琥珀色の戯言

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【読書感想】下町ロケット2 ガウディ計画 ☆☆☆☆


下町ロケット2 ガウディ計画

下町ロケット2 ガウディ計画


Kindle版もあります。

内容紹介
直木賞受賞作に待望の続編登場!


その部品があるから救われる命がある。
ロケットから人体へ――。佃製作所の新たな挑戦!


 直木賞を受賞し、TVドラマも好調だった『下町ロケット』の続編。
 企業小説の「続編」って?と思ったのですが、佃製作所も毎回ピンチ続きで大変だよなあ、と。
 こんな素晴らしい技術がある会社なのに、大企業の都合に振り回され続けていて。


 この『下町ロケット2』、僕も心のなかで佃製作所の味方をしつつ、ハラハラしながら読みました。
 敵は大企業やお役所、海外で名前を売った研究者に名門医学部教授と、まさに「敵役オールスターキャスト」。
 それに対して、地道に「努力!友情!勝利!」で頑張る佃製作所。


 本当に面白いんですよこれ。読んでいて、ちゃんと敵には腹が立つし、佃製作所側を「がんばれ!」と応援してしまう。
 「仕事のやりがい」みたいなものについてもわかりやすく描かれていて、読みながら、「僕も初心に帰って、がんばって働かなくては!」と思えてきました。
 勧善懲悪、水戸黄門的なストーリーでもあり、開発者たちの働きっぷりをみていると、「佃製作所って、かなりのブラック企業なのでは……」とも思うのですが、モーレツ社員たちのプライベートは全く描かれておらず、彼らの家族も一切登場してきません。
 「勧善懲悪エンターテインメント」としての完成度は最高です。
 読者が深いになりそうな小骨を、丁寧に抜いて、食べやすくしました、という感じ。


 ただ、これを「浅い!」とか言うのもちょっと違うような気がしていて、こういう「主人公たちに共感しながら読めて、『明日から仕事、俺もがんばらなくちゃな』と元気が出る小説」って、たぶん、世の中には、とくに、いまの日本には、ものすごく必要とされているものなのですよね。
 池井戸潤さんは、もっとドロドロしたというか、「わかりやすい勧善懲悪ではないもの」だって書ける人だとは思うのですが、あえて、こういう「読んだ人を元気にする、わかりやすさと面白さ」を究めた小説を書いているのでしょう。

「どうでしたか、貴船先生は」
 佃製作所への道すがら、ハンドルを握りながら佃がきいた。
「門前払いに近い扱いでした。残念です」
「貴船先生の幸せってのはなんなんですかね」
 状況を聞いた佃は、ふと、そんなことをきく。「やっぱり、地位と名誉と金ですか」
「いや、もともとはそんな人じゃなかったんですよ」
 一村はいった。「それだったら、私だって師事しませんでしたし。昔は、人の命を最優先に考える医者だったんです。私なんか、何度、先生に命の大切さを学んだかわかりません」
「それが変わっちまったってことですか。何があったんでしょうね」
 きいた佃に、「組織の中にいて、出世することに目覚めてしまったのかも知れません」、一村はおもしろいことをいった。
「私なんかは地方の国立大学出で最初から関係ないんですが、旧帝大系は学会を牛耳る派閥ですから。若い頃はともかく、だんだんと出世していって権力を持ち始めると、その魔力に取り憑かれてしまうのかも知れません」
「だったらね、先生、それは医者の世界だけじゃないですよ」
 佃は運転しながらいう。「組織っていうのは往々にしてそういうもんです。出世が結果ではなく目的になってしまった人間ってのは、本来、何が大切なのかわからなくなってしまう。人の命より、目の前の出世を優先するようになるんです」

 いやほんと、エンターテインメントとして極上ではあるし、勧善懲悪のシンプルな小説ではあるんだけど、こういう、ちょっと人生とか仕事について考えさせられるスパイスも効いているんですよね、本当にうまいなあ。


下町ロケット (小学館文庫)

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下町ロケット

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