琥珀色の戯言

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ゴーン・ガール ☆☆☆☆



あらすじ
ニック(ベン・アフレック)とエイミー(ロザムンド・パイク)は誰もがうらやむ夫婦のはずだったが、結婚5周年の記念日に突然エイミーが行方をくらましてしまう。警察に嫌疑を掛けられ、日々続報を流すため取材を続けるメディアによって、ニックが話す幸せに満ちあふれた結婚生活にほころびが生じていく。うそをつき理解不能な行動を続けるニックに、次第に世間はエイミー殺害疑惑の目を向け……。


参考リンク:映画『ゴーン・ガール』オフィシャルサイト


 2014年37本目の劇場での鑑賞作品。
 平日の夕方の回で、観客は10人くらいでした。カップルが2組。
 予告を観た時点では、そんなに興味はわかなかったのですが(というか、既婚者としては、「悪い予感がする作品」ではありました)、デヴィッド・フィンチャー監督の作品ということで。

 
 結婚生活5年目の妻がいきなり家からいなくなり、邸内には妻の血痕や、血を拭き取ったあとなどが残されていて、妻の夫に嫌疑がかけられ……という話。
 僕は「妻の失踪の謎を解明するミステリ」だと思い込んでいたのですが、これは、男と女というか、「結婚生活」というものの根源的な居心地の悪さ、みたいなものを容赦なく描いた作品でした。


 「奥さんの血液型を知っていますか?」「奥さんがあなたのいない昼間に何をしているか、ご存知ですか?」
 ……うーむ、前者は知っているけれど、後者は考え込むしかない。
 日本人は血液型大好きだから、占いのためだけに「血液型を調べてほしい」と病院に来る人がいるくらいなのですが(それなら、献血に行くという手もあるのだけど、無料だし)、血液型に日本人ほどこだわりのない国の人にとっては、ハッとさせられる質問なのだろうなあ。


 物語のなかで、「夫婦」に関する、お互いの秘密が(観客には)暴かれていくのですが、これがもう、知れば知るほど、どっちが悪い、とかいうより、「なんでこのふたり、結婚しちゃったんだろう……」というやるせない気持ちになってくるのです。
 お互いに、「なんでも相談して、助け合ってやっていこう」としていたはずなのに、いつのまにか、ギスギスして、顔をあわせるのもつらくなってしまう。
 顔を見るたびに、不満しか言わない妻と、まともに話を聞いてくれない夫。
 夫の立場からすれば、「何を言っても文句しか言われないんだから……」だし、妻からすれば「文句を言われるようなことばかりやっているんだから、仕方がない。だいたい、話も聞いてくれない」
 このままではいけない、とわかっているのに、溝は深まるばかり。


 この「ゴーン・ガール』、「特別な人間」を描いているようであり、どんな夫婦にも起こりうる話でもあり、カップルで来ていたら、観終えて、しばらく絶句してしまいそうな作品なのです。


「頑張っているあなたが好き」ならば、ずっと、頑張り続けなければならないのか?
 でも、多少なりとも頑張らないと、人は、人をなかなか好きにならないものですよね。
 とくに、「普通の人」の場合は。
「自然体のあなたが好き」って言う人をみるたびに、僕は、松たか子さんが以前、ラジオ番組で行っていた、この言葉を思いだすのです。

「周りからは自然体といわれることもあるけれど、私にとっての自然体というのは、その場の雰囲気を読んで、それにあった、相手が自分に期待しているであろう行動をすることなんです。それが『自然体』と言われているだけで」


 人は、大なり小なり、何者かを「演じている」。
 「うちはここまでじゃないはずだけど……」と自分のなかで否定しつつも、「こういう、夫婦が悪意もないのにすれ違っていく感じ」というのは、他人事じゃないよな、と思うのです。
 また、夫の双子の妹さんが、ものすごく微妙な感じ、なんだよなあ。


 ひたすらモヤモヤさせられて、どう収束させるのかと思っていたら……
 なんなんだこれは!いや、これぞまさに、デヴィッド・フィンチャー作品!
 あまりにも「らしい」終わりかただったので、僕はちょっとニヤニヤしてしまいました。
 さすがはフィンチャーさん! 観客をスッキリした気持ちで家に帰すなんて不誠実(?)なことはしません!


 クリスマスに、ぜひ、恋人どうしで!


 ……観ないほうが絶対にいいですよ、これ。
 なぜこの時期に公開したんだ……もしかしたら、クリスマスカップルへの、ものすごく遠回しな嫌がらせ、なのか?

 これを2人で観て、「うははははは、さすがフィンチャー!」って笑い飛ばせるようなカップルなら、すごくうまくいくかもしれないけれど。


 僕にとっては、「映画としては、大好きだし、面白かった」。
 でも、ひとりの夫としては「これはちょっと勘弁してくれ……」という映画でした。