琥珀色の戯言

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【読書感想】ボクはファミコンが欲しかったのに ☆☆☆☆


ボクはファミコンが欲しかったのに

ボクはファミコンが欲しかったのに


Kindle版もあります。

ボクはファミコンが欲しかったのに

ボクはファミコンが欲しかったのに

内容(「BOOK」データベースより)
マサミチは、団地に住む小学生。学校では目立たない少年だけれど、クラスのみんながハマってるファミコンに、やっぱり夢中。友だちの家だけじゃなくって、自分ちのテレビでファミコンをやりたい…でも、親にはなかなか言いだせない。そんなある日、お母さんがこっそりゲーム機を手に入れようとしているのを知るのだけれど―ファミコンをめぐる、「昭和な」ボクらの、純情物語。


 この本の著者の岐部昌幸さん、僕にとっては(というか、この本を手にとった大部分の人にとっても、だと思いますが)、あの『ゲームセンターCX』の構成作家、なんですよね。
 有野課長の隣で、軽くイジられながら、ちょっと困ったような、ひきつった笑みを浮かべている岐部さん。
 『ゲームセンターCX』の#184、『スーパーマリオランド』の回では、台本が遅れたことが、『有野の挑戦』以上に(?)注目されてしまいました。
 この『ボクはファミコンが欲しかったのに』が出版されるという話を耳にしたときには、「ああ、人気番組の構成作家が『便乗本』みたいなのを出したんだな」というくらいの印象だったんですよ。
 でも、実際に読み始めてみると、この本の「世界」にすっかりハマってしまって。
 いや、この本の世界じゃないな、ここには、主人公・マサミチと同じような「テレビゲーム少年」だった(でも、ゲームセンターに武者修行に行くほどの勇気もなく、都会の子でもなかった)僕が、子どもの頃生きていた世界が、ほぼそのまま「再現」されているのです。


 読みながら、「岐部さん、ガチの『お仲間』だったのか……」と、読みながら、なんだかずっとニヤニヤしてしまって。
 書かれていることは、ごくふつうの小学生の日常、「ファミコン」が僕たちの遊びとして登場してきてからの「ごくあたりまえの風景」なのですが、「当時のゲーマーならニヤリとせずにはいられない」細かい描写が満載なのです。

 マサミチは過去に二度ほど「ファミコン買って」と、親におねだりしたことがある。
 一度目は母親だった。
「友だちもみんな持っている」「お小遣い減らしていいから」「テストで100点取るから」「将来、東大に入るから」ありったけの材料を準備して交渉に臨んだが、いずれも「ダメ!」のひと言であえなく撃沈した。
 それは<トランスフォーマー コンボイの謎>で、だれもが初プレイでやらかすあの瞬殺劇よりも早かった。


 最近は、「ファミコンネタ」や「『ドラえもん』などの人気マンガのエピソード」が、脚注なしに小説に登場するのも珍しくはないのですが、<トランスフォーマー コンボイの謎>ですよ!
 ターゲット絞りすぎ!
 そして、見事に狙い撃たれる僕……
 こういう「たとえ」がある程度通用するのも、岐部さんたちがつくってきた『ゲームセンターCX』のおかげ、ではあるのですけど。

 マサミチの小学校ではゲームセンターへの出入りは禁止されている。理由は「不良になるから」。ちなみに喫茶店もダメ。理由は「不良になるから」。子どもたちだけで花火をやってもダメ、理由は「不良に……」以下略。世の中の不良はあれこれ満喫できてうらやましいな、だからみんな不良にあこがれるのか、と思ったものだ。
 ただ、ゲームセンター禁止といっても、それは「ゲームセンターとして構えているお店」を指し、デパートのゲームコーナーならギリギリセーフだった。あくまでも「デパートに行っている」という解釈で問題にはならなかった。

 こういう小ネタに、いちいち反応せずにはいられないんですよね。「昭和のゲーム少年」としては。
 僕が住んでいた地域では、デパートのゲームコーナーでも、「君、どこの小学校?」と、補導員に声をかけられたことが、何度かあったんですけどね。
 そういえば、万引き疑惑をかけてきた大人が、「ポケットの中身を出して」と言ってきて、万引きをしていないことを確認すると、疑ったことを謝罪もせずに立ち去っていたのは、いま思い出しても腹が立つ(それはゲームコーナーではなくて、本売り場でしたが)。大人は「相手は子どもだから」と思うのかもしれないけれど、やられた側は、絶対にそういう大人の態度を、忘れない。


 商業出版としては、あまりにもニッチになりすぎているのではないか、と思うのだけれど、Amazonでこの本のレビューを読んでみると、僕のように「ツボにハマった」元ゲーム少年が多いことに驚かされます。
 書かれている内容は、少年期のけっこう微妙な気持ちを織り交ぜながらの「ありがちな小学校生活あれこれ」なのだけれど、それがまた、「当時は、面白いゲームで遊ぶことが生きがいだった」僕にとっては、かえってリアルで。
 現実は「ありきたり」でも、僕には、次々に発売される新作ゲームがあった。
 当時、なんのかんのいっても「日陰者」だと自認していたゲーマーとしては、いまこうして、「案外、仲間がたくさんいた」ことを知るのは、なんだかとても嬉しいのです。


 最後に、有野課長の「帯コメント」を御紹介しておきます。

よゐこ 有野さん帯コメント
誰も死なないし、成り上がらないし、大冒険もない。
ただ、同じ境遇やった僕の当時のハートを
こそいでくるように、芯にくる物語!
面白い! ただ、、、地味!


――有野課長

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