琥珀色の戯言

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【読書感想】マリファナも銃もバカもOKの国 言霊USA2015 ☆☆☆☆



Kindle版もあります。

内容紹介
スラングから紐解く爆笑アメリカ裏事情!


辛口批評と痛快ギャグで日本人の知らない最新アメリカ事情をメッタ斬り。週刊文春の人気連載が一冊に。これであなたも米国通!?


 町山智浩さんの「映画本」「アメリカ本」にハズレ無し。
 いまの日本や世界の(上)半分を知りたかったら池上彰さんに、アメリカの(下)半身に興味があれば町山さんに聞くべし。
 僕はこのシリーズ、前作も読んでいるのですが、アメリカという国では、日本の硬派なニュースでは伝えられないようなさまざまな「変化」や「試行錯誤」がずっと続いているということに驚かされます。


 この本のなかに「マリファナ大麻)合法化」の話が出てくるんですよね。

 コロラドマリファナを買いに行った。コロラド州では、マリファナを完全に合法化する法案が、2012年の州民投票で過半数を得て、2013年1月1日から実施されている。


(中略)


 受付でカリフォルニアの運転免許証を出した。21歳以上であることを証明できれば他州の免許証でも外国のパスポートでも構わない。
「医療用? 娯楽用?」と店の人に尋ねられる。医療用マリファナの売買は、1996年にカリフォルニアなど全米のいくつかの州で合法化されている。寝不足、憂鬱、腰痛、理由は何でもいい。健康上の理由でマリファナによるリラックスが必要であると医師に訴えれば、購買許可証が発行される。だが、娯楽用のマリファナ売買までが合法化され販売開始したのは今のところコロラドだけ。
 もの珍しさで買いに来た観光客だと言うと、「じゃあ、いちどに買えるのは1オンス(約28g)までです」と言われる。でも、他の店にハシゴすればいくらでも買える。


 ちなみに「タールを吸わないですむ水パイプを選び、1オンスのマリファナと清算すると2万円ぐらいだった」そうです。そのうち30%は税金。


 この話を読んで、僕の大好きな作家である中島らもさんが「マリファナ解禁」を主張していたのを思い出しました。ただし、いくら大好きな作家でも、僕は「マリファナ解禁に対しては、らもさんに反対」だったんですよね。
 いくらなんでも、そこは共感できないな、と。
 とくに健康に害はないとか、依存性が少ないとか言うけれど、「麻薬」だし、「街がラリった人ばかりになったらどうするんだ」と思ったので。


 しかしながら、コロラド州が無法地帯になっている、ということもないそうです。

 コロラド州ではマリファナOKでも、他の州に持ち込めば、その州の法律で裁かれる。ただ、現在、アメリカ全体でマリファナのdecriminalization(非犯罪化)が進み、未成年や営利目的でない大麻の使用や所有は罰しないことが慣例化している。そんな細かい罪でいちいち逮捕することでかかる税金の無駄を削減するのが目的だ。

 このコラムを読んでいると、マリファナを合法化することによって、麻薬カルテルの資金源を断つことができる、という狙いもあるのです。
 「2014年7月には、ワシントン州で販売が開始され、オレゴン、アラスカなども続いている」のだとか。


 僕は「マリファナが合法の国はオランダ」というイメージしかなかったのですが、あの平和そうなカナダでは、すでにマリファナは非犯罪化されているんですね。


 日本ですぐに合法化の方向に進むとは思えないのですが、世界はそこまでマリファナに対して寛容になっているのか、と驚かされました。
 アメリカは、ドラッグには厳しい国だと思っていたのに。
 いや、厳しいからこそ、「まだこのくらいしか解禁されていない」と言うべきか。


 町山さんが、アメリカでいま放送され、話題になっているドラマやドキュメンタリーのことを紹介してくれるのも面白い。

『キャットフィッシュ』は、若い写真家ニーヴ・シュルマンがフェイスブックで知り合ったミーガンという女性を探すドキュメンタリーだ。ミーガンはブロンドの美女。モデルだという彼女のセクシーな写真を見てニーヴは恋に落ちてしまう。ネットでチャットを重ね、電話でも話すようになり、会話もだんだんエッチになり、ニーヴも自分のヌード写真を彼女に送り、ついには互いに「愛してる」と告白する。結婚するぞ! と浮かれるニーヴだが、ひとつ気になるのは、ミーガンが一度も直接会ってくれないことだ。
「それってインチキなんじゃない?」
 親友のカメラマンはきわめて普通のことを言うが、恋するニーヴはミーガンを疑わない。そこで彼らは彼女の住む町に直接乗り込む……。


 そこで彼らが見たものは!
 その一部始終をビデオで撮影していた彼らが、それを映画にまとめたのが『キャットフィッシュ』という作品で、公開後スマッシュヒットとなったそうです(日本では未公開)。
 

『キャットフィッシュ』はその後、テレビ番組になった。ネット恋愛の相手が会いたいのに会ってくれない人の依頼を受けて、ニーヴたちがその正体を探っていく。

 これ、観てみたい!
 ネットを通じての恋愛というのは、初期のころは、「お互いの顔も本名も知らないふたりが、メールのテキストから人柄を感じ、惹かれあう」みたいな話が多かったのですけど、テクノロジーの進化と普及によって、「ネット上だからこそ、見た目だけで判断されてしまう」のが当たり前になってしまったのは、昔を知る人間として、「どうしてこうなってしまったんだろうな」と感慨深いところがありますね。


 これを読んでいて痛感したのは、アメリカという国は、良く言えば「多様な価値観がある」、悪く言えば「あまりにも分断されている」のではないか、ということでした。
 クリント・イーストウッド監督の『アメリカン・スナイパー』という映画は、イラク戦争で活躍した伝説の狙撃兵、クリス・カイルさんの自伝をもとにした作品です。

「狙撃兵は卑怯者だ。英雄なんかじゃない」
 マイケル・ムーア監督はツイッターでそう批判した。彼はドキュメンタリー映画『華氏911』(2004年)で、イラクに9・11テロの黒幕という濡れ衣を着せて攻め込んだブッシュ大統領を批判した。『アメリカン・スナイパー』でムーアが許せないのは、9・11テロをテレビで観たカイルがイラクの戦場に行くシーンだ。セリフはないが、これでは9・11テロの犯人がイラクだったみたいだ。
「この映画を悪く言うサヨクどもは英霊の墓に唾を吐いているのよ!」
 元副大統領候補サラ・ペイリンら、右寄りの人たちは、『アメリカン・スナイパー』批判者たちを「反米」「売国奴」呼ばわりした。カントリー歌手クレイグ・モーガンは「文句があるならこの国から出て行け!」とまで言った。
 間違っている。右も左も、本当に『アメリカン・スナイパー』を観たのか。この映画はイラク戦争も賛美してないしカイルを英雄視してない。戦争の大義を素朴に信じた男が壊れていく物語なのだ。


 僕も町山さんと同じように感じたのです。
 というか、マイケル・ムーア監督の主張は「政治的には正しい」のかもしれないけれど、カイルさん自身が「イラクが悪い」と思い込んでいたのだとしても、それを映画化する際に「修正」するべきなのか?
 町山さんの愛読者にはお馴染みのサラ・ペイリンさんに関しては、「ああ、この人、相変わらずだなあ!」と、定番ギャグを観るような気分になり、むしろ微笑ましくなってしまいます。
 でも、この人が「元副大統領候補」だというのは、シャレにならないよねえ。


 いまの「アメリカ」を知りたい人、そして、「面白くて、ちょっと世界のことがわかったような気分になれるコラム」を読みたい人におすすめです。
 気になった方は、ぜひ。


 
参考リンク:映画『アメリカン・スナイパー』感想(琥珀色の戯言)

 

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