- 作者: 湊かなえ
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内容紹介
暗い海に青く輝いた星のような光。
母と二人で暮らす幼い私の前に現れて世話を焼いてくれた“おっさん”が海に出現させた不思議な光。
そして今、私は彼の心の中にあった秘密を知る…日本推理作家協会賞受賞作「海の星」他、島に生まれた人たちの島への愛と憎しみが生む謎を、自らも瀬戸内の“島”に生まれたミステリの名手が、万感の思いを込めて描く。 心に刺さる連作短編集。
湊かなえさんの作品、僕はちょっと苦手なのです。
ミステリとかサスペンスというより、登場人物のドロッとした心理描写が重苦しくて。
ただ、この『望郷』は、連作短編集ということもあって、比較的読みやすく感じました。
この『望郷」の舞台になっているのは、瀬戸内海に浮かぶ「白網島」で、その小さな島にさまざまな因縁を持つ人たちの故郷への親近感とあまりにも狭すぎる世界への嫌悪感が丁寧に描かれています。
この「白網島」のモデルは、湊さんの故郷である、瀬戸内海の因島なんですね。
もちろん、因島ではこんなに不穏な事件ばかり起こっているわけではないでしょうけど、「島に残る人々と島から出て行く人々のお互いを見る目であるとか、旧家であるがゆえのしがらみとか、描かれている「事件」よりも、島で生きている人たちの「背景」を感じる作品群になっています。
『夢の国』より。
平川が東京ドリームランドに行こうと提案してくれた際、後で文句を言われるくらいならいっそみんなで出かけてみようと、田山の両親と平川の両親に声をかけたが、断ったのは両家とも母親の方だった。
平川の母親からは、「そんな遠いところに行けないわ。私のからだが弱いこと、知ってるでしょ」と言われ、母からは、「死んだおばあちゃんに申し訳が立たないから、行けないわ」と言われた。
私を縛っていたのは、祖母であり、祖母ではなかったのかもしれない。
「しきたり」に縛られて、息苦しい思いをしてきたと嘆いている人たちが、次の世代にも、その「しきたり」を強要していくというのは、けっして珍しい話ではありません。
狭い場所に自分を閉じ込めているのは、環境や親のせいだけではなくて、自分自身ではないのか、そんなことを考えさせられます。
ものすごいどんでん返しがあるとか、読んでいて楽しい、というわけではないのですが、自分の「ルーツ」みたいなものについて、思いを馳せずにはいられなくなる短編集です。