琥珀色の戯言

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【読書感想】壇蜜日記 ☆☆☆☆


壇蜜日記 (文春文庫 た 92-1)

壇蜜日記 (文春文庫 た 92-1)


Kindle版もあります。

壇蜜日記 (文春文庫)

壇蜜日記 (文春文庫)

内容紹介
賞味期限切れのソースで運試し。新聞を読んでいると、つい求人欄に目がいってしまう。ショックなことがあると、食事もせずにひたすら眠り、たまたま入ったコンビニで肌着類の品揃えが充実していると、他人事なのにホッとする。抱かれる予定はしばらくなしーー。
これぞ裸単騎で現代日本を生き抜く33歳女子の生活と意見! 壇蜜はやっぱりスゴかった!!
文庫完全書下ろし


「有名芸能人本」だしなあ……とあまり期待せずに読みはじめたのですが、なかなか面白かったです、これ。
僕は「日記」というのがわりと好きで、これまでも筒井康隆さん、大槻ケンヂさん、山本文緒さんをはじめとする、数々の作家・有名人日記を愛読してきたのですが、そのなかでも、この『壇蜜日記』は、かなりのお気に入りになりました。
 

 僕も日記を書いているのですが、日記を毎日書いていると、どうしてもマンネリ化するというか、当たり障りのない話題が多くなってきます。とくに「他人に公開すること前提の日記」だと。
 Facebookは、食べ物とお出かけと子供の話しかしない「リア充アピールツール」なんて揶揄されることがあるのですが、実際にやっていると「比較的無難で、コンスタントに書ける話」って、案外少ないのだということを思い知らされます。
 筒井さんのような、交友関係が広かったり、仕事のバリエーションがたくさんあったりする人なら、「日常をそのまま切り取っただけ」でも面白い(というか、僕がファンなので、何が書いてあっても面白いとは思う)けれど、大槻さんや山本さんは「心の病気と向き合う日々」みたいなのもテーマになっています。
 よほど外に向かって活動的であるか、内面に向かって掘り下げ続けるような精神状態でなければ、「読ませる日記」を書きつづけるのは、難しいのかもしれません。
 ところが、壇蜜さんの日記は、そのいずれでもないのに、読み始めると、やめられなくなるのです。


 では、壇蜜さんは、どんな日記を書くのか?
 どうも、「私生活」とか「日常」のイメージがわきにくい人ではありますよね。

 日もくれてから近所の住宅街を自転車で通り過ぎる。民家から出てきたマダムが若い女性と話していた。「羨ましいわ」とマダム。「お恥ずかしいです」と若い女性。この言葉を私が2人の会話が完全に聞こえなくなるまでの間、お互いに4ターンは続けていたと思う。何が羨ましくて何が恥ずかしいのかは全く聞き取れなかったが、このような会話はいかにも日本らしくて微笑ましい。「今週も袋とじなんですって? 羨ましい〜」「いやですわもう、お恥ずかしいです」……違うか。


 日記に書かれているのは、ほとんどが壇蜜さんの「身のまわりで起こった話」なのです。
 近所のスーパーやコンビニの話もよく出てきます。
 そして、壇蜜さんは「日常のちょっとした一瞬」を切り取るのが、すごく上手い。
 ちょっと自虐的にすら思われるユーモアが発揮されることもあれば、やり場のない憤りみたいなものが伝わってくる日もあります。


 壇蜜さんの日記には「おいしい食べ物」の話は、ほとんど出てきません。
 もちろん、美味しいものを食べた、という日もあるのですが、「食べ物へのこだわり」みたいなものは、ほとんど感じられないのです。
 カップラーメンを食べて終了、みたいな日とか、ずっと昼寝していた、とか、飼っている熱帯魚の水槽のコケを取っていた、なんていう日もあります。
 芸能界の友だちとの交友とか、仕事での高揚感、が語られることもほとんどないのです。


 なんというか、すごく淡々と生きているように見えるんですよ。
 でも、その一方で、こんな「こだわり」もある。

 何故、かしこまって座る「ニュースステーション」の元キャスターの隣で、「いつものセクシーポーズ」とやらをとれというのか先ほどのカメラマン。いつものとは、一体いつの事をいっているのだろうか。私は場所も趣旨も関係なく谷間や尻を見せなくては価値がないのだろう、その人にとっては。価値の無いものを撮らせて申し訳ない。しかし、今回始まる番組では胸や尻を出さないのだ。ご理解もいただけずそれでも価値がないのなら、そのキャスターだけを切り抜いて使って欲しい。

 私のような仕事を持つ者はうっかりすると(望んでいてもいなくても)毎日が祝日という日々を送ることになる場合もある。どうやら最近の私はキー局というくくりのテレビ番組に出ていなければ「消えた」と言われ、出ると「飽きた」と言われるようだ。水槽の掃除でもするか。

 けっして、芸能人として与えられた役割を果たすだけの「お人形さん」になっているわけでもないのです。
 というか、「お人形さん」ではいられない、マグマみたいなものが内面にはある。
 そして、この日記そのものも「壇蜜が書いている」のか、「壇蜜を演じている33歳女性」が書いているのか、ちょっとわからなくなってしまうところがあります。
 なんだか、あまりに「壇蜜」らしいので、かえって、フィクションのようにも感じてしまう。


 あと、ちょっとナンシー関さんが書く文章っぽい感じがするんですよね。
 この「水槽の掃除でもするか」という緩急のつけかたとか。
 壇蜜さんは、もしかしたら、「壇蜜ウォッチャー」として、これを書いているのかな。

 休みだと言うと仕事が無いのかと言われる。だから最近休みでも休みと言わない。だんだんと外を出歩かなくなったと言えば、頭がおかしくなったのではと言われる。この世界で人間をやっていると「ちょうどよい」という事はほとんどなく、人生の大半はちょうど良さを山の彼方のように探しながら折り合いをつけて生きてゆくのだろう。熱帯業のエサの分量ですら毎日ちょうど良いを探すのが難しいのだ。そんなことを、散らばった水面のエサを見ながら思う。今日は少しあげすぎた。

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