- 作者: 山中裕美
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2015/03/04
- メディア: 新書
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Kindle版もあります。
- 作者: 山中裕美
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2015/04/10
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料理研究家による、「知っているつもりで実は理解していない、食品表示の話」。
僕も時々スーパーに買い物に行くことがあるのですが、正直なところ、食品表示って、あんまりこだわりがないんですよね。
仕事柄、薬局に売られている薬の成分については、けっこうキッチリと眺めてあれこれ考えるのですけど。
患者さんに対しては、「薬も大事ですが、同じく口から入るものとして、食事はすごく大事なんですよ」なんて話はするけれど、僕自身は、賞味期限にもけっこうアバウトだったりするのです。
この新書、食品添加物による重大な被害が日本中で起こっている!というような告発の本ではなくて、日常生活、スーパーの食品売り場で、「より危なくないもの」を選ぶための知識と知恵が主に紹介されています。
ところで、卵はサイズで分類されているため、「Lのほうが大きいからトク」と考える方が多いかもしれません。「大きいサイズの卵を産む鶏は体も大きい」と思いますか?
じつは、大きい卵は成熟した鶏が産んでいるのです。関係しているのは体格ではなく年齢です。若いと小さい卵しか産めません。成熟といえば聞こえがよいのですが、要するに年寄りの鶏が産んだ卵が、「L」や「LL」で売られているのです。大きな卵は卵白の割合が多いのが特徴です。また、大きくなればなるほど殻が薄く割れやすくなります。
特売の卵はたいがいLサイズ。安さには理由があるのです。
私はMサイズの卵を選んで買います。小さいからといって決して安いからではありません。殻の美しさ、卵黄と卵白の盛り上がり、卵黄と卵白の割合など、最も優れたサイズで味のバランスもよいと思うからです。
こういうのって、自分でよく料理をする人にとっては「常識」なのかもしれませんが、僕は「Lのほうが大きくてトク」だとばかり思っていました。
そうか、特売の卵にLサイズが多いのには、それなりの「理由」があるのですね。
あらためて、40年以上も生きていて、自分がふだん食べているものにあまりにも無頓着であることを痛感します。
牡蠣には「加熱用」と「生食用」という表示があります。生食用のほうが鮮度がよいと思われている方もいらっしゃると思いますが、それは誤解です。細菌数や大腸菌、腸炎ビブリオの最確数(統計的な確率に基づく平均値)など食品衛生法の基準を満たしたものが生食用で、それ以外を加熱用として販売しているのです。生食用のほうが新鮮というわけではありません。生殖用は滅菌海水で入念に洗浄するので、加熱用よりも味が落ちるという意見もあります。
牡蠣本来のうまみを味わいたいのなら、火を通したほうがいいのかもしれません。必要なのは、目的に合わせて購入することです。
あの「生食用」「加熱用」の違いは「鮮度ではなくて、細菌数などの基準を満たしているかどうか」で決められているそうです。
つまり、古いものでも、基準を満たしてさえいれば「生食用」にして良い、と。
なんとなく腑に落ちないような気もしますが、「鮮度」だけで判断するよりは、合理的ではありますよね。
牡蠣は美味しいのですが、「あたる」とかなり辛い目にあってしまうのだよなあ。
あと、著者は、こんな話も紹介されています。
近所に新しいスーパーがオープンしたとします。お店に行って最初に確認すべきことは何でしょう。トイレの場所? お気に入りの商品があるかどうか?
答えは「砂糖の値段」です。
特売時の値段でない通常の砂糖の値段は、そのスーパーが安売り路線でいくか、それとも品質重視でいくかの目安になるというのが、スーパー業界の常識だそうです。
新規開店の店には、流通の関係者も数多く訪れます。彼らは砂糖の値段を確認します。もし、砂糖の値段が安い設定ならば、「うちのスーパーは低価格を売りにしていきます」というメッセージだと理解するそうです。
いやほんと、食品表示やスーパーマーケットって、知らないことばかり、なんですよね。
自分で予備知識も持たないまま「安全な食品を!」って思うだけじゃダメだよなあ。
実際は、「ほとんどの情報は、ちゃんと表示されている」のだから。