琥珀色の戯言

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【読書感想】叙々苑「焼肉革命」 ☆☆☆

叙々苑「焼肉革命」 (角川新書)

叙々苑「焼肉革命」 (角川新書)


Kindle版もあります。

叙々苑「焼肉革命」 (角川新書)

叙々苑「焼肉革命」 (角川新書)

内容(「BOOK」データベースより)
焼肉店のタン塩、レモンだれ、叙々苑サラダなど、焼肉業界に革命を起こした叙々苑。他にも焼肉店では初のデザート、アイスクリーム、ガムなどを始めるに至る。創業40周年のいま、“おいしさ”へのこだわりを語りつくす。


 創業者が語る、あの「叙々苑」の歴史。
 個人的には、もっと「裏話」とか、「焼肉そのものについての蘊蓄」みたいなのが書かれているのではないかと期待していたのですが、読んだ印象としては、「創業40周年の社史」みたいな感じで、あまり面白みはありませんでした。

 私は15歳で上京し、14年間の料理人としての生活を終え、29歳で独立し、4年後、33歳のときに六本木において今日を決定づける叙々苑を開業しました。そして2016年4月、叙々苑は創業40周年を迎えることができました。おかげさまで知名度も高まり、全国的に知っていただけるようになりました。

 出版社・編集サイドから、「社長、40周年ですし、こんなの書いてみませんか?」って企画を立てて、インタビュアーをつけて著者の話を編集・構成した新書っぽい。
 同じような「創業者が語る」ものでも、先日読んだ、『ドン・キホーテ』の新書は面白かったので、これは正直もの足りませんでした。
 それでも、創業者だから語れること、というのはあるものだし、「あまり面白いことが書かれていない」のは、まっとうなやり方こそ、商売を成功させるための要諦である、ということでもあるのでしょう。
 著者は、働き者で、仕事においても創意工夫を忘れない人みたいですし。
 そして何より、「人の心をつかんで、良い仕事をさせるには、それなりの報酬を与えるというのがいちばんの近道なのだ」ということを認識しているんですよね。


 叙々苑といえば、僕にとっても憧れの高級焼肉店、有名人御用達の店なのですが、著者は、「有名人に愛される理由」について、こんなふうに仰っています。

 どんなに有名なお客様であっても私どもは特別なお礼もしなければ、値引きもしません。それは、長くおつきあいいただきたいからです。特別なことをしたら、相手も気を遣ってしまいます。ゆっくりとくつろいでいただき、おいしい食事を楽しんでいただきたい――。
 だからお店には、どなたの色紙もありません。社員にも厳しく禁じています。
「絶対にサインをいただくなよ」と。そんなことでわずらわせてはいけません。


 実は、こういう「わずらわせない」というのが、有名人にとってはいちばんん「サービス」なのかもしれませんね。
 この本を読んでみると「心地よいサービスが受けられるのであれば、値段が少々高くても構わない」という人は確実にいるのだな、ということを思い知らされます。

 私は、大阪から戻って大同苑で働いていたとき、給料は5割増しでもらっていました。とてもうれしかったですし、女将さんに感謝もしていました。だから、辞める気など起きませんでした。もっとも、私は一生懸命がんばりましたから、それに応えてくれたということでしょうね。
 私にはそういう経験があるから、従業員にも苦労させたら、その分だけ報酬を支払うべきだという思いがずっとあります。でも、従業員に支払うための原資は、どうすればいいのでしょう。お客様からいただくしかありません。そう考えると、自然と単価を上げるしかなかったのです。それもあって現在の値段になったということです。
 たとえば、ラーメン店でよく行列ができている店があります。私もラーメンが好きですから、並ぼうと思うときもありますが、40分くらいかかるとのことです。私はそこまで並んで食べる気にはなりません。
 私がその店の経営者だったら、「こんなに並ばせたら申し訳ない」と思いますね。仮にその店のラーメンが750円だったとすれば、800円にすればいいじゃないか、と思うのです。値段を上げるのです。1杯=50円浮いたら、純利益がどのくらい上がるか計算をします。それは次の店を出す蓄えにするなり、従業員の給料を上げるなり、そういうことに使えばよいのではないでしょうか。
 お客様にしても50円値上げしたからといって腹を立てる人はそう多くはないと思います。
 それは、私が実証済みです。六本木1号店の人気が出始めて、お客様が行列をつくったとき、何時間も並んでいただくのは申し訳ないので値段を上げました。でも、しばらくすると、また行列ができてしまいます。だから、また値上げする。そんなことを3回くらい繰り返しました。
 それで店も潤いましたし、支店もできました。従業員にも還元ができたのです。

 
 もちろん、こういうのは、どの店でもできることではないし、僕もお客の立場なら、ちょっと値上がりしていたら、あんなり良い気分にはなりません。
 ただ、経営する側としては、「値上げ=悪」と決めつける必要もないのでしょうね。
 「混んでいる」というだけで敬遠する人は、少なからずいるはずですし。
 「価格競争に巻き込まれて、どんどん経費を切り詰め、安かろう、悪かろうになってしまう」よりは、ちゃんとした値付けをして、その分、従業員の待遇を良くする、というのは、店のクオリティを維持するためにも有効なはずです。
 忙しければ、その分、高い給料をもらえるというのは、働いている人にとっても合理的だし、モチベーションにつながります。
 「値上げ」は、必ずしもマイナス面だけではないのです。経営者側はもちろん、客側にとっても。

 
 ちなみに、「叙々苑」の名前のルーツについても書かれているのですが、「外国人は肉を焼くときの音を『じゅうじゅう』ではなく『じょーじょー』と発音する」という話を聞いたのが、きっかけなのだそうですよ。


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