琥珀色の戯言

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【映画感想】ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー ☆☆☆☆

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あらすじ
帝国軍の誇る究極兵器デス・スターによって、銀河は混乱と恐怖にさらされていた。窃盗、暴行、書類偽造などの悪事を重ねてきたジン(フェリシティ・ジョーンズ)は反乱軍に加わり、あるミッションを下される。それはデス・スターの設計図を奪うという、困難かつ無謀なものであった。彼女を筆頭に、キャシアン(ディエゴ・ルナ)、チアルート(ドニー・イェン)、ベイズチアン・ウェン)、ボーティー(リズ・アーメッド)といったメンバーで極秘部隊ローグ・ワンが結成され、ミッションが始動するが……。


starwars.disney.co.jp


2016年24作目の映画館での観賞。
クリスマス連休前の夕方の回で、観客は30人くらい。


スター・ウォーズ』のスピンオフ作品ということで、便乗商法みたいなものかなあ、とあまり期待していなかったのですが、ネットではけっこう評判が良かったんですよね。
まあ、いずれにしても観たとは思うのですが。


冒頭、あのテーマ曲と『スター・ウォーズ』のストーリー説明の文字スクロールが始まるのかな、と思いきや、「かなりスターウォーズっぽいけど、ナンバリング(エピソード1〜7)と紛らわしいようなオープニングにはしていない」ことに、けっこう好感を持ちました。
ああ、ディズニーは、『スター・ウォーズ』の本編に、それなりの敬意を払っているのだな、って。
この『ローグ・ワン』は、『スター・ウォーズの世界観をうまく利用し、みんなが知っている有名なキャラクターたちがところどころに顔を出しつつも、新しいキャラクターたちがちゃんとドラマを見せてくれる」映画だと思います。
個人的には、冷酷な男にみえたキャシアンが、「反乱軍としても、綺麗事だけでは生きていけない」ことを語るシーンが、すごく印象に残りました。
「正義の味方」にだって、お金や武器は必要だし、作戦を遂行するためには、汚れ仕事も必要です。
スター・ウォーズ』の「正伝」では、共和国側は「フォースを扱う正義の味方」として描かれているというか、そう描くしかないところもあるんですよね。
オビ・ワンの若い頃などは、「やんちゃキャラ」ではありますが、それでも、卑怯なことや「なんでこんな酷いことを……」という行動は、基本的にとりません。
『エピソード3』のアナキンの最後のあれは……まあ、精神的に追いつめられていたからノーカウント、っていうことで。


観ながら「大量破壊兵器としてのデス・スター」についても、ちょっと考えてしまいました。
『エピソード4』で星をまるごと破壊したのをみて、なんて残虐な兵器なんだろう、と思ったのですが、あれだけ圧倒的な力を持つ兵器があれば、それは抑止力になり、反乱軍を戦わずして諦めさせることも可能なのではないか、つまり、デス・スターが存在することそのもので、犠牲者を出さずに平和(と言っていいかどうかは微妙だけど)をもたらすことができるのではないか、と思う人がいるのは、理解できなくもないなあ、と。
「英雄たちの物語」ではない、『ローグ・ワン』を観ていると、「戦争の現実」みたいなものを、ちょっと考えさせられます。
そもそも、ジンのお父さんの行動は、正しかったのか?とか。


まあ、そんな理屈はさておき、『スター・ウォーズ』らしいメカと、『スター・ウォーズ』らしいいろんな星の人が入り混じった世界の構図、そして、あの音楽。
シナリオは「いつものスター・ウォーズ」ではあるのですが、「スピンオフ」だけに先が読めないところもあるし、気楽に観られる。
ただ序盤については、誰がジンの敵か味方かよくわからず、「この人、なんで味方を撃ってるの?」と困惑してしまいました。
その描写には、作品としての意味があったわけですが。


絶賛している人も多いこの作品なのですが、個人的には「あんまり期待し過ぎて、ハードルを上げてからみてしまうと、それほどでもないなと感じる」くらいだと思います。
「どうせクリスマス・冬休み商戦用のスピンオフだろ。まあ、気楽に見てみるか」というくらいの構えだと「おお、意外とやるじゃん!」って、たぶん、嬉しくなります。
懐かしい「本編」のキャラクターがこの作品の主役を食わない程度に出てきますし。


ダース・ベイダーに関しては、そんなにたくさん出てくるわけじゃないけれど、「おお、久々に問答無用に強いベイダー卿だ!」と、ニヤニヤしてしまうのです。
なんでダース・ベイダーって、酷いことばっかりやってるのに、こんなに人気があるんでしょうね。
難病の子どもが、ルークやハン・ソロじゃなくて、「ダース・ベイダーに会いたい!」というお願いをして、ベイダー卿のコスプレをした人がお見舞いに行った、なんて話もありました。
この映画では、あの黒いマスクにスーツが、なんだかピカピカで、まだダースベイダーになりたてなのかな、とか思いながらみていました。
デス・スターも「エピソード4」では、破壊されるために出てくるようなものですが、その威力をこの作品では堪能できます。
帝国軍が、ちゃんと「悪くて強い」んですよこの映画では。


とりあえず、「エピソード4」につながる話なので、登場人物の運命はある程度予想できるのですが(そういう意味では『真田丸』的な感じもします)、それでも、なんというか、「主役になれない人間の琴線に触れる物語」ではあるんですよね。


スピンオフとしてはかなりよくできた作品ですし、これ以上のレベルのSF映画って、なかなか無いと思うんですよ。ただ、『スター・ウォーズ』本編には「長年の思い入れ」というのが、良くも悪くもあるからなあ。


とりあえず、『スター・ウォーズ』が嫌いじゃなくて(できれば好きで)、SFに抵抗がなく、この年末年始に「ハズれない映画」を観たい人にはオススメできる良作です。
しかし、これを観ると、また『エピソード4』を観たくなりますね。
やっぱり、「良いスピンオフ」なんだろうな。


fujipon.hatenadiary.com
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