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琥珀色の戯言

【読書感想】【映画感想】のブログです。2016年8月より、『はてなブログ』に移行しました。

『琥珀色の戯言』 BOOK OF THE YEAR 2015

今年も残り少なくなりました。
恒例の「今年僕が面白いと思った本ベスト10」です。


いちおう「ベスト10」ということで順位はつけていますが、どれも「本当に多くの人に読んでみていただきたい本」です。
(ちなみに、このブログで2015年中(12/29まで)に感想を書いた本は、332冊。ちなみに去年は321冊、一昨年は306冊だったので、かなり増えたというか、ほとんど毎日1冊ずつ、というペースでした。
昨年までは、本や映画の感想以外のエントリもたまに書いていたのですが、今年は完全に「感想」だけのブログとなりました。


「感想」以外は、こちらで書いています。



それでは、2015年のベスト10をどうぞ。



まず、10位から6位まで。


<第10位>「学力」の経済学

「学力」の経済学

「学力」の経済学


Kindle版もあります。

内容紹介
「ゲームは子どもに悪影響?」
「子どもはほめて育てるべき?」
「勉強させるためにご褒美で釣るのっていけない?」
個人の経験で語られてきた教育に、科学的根拠が決着をつける!


「データ」に基づき教育を経済学的な手法で分析する教育経済学は、
「成功する教育・子育て」についてさまざまな貴重な知見を積み上げてきた。
そしてその知見は、「教育評論家」や「子育てに成功した親」が個人の経験から述べる主観的な意見よりも、
よっぽど価値がある―むしろ、「知っておかないともったいないこと」ですらあるだろう。
本書は、「ゲームが子どもに与える影響」から「少人数学級の効果」まで、
今まで「思い込み」で語られてきた教育の効果を、科学的根拠から解き明かした画期的な一冊である。


この本の詳しい感想はこちらです。


 この本、タイトルは『「学力」の経済学』なのですが、内容は「経済学」というよりは、「世の中で信じられている教育についての『常識』を、実験、あるいは統計データに基づいて検証する」というものなのです。
 難しい数式などは出てきませんし、大変わかりやすく書かれています。


「もっとも収益率が高いのは、子どもが小学校に入学する前の就学前教育(幼児教育)です」



<第9位>


Kindle版もあります。

内容紹介
 人の話を聞かない、急に感情的になる、約束を守らない―「変わった子」といじめられて育ち、その原因に気づかないまま職場や家庭の「困った人」に。さかもと氏もそうだった。「甘え」だと家族に否認されてきた彼女は、最近、発達障害の専門医である星野氏と出会い、ADHDを合併したアスペルガーと診断された。悩み抜いた者にとって、それは驚きであり福音だった。本書では、宣告された本人による幼少期から今日までの独白、それを聞いて病名を下した医師の見立てを紙上で再現した。発達障害は「治せる」。心の病をタブー視する社会の空気を変え、苦しむ人たちの救いとならんことを。


この本の詳しい感想はこちらです。


……さかもとさん、あなたは僕ですか?


 さかもとさんの幼少時代の記憶を読むと、僕は自分自身の子供の頃を思いださずにはいられませんでした。

 僕の場合は、さかもとさんほど極端な「生きづらさ」を感じることはなかったし、両親も「運動はサッパリだし、内向的で頑固だけれど、勉強はそこそこできる子」だった僕を、どちらかというと「そういう子供なのだ」と承認してくれていたような気がします。
 ただ、それはあくまでも「程度と環境の問題」であって、僕自身も「発達障害」なのではないか、と考えずにはいられませんでした。
 いや、それこそ「内向的な子供」「運動が苦手な子供」っていうのは山ほどいて、それをみんな「病気」にしてしまっても良いものか。
 コンサータの治療効果やリスクに関しては、鵜呑みにできないところがあるのですが、さかもとさんの実体験は身につまされました。



<第8位>佐治敬三開高健 最強のふたり

佐治敬三と開高健 最強のふたり

佐治敬三と開高健 最強のふたり

内容紹介
ひとりは勝算なき「ビール事業」に挑み、もう一人はベトナム戦争の最前線に身を投じる。生産量世界一のウイスキーをつくったサントリー佐治と無頼派作家開高の不思議な友情がかなえた、巨大な夢。


この本の詳しい感想はこちらです。


 太平洋戦争後、日本の「高度成長期」を、ときに押し流されそうになりながらも、自分のスタイルで泳ぎ抜いた二人の男の物語。


「どうです佐治はん、私とあんたが組んだ仕事はことごとく大成功でっせ!」



<第7位>子どもと本

子どもと本 (岩波新書)

子どもと本 (岩波新書)

Kindle版もあります。僕はこちらで読みました。

子どもと本 (岩波新書)

子どもと本 (岩波新書)

内容紹介
財団法人東京子ども図書館を設立、以後理事長として活躍する一方で、児童文学の翻訳、創作、研究をつづける第一人者が、本のたのしみを分かち合うための神髄を惜しみなく披露します。長年の実践に力強く裏付けられた心構えの数々からは、子どもと本への限りない信頼と愛が満ちあふれてきて、読者をあたたかく励ましてくれます。


この本の詳しい感想はこちらです。

 わたしのような立場にいる者は、「子どもを本好きにするには、どうすればよいか」というお尋ねを受けることがよくあります。わたしの答えは、いつもきまっています。生活のなかに本があること、おとなが本を読んでやること、のふたつです。実際、子どもを本好きにするのに、これ以外の、そしてこれ以上の手だてがあるとは思えません。

 この本からは、著者の真摯さが伝わってくるんですよ。
 やるべきことを、ひとつひとつ積み重ねてここまで来た人の「重み」みたいなものが詰まっている。
 そこに本があって、大人が我を忘れて読みふけっている風景があること、もっと突き詰めれば、「本と同じ空間にいること」だけで、子どもは、本に興味を持っていくのです。


 著者は、子どもというのは、図書館にいて、本の「オーラ」を浴びているだけで良いのだ、無理に本を手に取らせよう、読ませようとしなくても良いのだ、とも仰っています。



<第6位>通訳日記 ザックジャパン1397日の記録

内容紹介
19冊にのぼる大学ノートに綴られた日本代表4年間の記録。
通訳就任からザックジャパン解散までの1397日にわたる「通訳日記」には、
これまで明かされてこなかった"真実"が記されていた。
誰よりも日本の可能性を信じたザッケローニ監督の真意、キャプテン長谷部誠との
絶対的な信頼関係、ザックと本田圭佑の熱い対話の数々、監督と通訳を超えた深い絆……。
日本サッカーの教訓として、この貴重な資料を公開する。
Number連載当初から話題を呼んだ「ザックジャパン通訳日記」が遂に書籍化。


この本の詳しい感想はこちらです。


 この『監督日記』は、「記録する」っていうのは、すごく大事なことなのだな、と、あらためて考えさせられる本でもあります。
 「ワールドカップで2敗1引き分けで、日本国民をがっかりさせたチーム」だと思っていた「ザックジャパン」への印象が、この本を読むと、大きく変わってくるのです。
 この本は、「そのなかで起こっていたこと」を語ることによって、「ザックジャパン」の歴史的な評価さえも、動かしてしまいました。



続いて、1位〜5位です。


<第5位>鈴木さんにも分かるネットの未来


Kindle版もあります。

内容紹介
いまやネットなしには毎日はありえない。そのネットの世界では何が起きているのか。ネットの世論とは。コンテンツは。国境を越えているのか。書籍やテレビ、新聞を凌駕するのか。そしてリアルとネットの関係は…。みずからもパイオニアとして、ネット世界での様々な試みを実現してきた著者が、ネットのいまと未来を活写する。


この本の詳しい感想はこちらです。


 「これまでクリエイティブな仕事をずっとやってきたり、既存のコンテンツビジネスについての予備知識はあり、インテリジェンスも好奇心も持っているけれど、ネットの世界のことには詳しくない人」向けなんですよね、これって。
 だから、けっして「簡単」ではないし、「入門書」ではありません。
 「インターネットって、何?」といレベルの人向きではないのです。
 むしろ、「いま、自分がやっている仕事は、今後のネット社会でどうなっていくのか?」と疑問に思っている人や、「ネットで何かをやろうと思っているんだけど、どういうアプローチをしていけば良いのだろうか?」という人にこそ、おすすめです。



<第4位>僕が18年勤めた会社を辞めた時、後悔した12のこと

僕が18年勤めた会社を辞めた時、後悔した12のこと

僕が18年勤めた会社を辞めた時、後悔した12のこと


Kindle版もあります。

僕が18年勤めた会社を辞めた時、後悔した12のこと

僕が18年勤めた会社を辞めた時、後悔した12のこと

内容紹介
会社人生はゲームなのだ。 ゲームは勝たなきゃ面白くないのだ。 辞めたからこそわかった、会社生活を充実させるための12カ条。 大反響のブログ、待望の書籍化!


この本の詳しい感想はこちらです。


 もしあなたが、今年から会社勤めをはじめ、社会人デビューしたのであれば、この本をいま、読んでおくことをおすすめします。
「偉い人のゴルフや宴席につきあって、せっかくの休みを潰すなんて、バカバカしい」
「同業者の会なんて、気は遣うし、若手は便利に使われるだけじゃないか」
「何の建設的な意見も出ない会議になんて、出ても時間のムダ。本でも読もう」

 この年齢になって気づいたのは、「そういうこと」を堅実にこなして、人との繋がりや信頼を築いてきた人は、「教授」や「社長」になれなかったとしても、「第二の人生」において、有利なグリッドからスタートできる、ということなんですよね。
 若いあなたは反発するかもしれないけれど、この本には「実感」が、ぎっしり詰まっているのです。


<第3位>九州大学生体解剖事件――70年目の真実

九州大学生体解剖事件――70年目の真実

九州大学生体解剖事件――70年目の真実

内容紹介
軍の命令か、医の倫理の逸脱か――。終戦直前の1945年春、名門大学医学部で行われたおぞましい「実験手術」で米軍捕虜8人が殺された。医師側の首謀者として死刑判決(のち減刑)を受けた鳥巣太郎氏(当時、九大助教授)の姪が、戦犯裁判記録のほか、知られざる再審査資料、親族の証言などを基に、語り得なかった真実を明らかにする。


この本の詳しい感想はこちらです。


 人間にとんでもないことをさせるのは「悪意」ばかりとは限りません。
 むしろ、「狂った善意や正義」こそが、大きな犠牲を生みやすい。
 この事件の関係者たちは、もし戦時中でなければ、「優秀なエリート医師」として人生をまっとうしていたはずです。
 戦争というものは、ここまで人間の「良心」とか「善性」を麻痺させてしまうものなのか、と考え込まずにはいられません。
 「自分の置かれた環境」とか「空気」とかに影響されずに生きられる人というのは、ごくひとにぎりしかいない。



<第2位>我が逃走

我が逃走

我が逃走


Kindle版もあります。

我が逃走

我が逃走

内容紹介
ひきこもりから瞬く間に「IT長者」へ―驚愕のロングセラー『こんな僕でも社長になれた』を凌ぐ、その後の転落・逃亡・孤立を巡るどん底物語と、都知事選の裏側、そして“いま”を克明に描く衝撃作、満を持して刊行!!


この本の詳しい感想はこちらです。


 僕はこれを読みながら、家入さんって、誰かに似ているな、と思っていたのです。
 それは、チェ=ゲバラでした。
 世界を変えようとして志なかばで亡くなった偉大な革命家と、「炎上IT芸人」を一緒にするな、という罵声が聞こえてきそうです。
 でも、自分の居場所をつくろうとして仲間と一緒に頑張るのだけれど、実際にその居場所らしきものができてしまうと、そこに満足できないでリスクを承知で飛び出してしまう、というのは、なんだかすごくよく似ている。
 チェ=ゲバラカストロたちとキューバ革命に成功するのですが、「革命の理念」の違いから、政権の中枢を離れ、遠国への革命の輸出に旅立ちます。
 喘息持ちで、けっして丈夫な身体ではなかったのに。
 僕はずっと、「それがゲバラの理想主義なのだ」と思っていたのだけれど、それは理想主義というより「自分の居場所が欲しい、つくりたい」けれど、「一ヵ所に留まることに耐えられない」という強迫観念みたいなものだったのかもしれません。

 モーは小学校高学年になりMacをサクサク操るようになって、まるで昔の僕みたいだった。
「パパ、僕も起業したいと思っているんだけど」
「おお、いいじゃないか」
「でもさ、僕、パパの息子だから絶対炎上するよね」
 思わぬカウンターに面食らう僕。
「う、うん」
「……炎上はちょっとなぁ」

<第1位>生きて帰ってきた男-ある日本兵の戦争と戦後


Kindle版もあります。

内容紹介
戦争とは,平和とは,戦後日本とは,いったい何だったのか.戦争体験は人々をどのように変えたのか.徴兵,過酷な収容所生活,経済成長と生活苦,平和運動への目覚め……とある一人のシベリア抑留者がたどった人生の軌跡が,それを浮き彫りにする.著者が自らの父・謙二の語りから描き出した,日本の20世紀.


この本の詳しい感想はこちらです。


 この本を読んでいると、人というのは、自分が経験してきたことが「普通」であり「主流」であると考えがちだけれど、「常識」や「当たり前」は、時代によって変化していくものなのだということが、よくわかります。
 そして、そういう生々しい感情を謙二さんがちゃんと記憶しているということは、驚くべきことではあります。
 若い頃、さんざん苦労して、「もうこんな生活はイヤだ。自分の子どもにはこんなことはさせたくない」と考えていた人が、成功した老人になると「まあ、若い頃の苦労は、買ってでもしろ、だよ、ワッハッハ!」と言うのが「普通」なのだから。


 読んでいて感じたのは、謙二さんは、本来「語り部気質」の人ではなさそうだ、ということでした。
 だからこそ、こういうふうに「沈黙する性質の人」の話が聞けるのは貴重なのです。
 そして、「小熊英二さんは、この新書を上梓することによって、すごい親孝行をしたんじゃないかな」と、なんだか羨ましくなりました。




というわけで、『琥珀色の戯言』の2015年のベスト10でした。


こういうふうに「順位」をつけることそのものに意味があるのか?とか、☆の数で先入観を植え付けてしまっているのではないか、と毎年思うのですが、ひとつだけ言えることは、ここに御紹介した10冊は、僕としては、間違いなくオススメできるものばかり、ということです。


「感想を書く」というのをこれだけ長く続けていると、それぞれの本を読んで考えたことだけではなくて、「自分はどんなことに興味を持つ人間なのか」というのがわかってきます。
読んだ本のタイトルを眺めているだけでも、ちょっとした自己紹介になりそうです。
たまには違う傾向のものを読もう、と思ったり、もっと古典を読まなければ、と反省したりすることもあるのです。
でも、結局のところ、ひとりの人間にできること、読める本、考えられることの範囲というのは限られていて、限られているからこそ「僕の感想」を遺すことに、多少は意味があるのではないか、と考えるようになりました。
何かひとつでも、誰かひとりにでも、有益だと思っていただけるところがあれば嬉しい。


たいしたおもてなしもできませんが、これからもどうぞよろしくお願いします。