琥珀色の戯言

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マッドマックス 怒りのデス・ロード ☆☆☆☆



あらすじ
資源が底を突き荒廃した世界、愛する者も生きる望みも失い荒野をさまようマックス(トム・ハーディ)は、砂漠を牛耳る敵であるイモータン・ジョー(ヒュー・キース・バーン)の一団に捕らわれ、深い傷を負ってしまう。そんな彼の前に、ジョーの配下の女戦士フュリオサ(シャーリーズ・セロン)、全身白塗りの謎の男、そしてジョーと敵対関係にあるグループが出現。マックスは彼らと手を組み、強大なジョーの勢力に戦いを挑む。

参考リンク:映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』公式サイト


 2015年15作目。
 平日のレイトショーで観賞しました。
 観客は僕も含めて5人。全員中年男。こういう客層なんだよな、と妙に納得してしまいました。
 まあ、家族と一緒とかデートなら、まずは『アベンジャース』に行きそうなものですし。


 観はじめて、いきなりの「輸血袋」にけっこう笑ってしまいました。
 あれ絶対清潔操作不十分だろ!
 メカはあんなに発達しているのに、医療ずさんすぎ!でも、これがマッドマックス!
 マックス、最初の3分の1くらいは、鉄仮面みたいなのかぶせられて喋れないままだし。
 よくこんな怪しい人を信用できたな、という感じです。
 そのフュリオサも「何度も脱走を試みた」そうで、なんでそんな危険分子を責任ある立場に……と言いたくもなりますが、そういう野暮なことは言わないのがマッドマックス!


 この映画、ほんと、いろんな設定がありそうなんですが、ほとんど「説明」がないんですよね。
 物語のなかで、観客が読み取ってくれ、ということなのか、意味ありげで無いのが『マッドマックス』なのか。
 そういう意味では、「砂漠とカーチェイスの『エヴァンゲリオン』」みたいなものかもしれません。
 『ALWAYS 三丁目の夕日』みたいな「なんでも登場人物が説明してくれる親切設計」とは、極北にある映画です。
 これはこれで、いろんな「解釈」をする人もいるのが、映画というものの面白さ、ではありますね。
 というか、僕はこっちのほうが好きです。
 観客として、信頼されている気がする。


 それにしても、この『怒りのデス・ロード』はすごい。
 映画の宣伝で、よく「全編アクションシーン」なんていうのがありますが、まあ、だいたいは「けっこうアクションシーンが多いですよ」というくらいの意味です。
 ところが、この『マッドマックス 怒りのデス・ロード』は、ほんとうに「ノンストップ・アクション映画」なんですよ。
 途中で、「これでようやく落ち着いたか……」と思わせたところで、また突っ走りはじめちゃうし。
 MSXの『グラディウス2』かよ!……と、ほとんどの人にはわからないであろうツッコミを入れつつ、最後まで堪能させていただきました。
 こういうのって、普通「メリハリをつけて、アクションを際立たせるために、静かなシーンを入れるべきだ」とかいうのが「王道」っぽいじゃないですか。
 そんなの知るか!それが、マッドマックス!


 実は『マッドマックス』未体験で、旧作の『1』『2』『サンダードーム』と、予習したんですよね。
 率直な印象は、「今はじめてみたら、車とバイクの激突シーンとか、子どもがやられちゃうシーンのせつない演出とかを除けば、そんなにインパクトないな」だったんですよ。
 リアルタイムで観た人たちは、記憶で美化しているのかもしれないけどさ。


 でも、この『怒りのデス・ロード』は、「マッドマックス(とくに『2』の世界観」を活かしつつ、カーアクション映画としては、大幅にパワーアップしています。
 規模もそうだし、アクションシーンの迫力やバリエーションの多さ、世界観の極北っぷりも。
 27年前のファンに、同じように「MAD」を感じさせるには、ここまで進化しなければならなかったのか。


 『サンダードーム』では、「『マッドマックス』だから、斬新な世界を創りあげなければ」という強迫観念に駆られてしまったのか、「奇を衒いすぎて、観客を不安にさせてしまう世界」になっていたのですが、今回は、ジョージ・ミラー監督も、「そんなら、お前たちが大好きな『マッドマックス2』を突き詰めたヤツを作ってやるよ!」と開き直ったかのような突き抜けっぷりです。
 どうでもよさそうなシーンに、やたらとお金がかかってそうなのも、面白い。
 あの「火を噴くギター」とか、最高ですよね。なんか意味があるのかないのかよくわかんないところも含めて。
 で、「種籾ばあさん」とか「赤毛の少女(リン?)」とか、『マッドマックス(2)』の影響を受けたとされる作品を、今度は「源流」のほうがトレースしてしまうというサービスっぷり。
 

 ほんと、「2時間飽きずに観られて、観終えたあとは『で、どんなストーリーだったっけ、ヒャッハー!」みたいな感じでギター男のこと以外はすっかり記憶から抜け落ちてしまう、そういう娯楽映画」です。
 車とかバイクとかに興味があれば、よりいっそう楽しめるのではないかな。


 個人的には「好きだけど、薦める人を選ぶ映画」でした。
 僕は基本的に、「ストーリー重視派」なので。
 レンタルで良いから、『マッドマックス2』を借りてみて、「大好き!」なら観て損なし。
 「何これ?」なら、『怒りのデス・ロード』も映画館で観る必要はなさそう。


 でもほんと、よくこれだけ惜しげも無くアクションシーンを詰め込んだな、と嬉しくなる映画ではありました。

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