琥珀色の戯言

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【読書感想】ポケモンGOは終わらない ☆☆☆☆

ポケモンGOは終わらない (朝日新書)

ポケモンGOは終わらない (朝日新書)


Kindle版もあります。

ポケモンGOは終わらない (朝日新書)

ポケモンGOは終わらない (朝日新書)

内容(「BOOK」データベースより)
本当に笑っているのは誰か?語られざる「ポケノミクス」の正体!リリース以来、世界を席巻しているポケモンGO。その爆発的ヒットの秘密を探っていくと、日本製コンテンツの勝利と素直に喜べない構図が浮かび上がってくる。ポケモンGOは、誰がどこで稼いでいるのか?いかにして生まれ、どのような影響をもたらしたのか?秘められたテクノロジーを余すところなく解き明かし、新しいビジネスの可能性を指し示す。


 『ポケモンGO』、リリース直後から大きな話題となり、東京ではポケモン探しに公園にたくさんの人々が集まっていました。
 地方在住の僕にとっては、実際に『ポケモンGO』で遊んでいる人を何度か観たことがある程度なので、そんなに流行っている、という実感はないんですけどね。
 iPhoneのアプリの「トップセールス」ランキングでは、ずっと5位くらいに入り続けており、まだまだ遊んでいる人はたくさんいそうです。
 他の「トップセールス」ランキングの上位は『パズル&ドラゴンズ』や『モンスターストライク』といった長年遊ばれ続けている常連ばかりなので、『ポケモンGO』は「圧倒的ではないけれど、最近出たアプリのなかでは、かなりのアクティブユーザーがいて、稼げている」ということにはなりそうです。


 ネットやメディアでは、一時に比べると話題になることは少なくなり、「『ポケモンGO』は終わった」などという声もあるようですが、一時期ほどの熱狂はないものの「定番化」しつつあるのです。

 ナイアンティックがサービスを開始したのは2016年7月6日。スマートフォンアプリのマーケティング調査を手掛けるApp Annie(アップ・アニー)の調べによれば、スタートから約1ヵ月半が経過した段階で、全世界でのダウンロード数は約1.4億回を超えた。ナイアンティックはアプリダウンロード数・売り上げで、7月・8月ともに、他の企業を抜きトップに躍り出た。ゲームはもちろん、フェースブックTwitter、LINEといった、あらゆるアプリを提供するメーカーを抜き去っての結果だ。
 しかも、ナイアンティックはポケモンGOに関する宣伝をほとんど行なっていない。一般的にスマホアプリは、マスに広げようと思えば思うほど、テレビやネットでの広告が重要になる。ブームの乗って多くの報道がなされ、それが広告の代わりになっていた部分は大きいのだが、それでも、従来の常識では測れないスケールの瞬発力だった。


 他の大ヒットスマートフォンゲームは、テレビCMを大量に流しているのですが、『ポケモンGO』のCMって、僕は見たことがありません。
 それでも、ネットで採りあげる人がたくさんいて、『ポケモンGO』に関する話題が「ニュース」として報道されることによって、自分たちで広告を出さなくても、十分な宣伝になっているのです。


 『ポケモンGO』が登場した際、「なんで任天堂は自社でこれを作れなかったのか?」「同じようなゲームでキャラクタ—を変えた二番煎じゲームが、これから大量に出てくるに違いない」と言われていましたし、僕もそう思っていました。
 しかしながら、この本で、『ポケモンGO』が生まれた前提条件を知ってみると、簡単そうにみえて、なかなか他所では真似できそうにないのです。

 子供の頃、ポケモンのゲームやアニメで体験した「街中にポケモンがいる」という体験は、あくまで想像でしかなかった。だがポケモンGOでは、実際に「ポケモンが街の中にいる」という体験が作り上げられている。その体験が人々の熱狂を生んだ。子供の頃に感じていた「あの公園で集めたポケモン」という感覚をスマートフォンの中に再現したことが、ポケモンGOというゲームの一つの本質なのである。


(中略)


 ポケモンGOはまったく違う意味で「AR的ゲーム」である。それは、子供の頃ポケモンをプレイしていた時は脳内にあった。「街中にポケモンがいる」という状況を、実際の街の中に再現したことにある。ARの本質は、脳内の「妄想」が持つリアリティを、現実と考えられるほどまで高められるということにある、と筆者は考えている。ポケモンGOスマートフォンという窓を介して、ポケモンの世界と現実を一体のものに感じられるようにした。その行為がなにより「AR的」なのである。

 
 「AR」というのは、Augmented Reality(拡張現実:現実の世界にCG(コンピュータグラフィックス)を重ね、本当はそこにないものを現実にあるように見せる技術)のことです。
 人気ゲームとそのキャラクターを使ったから、だけではなくて、子供の頃から触れてきた『ポケモン』の世界観が、スマートフォンという新しいツールによって、「現実」になった。
 これまでの歴史や思い入れの積み重ねが、大きな反響につながったのです。


 ナイアンティック社は、もともとGoogle(現在はアルファベット)の社内ベンチャーとしてスタートし、Googleの位置情報系のサービスの開発を行なっていたジョン・ハンケさんが中心となっている会社です。
 同社は『Ingress(イングレス)』という位置情報ゲームを2013年12月から運営しており、このゲームのユーザーたちによるさまざまな情報の集積が、『ポケモンGO』には活かされているのです。
 『ポケモンGO』には、精密な地図情報が不可欠であり、Googleの地図情報サービス(グーグルマップ)や『Ingress』でゲームユーザーが提供してきた「面白い場所」の情報を持つナイアンティック社だからこそ、開発・運用できたゲームだったのです。
 ちなみに、「位置情報ゲーム」は、ナイアンティック社が世界初ではなく、日本のガラケー時代、2000年代の前半にはすでに存在し、一定の人気を得ていたことを著者は紹介しています。
 

 結果的に大ヒットとなった『ポケモンGO』ですが、ここまでヒットするとは、関係者も予想していなかったそうです。

 ポケモンGOが大ヒットには至らない、と感じられた理由は、漏れ伝わってくる「ベータユーザーからの反響」が芳しくなかったからだ。
 スタート時点でのポケモンGOをプレイしてみるとよくわかるが、その内容はきわめてシンプルなものだ。歩いていると出てくるポケモンに、モンスターボールをぶつけて捕まえるだけ……といってもいい。ポケモンGOのべータテスターのほとんどは、イングレスのヘビーユーザーだった。イングレスは複雑なゲームで、やるべきことがたくさんある。だから、「ポケモンを捕まえるだけ」のゲームであるポケモンGOを物足りなく感じたのだろう。その反応は間違いではない。
 だが、ここには重要なファクターが抜けていた。「ポケモンが街中に現れる」ことのインパクトと熱狂を予想できなかったのだ。
 イングレスプレイヤーにとってポケモンGOは既視感のあるゲームだった。それも当然である。ポケモンGOの中で使われるデータは、ほとんどがイングレスから得られたものであったからだ。


 ジョン・ハンケさんは、自分の子供が晴れた週末にずっと家にこもってゲームをしているのをみて、「もっと外の世界に目を向けてほしい。外には魅力的な場所がたくさんあるのに」と考え、子供たちを外で遊ばせるために、『Ingress』を開発したそうです。
 そういえば、任天堂が「ゲームボーイ」を開発したときに「友達どうして外で遊べるように」と横井軍平さんは通信機能をつけることにこだわった、という話をきいたことがあります。
 僕自身にとっても、子供と外に出て散歩(というか、子供には「ポケモン探しの冒険」なんですけどね)しながら『ポケモンGO』をやるというのは、とても新鮮な体験だったんですよ。
 「ガチャ」などもなく、課金が比較的緩やかであることも含めて、「お金儲けのために最適化」するのではなく、まずはユーザーに新しい体験を提供し、楽しんでもらおう、というサービス精神も、ポケモンGOが愛されている理由だと思います。
 ちなみに、ポケモンGOは、アクティブユーザーの数が現時点では圧倒的に多く、薄利多売のビジネスモデルになっているそうです。
 一部の重課金ユーザーに支えられている多くのソーシャルゲームとは、収益構造も異なっているのです。


 スタート直後の熱狂は薄れてきていますが、まだまだ、『ポケモンGO』の進撃は続きそうです。
 というか、僕も、もうしばらく子供と一緒に散歩できればいいなあ、と。