間の解析などからも裏打ちされ、定説となりました。
 ただ最近では、テレビ代わりにYouTubeを見ている若年視聴者も増えており、90秒では物足りないらしく、「どうしてこんなに短いんですか?」と聞かれることもあります。
 当然のことながら、単純に時間を90秒程度に収めるだけでは見てもらえません。90分の長編映画なら最初の10分で観客を引き込まなければいけないというセオリーがあります。いわゆる「つかみ」です。これが90秒のYouTube動画の場合だと最初の10秒が勝負。動画の冒頭、アバンタイトル(オープニング前に流れるシーンのこと)の段階で、ちらっとオチを匂わせるくらいの勢いが必要です。
 では、90秒を超える尺ではいけないかというと、そんなことはありません。90秒で視聴者が離脱するということであれば、60秒から90秒にかけて起承転結の「転」をあてて、その後が気になるような構成で回避することも可能です。長編映画にしろテレビドラマにしろ、飽きずに最後まで注目できる作品は、それぞれのシーンや話の区切りのなかで山場がちゃんとあるものです。


「90秒」って、かなり短いような気がしますよね。
でも、これが「YouTubeで多くの人に観てもらうための最適時間」なのです。
しかも、「90秒くらいなら、必ず最後まで観てくれる」というわけでもない。
90秒の動画なら、最初の10秒で、観つづけるかどうか、決められてしまうのです。
30分のものを90秒ずつ細切れにするような感覚ではダメだ、ということなんですね。
それにしても、みんな忙しいよなあ。
いや、あらためて考えてみると、僕もそんなに我慢強くないな、とは思うのですけど。
テレビ番組では、制作費の関係もあって、すぐに「『ながら視聴』ができる、2〜3時間のスペシャル番組」になってしまうのに比較すると、動画の場合は、より短く、「密度」を高めなければならないのです。


いま活躍している”ユーチューバー”たちへのインタビューも収録されているのですが、総じていえば「この世界で食べていくのは、ラクじゃないなあ」ということに尽きると思います。
「働きたくないから、動画投稿で食べていく」なんて、夢のまた夢で、「何がウケるかを考えて、ちゃんとした動画をコンスタントに作りつづける」しか、生き残る道はないのです。
しかも、よほどのことがなければ、そんなに大儲けはできない。


著者は、動画投稿でお金を稼ぐことについて、こう言っています。

20代という若さながらも、しっかり自分のプランディングを考えているHIKAKINさん。ニュース性のあるトピックをフォローし続けるアリケイタさん、動画界を挑発しつづけるシバターさん、本職とどう両立させていくか模索しつつも、動画を活用している劇団スカッシュ、新たな仕組みを作りたいMEGWINさん、動画を自社製品の販促に生かすAPPBank……。さまざまなユーチューバーがいます。ビジネスのプラットフォームも整いつつあることも述べました。そのうえで、やはり私個人としては、「YouTubeで大きく稼げる」というのは絶対に違うと感じています。
 YouTubeの役割は、「稼げる」「儲かる」ことではなく、むしろ社会におけるセーフティネットに近いものではないかと感じています。
 10年前にはなかったこうした仕組みがあれば、初期投資ゼロで、お小遣い程度であってもお金を得ることができるのです。たとえば、食えないと言われる業界で夢を追う若者を支えるものになりうるかもしれません。
 女性が活躍できる場としても見直される可能性は大いに期待できるでしょう。女性の社会進出が叫ばれていますが、育児や家事と両立しながら会社勤めをするのは現実的に苦しいものです。しかし、家事や育児の傍ら、女性・母親の視点を生かして、面白い動画を作ることができるかもしれません。ユニークな家事のコツや料理など、女性目線のコンテンツは視聴者の幅を広げてくれることでしょう。現に、母親の撮影による子どもの動画が人気を博しています。
 私自身も、会社を辞めた際、何本かの連載執筆とブログや動画で、幾ばくかの収益をあげていたことが助けになりました。


動画投稿だけで、大きく稼いで、食べていくのは難しい。
でも、プラスアルファの副収入として、あるいは、一時的な収入源としての意義はある。
実際のところ、テレビ局などのマスメディアが新たな市場として無料動画配信に本格的に参入してくる可能性はありますし、そんなに「前途洋々」というわけじゃないとは思います。
それは「プロブロガー」とかでも同じなのでしょうけど。


”ユーチューバー”を目指している人も、そうでない人も、「動画ビジネス」についてのこのくらいの知識はあって損はしないはずです。
それにしても、ネットで食べていくっていうのは、そう甘いもんじゃないですね。
それはもう、ネットに限らず、という話ではあるのだけれども。