琥珀色の戯言

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【読書感想】日本の納税者 ☆☆☆


日本の納税者 (岩波新書)

日本の納税者 (岩波新書)


Kindle版もあります。

日本の納税者 (岩波新書)

日本の納税者 (岩波新書)

内容紹介
税金はややこしくてわからない。いや、ちょっと待て。わからないで済まされるのだろうか。税務署がどこにあるかさえ知らない日本の納税者。その無関心と無理解につけ込んだ「お上まかせの税制」が、今日の財政危機と格差社会を生んだともいえるのだ。国民の大多数を占めるサラリーマンが、いかに税にたいして関心を持てなくされているか。その現状や背景を伝える。


 ああ、たしかに、「税金」というのは、ものすごく大事で、生活に密着したもののはずなのに、僕たちはあまりにも税金のことを知らなさすぎる。
 「節税の方法」なんていうのは一生懸命考えることがあっても、結局のところ「理屈として必要なものであることは理解しているけれど、できることなら避けて通りたい」と思っているんだよなあ。
 この新書、「税金」のことについて、ものすごく真面目に書かれていて、いまの日本で「税金」のことについて、納税者が「人まかせ」にし、そのおかげで、ものすごく風通しが悪い制度が続いていることを憂いているのです。
 うん、著者の気持ちは、よくわかる……ような気がする。
 きっと、真面目な人なんだろうな。


 ただ、実感として、この新書を読むというのは、僕にとってはかなり苦痛だったことを告白せねばなりません。
 もともと避けて通りたい話を、真面目に、丁寧に、原則重視でされているので、読んでいるとくたびれます。
 でもさ、それって、一納税者でしかない僕には、どうしようもないんじゃない?とか、思ってしまう。
 本当は「税金という存在が避けて通れないものであれば、もっとみんなでしっかり議論をして、納得できる形にもっていくべき」なんでしょうけどね。


 昔、『ザ・ベストテン』の冒頭で、黒柳徹子さんが「こうして司会を1時間やっていても、そのうち45分くらいは、税金でもっていかれてしまいます。ですから、もっと使い方を考えてほしい」というようなことを仰っていました。
 当時、子どもだった僕は「そんなに取られてるんだ」と思い、観ていた親は「でも、それだけ稼いでるってことでしょうよ」と呟いていました。
 まあでも、この新書を読むと、日本の税金というのは、諸外国と比較すると、けっして高くはないようです。

 しかし、政治が国民のために行われる社会であれば、減税は国家の公的役割を縮減するものであるから、国民の多くにとっては困ったことになるはずである。国民の多くにとっては少しの税負担の代わりに公共サービスが大幅に縮小し、自分たちの生活を圧迫することになるかもしれないからである。他方で、国民の中の一部の富裕層にとっては、「小さな政府」が望ましいことになる。というのは、税負担が大幅に少なくなり、公共サービスが減ったとしても、自分でやればよいし、できるからである。減税政策は、このように国民の大多数にとっては警戒すべきものなのだが、日本では与野党とも正義の主張であるかのように大合唱してきたのである。


 たしかに、その通りなんですよね。
「減税」っていうのは魅惑的だけれど、「税金」というのは、社会保障を成立させるための原資であり、「格差」を是正するための手段にもなるのです。
 本当は「税金が高くても、本当に困ったときの保障がちゃんとしていたほうが良い」場合だって少なからずあるのに(そして、低所得者のほうが、社会保障から受ける恩恵は大きいはずなのに)。


 ちなみに「申告」納税制度の日本における確定申告者の割合は17%程度なのだそうです。
 それだけ、サラリーマンが多い、ということもであるのですが、自分で申告をしないということは、税金についての実感もわかないまま、「税金が高い」とか「増税」「減税」というメディアの言葉に躍らされているだけ、とも言えるのです。
 本当は、「もっと税金を高くしてでも、北欧のように、セーフティネットがしっかりある社会にすべきではないか」と考える人だって、少なくないかもしれないのに。


 この新書を読んでいると、税金というものについて、自分があまりにも無知であることに愕然とします。
 「申告納税者の所得税負担率」を示したグラフについて。

 一億円を超えると(税負担率が)かえって軽くなる。なぜ、こんなことになっているのだろう。法律でそう決めたからであり、国民がそういう選択をしたことになっているからである。
 一億円以上の所得など、実際の労働から得られる所得ではありえない。これらは株式の譲渡や配当などの不労利得であり、こうした所得は経済成長や投資助長の必要などの名目で、軽課処置がいろいろ配慮されている。
 軽課処置など本当に必要なのだろうか?


 というか、1億円以上の所得があると、かえって税金が安くなる、なんて、知ってましたか?
 僕は想像もしていませんでした。
 日本は累進課税の国だと思っていたので。
 もちろん、名目上は、累進なのでしょうけど、さまざまな軽課処置のおかげで、結果的に、こういうことになっているのです。

 まず、あなたは次のどのような社会が良いと思うだろうか?
(1)税負担が高い上に、歳出も不公平で、不透明な社会
(2)税負担は低いが、歳出が不公平で、不透明な社会
(3)税負担は高いが、歳出が公平で、透明な社会
(4)税負担は低いし、歳出が公平で、透明な社会


 最後の(4)がベストと思う人が多いかもしれない。しかし、税収が少ない社会だからこそ、歳出を公平にしても、救貧的な支出が中心になり、一般的な納税者に公平感や満足感が得られるかどうかは疑わしいのである。


 まあ、たしかにそうだよなあ、と。
 著者によると、日本は(1)だと思われがちだが、実際は、主要先進国のなかでは、「日本の税負担は軽い」のだそうです。
 

 ちなみに、「税負担は高いが、国民の重税感が低い国」として、デンマークのこんな「税金の使い方」が紹介されています。

・医療費は無料。たとえ億単位の治療費がかかっても請求されることはない。
・教育費は無料。義務教育はもちろん、高校、大学も無料。しかも、18歳以上の学生には全員に生活費として月額7万7000円が支給される。
育児支援や障害者支援制度の充実。たとえば、子どもが障害を負ったために親が仕事をできなくなった場合、給与の全額を支給。年収1000万円でも全額が支給される。
・地方議会の議員の報酬はボランティア程度の報酬であり、国会議員の報酬も一般給与所得者程度という歳出の無駄の排除も徹底している。

 この本によると、デンマークの租税負担率は65%で、社会保障負担率は2.7%、日本の租税負担率は22.7%で、社会保障負担率は17.1%です。
国税地方税をあわせた租税収入の国民所得に対する比率を租税負担率といい、年金や医療保険にかかわる支払い保険料(社会保障負担)の国民所得に対する比率を社会保障負担率といいます)


 「世界でいちばん成功した社会主義国家」などと言われていた戦後の日本ですが、すでに「かなり新自由主義的な社会」になってしまっているのです。
 「競争」も必要だろうけれど、もうちょっとみんながセーフティネットの存在を実感できるようになれば、もう少し、ラクに生きられるのではなかろうか。


 日本にはアメリカの大富豪やアラブの石油王のような、ビックリするようなお金持ちって、あんまりいないような気がするんですが、お金はいったい、どこにあるんでしょうかねえ……
 

 税金が好きな人はいないと思うのですが、税金と、それによって行われる社会保障が不要だと考えている人も、ほとんどいないはずです。
 メディアで語られる「増税で、庶民が苦しむ」というステレオタイプの表現は、嘘かもしれない。
 それは、「増税」のせいではなくて、「税金として集めたお金の分配のしかたが、間違っているから」なんですよね。

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