琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

テッド2 ☆☆☆☆☆


アルバイト先で出会った恋人タミ・リン(ジェシカ・バース)と愛を育み続け、ついに結婚を果たしたテッド。幼いころからの親友ジョン(マーク・ウォールバーグ)との悪ふざけと新婚生活を楽しむ中、彼はタミ・リンとの子供を欲しいと思うように。だが、自分が縫いぐるみではなくて人間であることを証明しなければ子供を持てないと知った彼は、女性弁護士サマンサ(アマンダ・セイフライド)のもとへ相談に。そして、彼女とジョンの協力を得ながら、法廷に立って自分は人間だと証明しようとするテッドだったが……。


参考リンク(1):映画『テッド2』公式サイト


 2015年23作目。

 『映画の日』にレイトショーを観賞。字幕版。
 日本語吹き替え版は、テッドの声を有吉弘行さんがあてているということで、それも観て(聴いて)みたいなあ、とは思ったのですが、上映時間の都合と、有吉さんの顔がいちいち浮かんでくるのもいかがなものか、ということで字幕版にしました。
 DVDが出たら、吹き替え版も観てみたい。


 お客さんは15人くらいで、僕のようなオッサン独りが数人と、あとは若いカップル。
 上映前に『かいけつゾロリ』の映画の予告が流れていて、これ、絶対『テッド』とその観客層を勘違いしてるだろ……と苦笑してしまいました。R-15だよ『テッド2』!


 だいたいさ、こんな性悪テディベアを「かわいい!」とか言ってる奴らの気が知れないよ……

 ……などと思っていたのですが、序盤から「男だけの飲み会での、誰も止める人がおらず、とめどなくスパークしていく下品な会話」全開で大笑いしてしまいました。
 これはむしろ、オッサンがひとりでこっそり観る映画なのかもしれない。


 あと、夫婦喧嘩のリアルさ!
 ミッドライフ・クライシスど真ん中の中年男としては、「これ、片方がクマじゃなかったら、とんでもない鬱映画だな」と。
 夫婦仲を改善する方法として「子供をつくる」っていうのも、人間のカップル相手に言ったら、「セクハラ」としてネットで炎上しそう。
 『9・11』っていうのは、アメリカにとっては「茶化すことが許されないトラウマ」だと思っていたのだけれども、劇中では、人をからかうネタとして使われます。
 いやこういうのは、「アメリカ人自身がやるから許される」のかもしれないけど……って、怒る人はいなかったのだろうか。


 この映画、映画やアメリカの「おバカ文化」へのパロディも満載です。
 最初に、町山智浩さんの名前が「字幕監修」として出てくるのだが、これはまさに「町山さんの読者のためにつくられた映画」のような気がします。

「君はまるでジャスティン・ビーバーだ」

 ここで、「ジャスティン・ビーバーって、誰?」って思う人は、たぶん、この映画に向いていません。
 それが良いとか悪いとかいうのではなくて、大部分のアメリカ人にとって「田代まさし」が「誰それ?」という存在なのと同じようなものです。


 で、この映画そのものが、ある意味では「アメリカ東海岸のインテリなんだけどちょっと下品なネタにも寛容ですよ、っていう民主党支持者が喜びそうなリベラリズム」に満ちあふれています。
 日本では、アメリカの社会やハリウッドスターのゴシップにも詳しいけど、大麻くらいでいちいち怒ったりしませんよ、っていう腐れインテリどもが、「これは自分にしかわかるまい」と自分のアメリカや映画への知識の豊富さを再確認し、優越感に浸ることができる映画、なんですよね。


 その「腐れインテリ」って、僕のことだよな……


 とはいえ、かなりストライクゾーンど真ん中っぽい僕もこの作品の「小ネタ」の半分以上はよくわからなかったので、観る人をかなり選ぶ作品であることは事実でしょう。
 あの場面、ケビン・コスナーは怒らなかったのだろうか。


 「人間」とは何か、みたいな話も出てきて、「いかにもモーガン・フリーマンがやりそうな役を演じているモーガン・フリーマン」だと思いつつも、ちょっと感動してしまいます。
 あと、舞台劇のようなアメリカの陪審員精度の法廷にも。
 これは弁護士の腕が結果を左右するだろうなあ、と。


 この『テッド2』、好きな人にはたまらない映画だと思んですよ。
 僕は「映画の日だから、何か観ておくか」みたいな気分だったのですが、大満足でした。
 前作の「引きこもりオタクっぽい感じ」がなくなってしまったのは寂しい。
 でも、「観たい人だけ観ればいい」映画だったものを、これだけ毒をまき散らしながらも、「万人向け寄り」にしたのはすごい。
 ハズブロ社のロゴがたくさん出てくるし、実名なのにあんなことをやっているので、「大丈夫なのかこれ?」と思ったのだけれど、「ハズブロ社全面協力!」って……奥が深いよねアメリカ……いや、業が深いのか?

 
 しかし、テッドと全く同じことを人間の役者が演じてやっていたら、非難囂々じゃなかろうかこれ。
 「見た目」って大事だよな、みたいなことを、ちょっと考えてしまう映画でもありますね。


参考リンク(2):町山智浩 映画『テッド2』を語る(miyearnZZ Labo)

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