- 作者: ブリジットオベール,Brigitte Aubert,堀茂樹,藤本優子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1997/02
- メディア: 文庫
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内容(「BOOK」データベースより)
医者のマーチ博士の広壮な館に住み込むメイドのジニーは、ある日大変な日記を発見した。書き手は生まれながらの殺人狂で、幼い頃から快楽のための殺人を繰り返してきたと告白していた。そして自分はマーチ博士の4人の息子―クラーク、ジャック、マーク、スターク―の中の一人であり、殺人の衝動は強まるばかりであると。『悪童日記』のアゴタ・クリストフが絶賛したフランスの新星オベールのトリッキーなデビュー作。
紀伊國屋で「何かミステリを読みたいな」と思いつつ散策していたら、この文庫がかなり強力にオススメされていたのです。
オビには、「表紙からすでに仕組まれたトリック。見破れますか?」のキャッチコピーが。
ふーん、ま、いつもの叙述トリックだろうけどさ、で、この表紙、赤いテーブルに4人の頬杖をついた人たち……うーん、この絵になにか「トリック」があるの?
こういうのは、一度気になりはじめたら、「結末」を確認しなければ気が済まなくなってしまうんですよね、僕の場合。
ということで、購入して読み始めました。さあ、この表紙に隠された「トリック」って、何だ?
内容としては、マーチ家の人々の周りで次々と起こる殺人事件の犯人と往復書簡のようなやりとりをすることになってしまったマーチ家の家政婦・ジニー(逃げろ!って思うのだけれど、事情があって、なかなか逃げられないんですよね。逃げようと思うと大雪になったり。『かまいたちの夜』かよ!)。
犯人は、ものすごく感じよさそうな、マーチ家の4人の息子のうちの誰か、だそうなのですが、犯人は日記に「自分たち兄弟のこと」を書きながら、自分がそのうちの誰か、という尻尾をなかなかつかませてくれないのです。
ジニーもなんとか立ち向かおうとするのですが、アルコール依存で、いざというときにはあまり頼りにならず、読者としては、「もうちょっとしっかりしろよ!」と言いたくなるのです。
そもそも、このシチュエーションで逃げないのは、まさか……?
正直、読んでいると、同じような「殺人者」と「ジニー」のやりとりが繰り返されていて、ちょっと飽きてくるんですよね。登場人物の描写も、あまり生き生きとしていないし。
ただ、それは著者の未熟さゆえではないようです。
こういうのは、何を書いてもネタバレになりそうですが、とにかく、結末と「表紙に仕組まれたトリック」知りたさに、多少読みにくいながらも2日間で通読しました。
「結末が気になる」ということで、最後まで読んでしまうだけでも、著者の勝ち、ではあるのでしょう。
実はこれ、1997年に邦訳版が出た作品なので、この10年くらいの日本の「どんでん返しインフレミステリ」に慣れてしまった僕には、「ああ、このパターンか」って感じなんですよ。
結末を知って、もう一度読み返してみようかな、と思うけれど、これを読み返すのは面倒だから、やっぱりやめよう、と諦める、そのくらいの熱中度でした。
1997年に読んでいれば、もうちょっと斬新だったのかもしれないけれど。
ちなみに、「表紙に仕組まれたトリック」って、読み終えても、僕はよくわかりませんでした。
それが気になって、最後まで読んだのに……