琥珀色の戯言

【読書感想】【映画感想】のブログです。2016年8月より、『はてなブログ』に移行しました。

【読書感想】スター・ウォーズ論 ☆☆☆☆


スター・ウォーズ論(NHK出版新書 473)

スター・ウォーズ論(NHK出版新書 473)


Kindle版もあります。

スター・ウォーズ論 (NHK出版新書)

スター・ウォーズ論 (NHK出版新書)

内容紹介
スター・ウォーズを語るならば本書と共にあれ!
すべてのSWファン必読の決定版。


1977年の第1作公開以来、世界中にファンを獲得したスター・ウォーズは、映画史に燦然と輝く傑作サーガだ。当初は 「ボツ企画」扱いをされた同作は、いかに最強コンテンツへと生まれ変わったのか?日本語字幕監修を務めた著者が、シリーズの全容を明らかにするとともに、ディズニー買収以後の行方を展望する。新書初の本格的スター・ウォーズ論がここに誕生!


[内容]
第一章 スター・ウォーズという文化
第二章 映画史におけるスター・ウォーズ
第三章 スター・ウォーズは何を描いているのか
第四章 ルーカスからディズニーへ(1)
第五章 ルーカスからディズニーへ(2)


 2015年12月18日に、最新作『フォースの覚醒』が公開される『スター・ウォーズ」。
 その話を聞いたときには、「ジョージ・ルーカスが関わらない『スター・ウォーズ』なんて、名作を汚すような結果になるんじゃないか……そもそも、『エピソード1』から『3』も微妙な感じだったし……と思ったんですよ。
 でも、映画館の『フォースの覚醒』の予告編を観ていて、ハン=ソロとチューバッカが登場するシーンに、僕も思わず「おかえりなさい」と心の中でつぶやいてしまいました。
 僕自身は最初の『スター・ウォーズ』シリーズは、リアルタイムで映画館で観てはおらず(まだ小学校に上がるかどうか、という時期で、両親も興味はなかったみたいです)、テレビ初放送のときに観た記憶があるのですが、そんな僕でも、周りに『スター・ウォーズ』のファンは少なからずいました。


 著者は、『スター・ウォーズ』について、冒頭でこう述べています。

 映画『スター・ウォーズ』が、数多ある他の映画と決定的に異なる点が一つある。
 それは、他の映画が公開されるや否や、時の経過と共に「過去の映画」となっていくのに対し、スター・ウォーズは常に「現代の映画」であり続けているという点だ。
 古いファンからの批判の声もあるが、スター・ウォーズは、再公開やビデオリリースといった機会ごとに本編に手直しが施され、いつの時代でも最先端の映像で観客たちを魅了してきた。だからスター・ウォーズは、常に「現在進行形」の映画であり、たとえばサグラダ・ファミリアのように、長い年月を経て、少しずつ形を整えてきている極めて特殊な映画なのである。
 それが可能となっているのは、スター・ウォーズが、その第一作以外がほとんどルーカスフィルムによる「自主製作」という形で作られ続けたためである。


 著者は、2012年8月末(ルーカスフィルムがディズニーに買収される二ヵ月前)に、フロリダ州オーランドで開催された、スター・ウォーズ・セレブレーション6(C6)の雰囲気について、ファンたちの盛り上がりやさまざまなイベントについてひとしきり語ったあと、こんなことを書いています。

 しかし、そんな中で私が感じていたことは、
スター・ウォーズはもはや死に体だな……」
 ということだった。
 

 言葉は悪いが、事実、そう感じたのである。
 前述したように、確かに会場は盛り上がってはいた。だがそれは、どちらかというと同窓会のような盛り上がり方で、実際、来場者は数万人いたにもかかわらず、互いに顔見知りの様子だった。私の目から見ても、その5年前に日本で行われたセレブレーション・ジャパンと規模の差はあれ、空気は変わらなかった。言ってみれば、「閉じた空間の中で仲間たちが盛り上がっている」ものだったのだ。


 僕はやはり、最初の三部作(エピソード4から6)への思い入れが強いのだけれど、スター・ウォーズは、「新三部作」だけではなく、『クローン・ウォーズ』などのアニメ化などもあり、常に「更新」され続けてきたコンテンツでもあるのです。
 どんな名作・傑作であろうと、「昔つくられたコンテンツ」への情熱は、時間とともに衰えていく。
 そういう意味では、デキはどうあれ(いや、面白いに越したことはないのですが)、『スター・ウォーズ』には、新作が必要だったのかもしれません。
 「いまも愛され続けている」からこそ、なおさら。
 この新書を読んで、そのことがようやく理解できたような気がします。


 ちなみに、『帝国の逆襲』のときも、第一作のファンたちから、「続編で名作を汚すな!」という反対の声が少なからず挙がっていたそうです。
 当時は、今よりもさらに粗悪な続編が多い時代だったということもあって。
 また、『帝国の逆襲』が、ルークがダース・ベイダーにやられ、ハン=ソロは氷漬けという最悪の状況で「次作につづく」になってしまうことに対して、当時のファンはかなり苛立っていたそうです。
 そりゃそうですよね。続きは来週どころか、何年も先なんだから。

 『スター・ウォーズ』が、こういう形での「三部作」をヒットさせたことで、のちの『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『ロード・オブ・ザ・リング』が生まれることになるのです。


 この新書を読むと、いままで僕が「定説」だと思いこんでいたことが、けっこう事実と異なっていることがわかります。
 『スター・ウォーズ』の企画は「こんな子供向けの話、ヒットするわけがない」と、大手映画会社から断られまくった、という話があるのですが、それについて、著者は当時の映画界の状況や歴史的な経緯を解説しています。
「映画会社側が拒絶したのは、無能だったからではない」のです。
 むしろ、あの時代に『スター・ウォーズ』のような映画を、お金をかけて撮ることのリスクを危惧するほうが「当然」だったのだ、と。

 しかし公開前までは、この映画は「大失敗作」になると業界内ではささやかれていた。そのため、劇場側もこの映画を上映したがらず、ベストセラー小説の映画化「真夜中の向う側」と抱き合わせで配給された。つまり、「真夜中の向う側」を上映したかったら、「スター・ウォーズ」も上映しなければ駄目だ、という条件を付けていたのだ。

 ちなみに、『アイアンマン』(2008年)の映画化の際、「子供向けだ」という理由で、30人もの脚本家に断られた、というエピソードも紹介されています。
 ハリウッドの「子供向け軽視」は、伝統みたいですね。
 「子供向け」であることと「大人も楽しめる」ことは、両立できることが、さまざまな映画で証明されているにもかかわらず。
 
 
 また、『スター・ウォーズ』は日本の影響を受けている、ということに関しても、「日本だけではなく、世界各地のさまざまな影響がみられており、『日本』をことさらに強調するのはおかしい」と述べています。
 もちろん、「日本映画、とくに黒澤明作品」の影響を否定するものではないのですけど。


 『スター・ウォーズ』が世の中にもたらしたものは、娯楽だけではないのです。

 特別篇が公開された1997年、南カリフォルニア州に住むファンの一人、アルビン・ジョンソンは、帝国軍のコスチュームを着るファン団体「501st Legion」を立ち上げる。映画に登場したコスチュームにどこまでも近いものを追求した彼らのコスチュームのクオリティは、最終的にはルーカスフィルムから著作権違反として抗議を受けるほどにまで高まっていき、両者の間にはしばらく緊張関係が続いていた。
 2002年の「エピソード2 クローンの攻撃」の公開前に行われたセレブレーション2では、すでに世界中に広まっていたメンバーが、完成度の高いコスチュームで会場となったインディアナポリスに終結していた。
 この時、アルビンらメンバーたちは、会場の近くに小児病院があることに気づいた。そして、「あそこに入院している子供たちは、セレブレーションに来たくても来られないんだろうな」と考え、「よし、俺たちが病院に行って子供たちを喜ばせよう!」と有志を集めて病院を訪問したのだ。
 子供たちは狂喜乱舞して彼らを迎えた。その反応は彼らの想像をはるかに超えた熱狂的なもので、訪問中、トルーパーのマスクの下に隠れた彼らの目は涙に濡れていたという。この行動はたちまち全メンバーに知れ渡り、セレブレーション終了後も、メンバーたちは世界中で病院の慰問を継続して行うことになった。
 するとルーカスフィルムもそれまでの認識を一変し、彼らと協力してチャリティ活動を行うことになった。2005年、同じくインディアナポリスで行われたセレブレーション3では、公式ホテルとして指定されたホテルで、「501st枠」が設けられ、既定の宿泊料金と、児童福祉団体への寄付金を10ドル上乗せした金額を選べるようになった。そして全員が寄付金付きで予約したのだった。
 その後も、501stは姉妹団体である反乱軍のコスプレ団体レベル・リージョンと協力しながら慰問を続けており、また、重度の難病の子供の「最後の願い」を叶える団体、メイク・ア・ウィッシュとのコラボレーションも始まった。
「死ぬ前にダース・ベイダーに会いたい」という子供たちのために、世界中のメンバーが病室に駆け付けるようになったのだ。

 その後に起こった、創設者のアルビンさんの家族の悲劇と、それに対する『スター・ウォーズ』ファンや製作側のサポートについても、触れられています。

 スター・ウォーズが公開されるたびに、「スター・ウォーズが映画産業のみならず、世界中に多大な影響を与えた」ことが喧伝される。ドルビーサラウンドEX、バーチャルセット、フルデジタル撮影、デジタル上映……本当に枚挙にいとまがない。
 しかし私は、「製作者とファンが一体となって実現した世界規模のチャリティ活動」こそが、最も価値のある、そして意義のある「影響」なのだと思う。

 ファンたちが自発的に始めたチャリティ活動が、製作者側をも巻き込んで、世界中に広がっていく。
 たしかに、こんな映画、他にはないですよね。
 

 『スター・ウォーズ』新作公開前に、少しでも『スター・ウォーズ』通になっておきたい人には、オススメです。
 あらためて考えてみると、なんでダース・ベイダーって、こんなに人気があるんだろう。あんなに悪いことばっかりしているのに!(でも僕も好きです)

アクセスカウンター