琥珀色の戯言

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【読書感想】バカざんまい ☆☆☆☆

バカざんまい (新潮新書)

バカざんまい (新潮新書)


Kindle版もあります。

バカざんまい(新潮新書)

バカざんまい(新潮新書)

内容(「BOOK」データベースより)
バカ馬鹿ばか。結局、この世はバカで溢れている。「日本代表勝てる」と煽るメディア、「お騒がせ」を謝罪する芸能人、上から目線で地方を語る東京人、バーベキューを礼賛したがる若者―。ウェブを介して増殖し続ける奴らを、ネットニュース編集者が次々捕獲、鋭いツッコミで成敗していく。読後爽快感220%、ネットに脳が侵されていない賢明な読者に贈る、現代日本バカ見本帳。


 中川淳一郎さんが『週刊新潮』に連載している「この連載はミスリードです」をまとめて加筆し、新書として上梓したものです。
 世の中のさまざまな事象に噛みついているようで、たしかに「なんとなく誤魔化されているというか、見て見ぬふりをしているもの」を洗い出しているなあ、と感心しながら読みました。
 ネットニュースに対する世間の反応に直面していると、やさぐれてしまうのかなあ、などとも思いつつ。

 ニュースを読んでいて、事件当時者の言葉でイライラするものが4つあります。それは「個別の案件には答えられない」「仮定の話はできない」「担当者が不在なので答えられない」「訴状が届いていないので答えられない」。


(中略)


「仮定の話はできない」については、食中毒騒動の際に「現在の被害者は24人ですが、他県にも拡大したらどのような対応を取るか」で「仮定の話はできない」って、お前、そのくらいの危機シミュレーションはしとけよ! かつてホリエモンが「想定内」という言葉で流行語大賞を取りましたが、「想定する」「仮定のリスクを考える」ことは企業人としては当たり前のことなんですよね。
 これは安保法制についても同様で、山本太郎議員が安倍晋三首相に「原発が攻撃されたらどうするのか?」と聞いたら安倍首相は「仮定の話には答えられない」って、どーいうことですか。まぁ、山本氏も原発に拘泥しすぎるきらいがあって、狙われるのはむしろ官邸でしょうというツッコミはあるものの、そもそも安保法制って「仮定」のことを徹底的に考えたうえで採決をするものでしょ? 来たる未来の安全保障に対して想定をすることなのだから「仮定の話はできない」っておかしいでしょうよ。それなのに「どんな状況で自衛隊が出動するか?」みたいなことを聞かれたら「ホルムズ海峡の機雷除去だ」って、答える。それ「仮定」の話だろうよ!


 たしかにそうだよなあ、と。
 また山本太郎さんか……と、つい考えてしまうのも事実なのですが、仮定というか、ある程度起こりうることを「想定」していないと、安全保障の枠組みをつくるのは難しいはずです。
 何が起こってもだいじょうぶ、ってわけには、なかなかいかない。
 ちなみに、この「ホルムズ海峡の機雷除去」については、池上彰さんが著書で「まずありえない話」だとツッコミを入れておられます。


fujipon.hatenadiary.com


 でも、国会議員たちは、ここで「それはおかしい!」って言わないんですよね。
 というか、僕もなんとなく「仮定の話にいちいち答えてられないよ」なんて思っていたのです。
 あらためて考えてみれば、やっぱりおかしいのに。


 著者は、「食べログ」をはじめとするグルメサイトには、こんな苦言を呈しておられます。

 飲食店ってもんは、味、店員、雰囲気、場所などの各要素を、それぞれがどう思うかで評価は千差万別のはずだ。濃い味付けが好きなヤツには「しょっぱいことで有名な店」は高評価だろうが、薄味好きにとっては最悪の店になる。
 これをネットのグルメサイトは平均値で置き換えてしまった。ある人はA店に3.6をつけ、B店に3.4をつけた。だからといってA店がB店に優るわけではない。評価者100人の平均値が3.8となったC店が、万人にとって結構な店であるとも限らない。
 最も唾棄すべきが「コスパ」という言葉だ。ご存じ「コストパフォーマンス」の略で、投資に対していかにリターンがあったかを表すが、いちいち食べログとかブログとかに「この店はコスパがいい、悪い」と書くのはどうなのか。
 飲食店っていうのは本来、「コスパ」だけを求める場所じゃないんじゃないの? ちょっと高いし汚いけどホッとするよな、なんて思う客が大勢いる店に、コスパしか考えない連中は「CPが悪いざます!」ってネットで大批判を並べ立てる。
 デフレ時代に若い方々が、いかに旨いものを安く食べるかに腐心するのは分かります。でも、飲食店が「コスパ」だけなら、1時間行列して100円で腹一杯になれば「コスパ最高」か? 人生はコスパじゃ測れない。汚いにも、ボロいのもありだ。自分にとっていい店は、ネットの条件検索では発掘できないってことを理解していただければ幸いです。


 僕自身の感覚としては、グルメサイトって、「大ハズレを引かない」ためには使えると思うのですが、大当たりの店を探すのには、あまり向かない気がするんですよ。
 とくに「値段」に関しては「とにかく安いもの」がもてはやされるのはわかるのだけど、少し高級な店になると「値段が高い」というだけで、かなり「コスパ」の評価が悪くなって、点数が下がってしまうのです。
 せっかく外食するのだから、「安くてけっこう旨い」よりも、「ちょっと高くても、ものすごく旨い」とか、「何か特別な日に行きたい店」を探したいときって、あるじゃないですか。
 そういうときに、「食べログ」は、あんまり参考にならない。
 店選びっていうのは「並ぶ時間」なんていうのもあったりしますし、接客も忙しいときには物足りなかったりもするし。
 「いい店」って、行列していたり、大混雑していて落ち着かなかったりするじゃないですか。
 並ぶことに時間を費やすとするならば、どんなに安くて味が良くても「コスパが悪い」場合もあります。


 とはいえ、「ハズレを引きたくない」ときに、けっこう頼ってしまうのも事実なんですけどね。
 なんのかんの言っても、便利であることも間違いないんだよなあ。

 

 元フジテレビアナウンサーの長谷川豊氏が、以前ウェブ上に「『60歳以上の選挙権はく奪』を真剣に検討してみる」という文章を書きました。要は、判断力の落ちたジジイとババアから選挙権を奪え! と提唱していたのです。その中でこんな一節がありました。

 アメリカでは中学生にもなると、休み時間にはちゃんと政府の政策や選挙についての会話が飛び交います。そういう授業もしています。高校なら、十分すぎるほどの知識を持っています。

 これは私が中高時代に住んだアメリカとはまったく違いますね。
 世の中の論者や口の達者な連中は、アメリカの中高生・大学生は熱心に授業をし、意識が高いのである、それなのにお前らは……と結局は日本の生徒・学生叩きに繋げようとする。大学生はその通りですが、高校生の実態を私の経験からお話ししましょう。もう20年以上も前の話なのですが、あまり変わっていないでしょう。彼らが言うところの「アメリカでは……」はLA、NY、ボストン、サンフランシスコ、そしてペンシルバニア大学やシカゴ大学の一部の話であり、一般的なアメリカ像とはかけ離れています。
 私が通ったのは人口3万人の保守的な町の公立高校。1年生の時、450人が入学したのですが、4年生の時に卒業したのは270人。転校する人が多いのではなく、退学する人が多いのです。理由は「勉強をしたくない」「人間関係が良くない」というありがちなものに加え、「妊娠した」「ドラッグ中毒で逮捕され、施設に入った」というものもかなりありました。
 体育館のロッカーにはコカインが落ちていて、その袋を監視員のオッサンに渡し、「後で校長先生に渡しといてよ」と言うと、ウインクをし「こんないいモノを渡すわけねぇよ」と言われました。この監視員だって、ケンカが多発するものだから、制止するために存在しているのです。
 友人同士の会話にしても「金曜の夜は酒飲もうぜ! いぇい、パーティータイムだ!」とか、「ジェニーのヤツはいいオッパイしてるよな!」みたいなエロい話だらけです。政治の話なんて聞いたことないですよ。


 同じアメリカでも、「意識が高い一部の学校」を切り取って語れば「アメリカはすごい!」ってことになるけれど、中川さんが経験してきたような高校もあるのです。
 「アメリカでは……」っていう人の言葉を鵜呑みにしないほうが良いと思います。
 選挙権が18歳に引き下げられたとき、テレビの映像でみるかぎりでは、選挙の説明を受ける日本の高校生たちの真剣な態度は、なかなか立派なものでしたよ。


 あと、個人的には『2ちゃんねる』の「変態番付」の話がツボにハマったのですが、これはちょっと具体的には紹介しかねるところもあるので、興味がある方は、書店などでちょっと覗いてみてください。
 

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