琥珀色の戯言

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【読書感想】中国が喰いモノにするアフリカを日本が救う ☆☆☆



Kindle版もあります。

内容紹介
広大な未開の地下に眠る鉱物資源、10億人以上の巨大市場、年平均5パーセント以上の経済成長……先進国が生き残りを賭けて進出・協力を望む“ラスト・フロンティア”アフリカ大陸。日本がその果実を得るためになすべきことは何か?その果実を強奪しようとする競合国、とくに中国をしのぐための知恵とは何か? 日本の未来を約束するアフリカとのビジネススキームをアフリカと日本、二つの祖国を持つ「侍」が伝授する!


 あの「鈴木宗男議員の私設秘書」として知られた、ムルアカさんの秘書。
 この新書を読んでいると、ムルアカさんは、もともとコンゴから留学してきて、日本とアフリカの架け橋となる活動をしていた際に、鈴木宗男さんと知りあい、日本にアフリカを知ってもらうために協力してきた、ということなんですね。
 鈴木さんが強面のボディーガードとして連れてきたわけじゃなかったんだな、と。
 ほんと、思い込みって良くないなあ、と反省しました。


 この新書では、そのムルアカさんが、資本主義にとっての「ラスト・フロンティア」と呼ばれるアフリカの現状と、そこで行なわれている中国の投資や移民政策、そして、日本ができること、やるべきことについて語り尽くしている本です。


 ここで語られているのは、まず、「アフリカ」というのを十把一絡げで語ろうとすることのバカバカしさ、なんですよ。

 10億人以上の人を抱えて、年平均5パーセントを上回る経済成長を続け、さらには地下に豊富な天然資源が眠るアフリカ大陸が”ラストフロンティア”と呼ばれはじめてから十数年の歳月が流れました。いまも世界各国の政府や企業、投資家の注目を集めています。
 これからの世界経済をアフリカ抜きにして語ることはできないと言っても過言ではありません。とくに豊富な資源は、日本をはじめとする先進国が抱えるエネルギー問題、経済再生の原動力になるポテンシャルを秘めています。

 JETRO日本貿易振興機構)の調査によれば、1990年代前半、アフリカの名目GDP総額は約5000億ドル程度でしたが、2000年には約6000億ドルにまで伸びました。さらに2011年には、1兆9100億ドルに達しました。つまり200兆円規模の市場になるわけです。20年あまりの間に4倍近くの急成長。2000年代の経済成長は年平均5パーセントに達していて、これからも伸び続けると見られています。
 さらに急増しているのが、世界からの投資額。
 2000年には1000億ドルに満たなかったアフリカへの直接投資残高が2011年には5695億ドルにまで増加しました。

 またアフリカの経済発展は人口増加を抜きには語れません。
 アフリカ大陸の人口は、1950年の2億2000万人から2011年の10億5400万人へ60年の間に約5倍に急増しました。これは世界の全人口の7分の1を占める数字です。これからもさらに増え続け、2050年には22億人を超えて、全世界の5人に1人がアフリカに居住すると予想されるほどです。


 これだけの「可能性」を秘めているアフリカに、世界中が注目しているのです。
 人口がこれだけ増えていくというだけでも、市場規模が大きくなっていくことは間違いありません。
 中国は、すでに、アフリカ諸国に積極的に進出しているのです。


 嫌中・反中の本というのは巷間あふれていて、個人的にはもうお腹いっぱい、という感じではあるのですが、これを読んでいると、「ビジネス」のためにはアフリカまで進出することを厭わない中国人のアグレッシブさと、金儲けのためには相手への細かい配慮が無くなってしまう無神経さに圧倒されてしまいます。
 そこまでやるのか、中国は……


 ムルアカさんが3年前、日本政府の仕事でコンゴを訪問したとき、大雨に遭い、道路が冠水して車が立ち往生してしまったそうです。
 そこで、空港まで歩くことにしたところ、大使館の日本人スタッフを中国人と思いこんだ現地の人々が「中国人、許さない!」と叫びながら、向かってきたのだとか。
 ムルアカさんは彼らを必死で説得したのですが、現地の人は、ムルアカさんに、
「中国人には、人間の心がない。許せない」と言っていたそうです。

 彼らの怒りの原因は中国の”援助”でした。
 コンゴ国内の道路の約80パーセントは、中国が建設したものです。雨期になると、コンゴのあちこちで道路が冠水します。
 なぜいとも簡単に水があふれ出してしまうのでしょう。
 日本人には信じられないかもしれませんが、工事があまりにもずさんでいい加減だからです。
 日本の業者が道路を建設する場合、着工前に調査を行ないます。地質や水はけ、交通量、利用者がどこをどう横断するか、歩道橋や横断歩道をどこにつくるか……。総合的な判断のもと、もっとも合った工法で工事に入ります。
 しかし中国の企業は事前調査なんて手間のかかることはしません。
 政府や行政から道路工事の許可を取り付けると、すぐにどこからともなく大勢の中国人作業員や機材が集まってきます。そして翌日から突然工事がはじまります。
 地域住民も目を丸くして驚くほどのスピードです。しかも住民の目の前で工事が行なわれているのに、現地のコンゴ人労働者はほとんどおらず、働いているのは中国人ばかり。
 専門家を雇うわけでもないので、その道路がどのような役割を果たすのか、開通後、町や住民にどう影響を与えるのか、まったく関心を払いません。いきなり片側三車線から四車線の大きな道路をつくりはじめるのです。
 事前調査はしていませんから、降水量が増える雨期に雨水がどこにどれだけ流れるかなんてお構いなし。ただひたすら幅の広いアスファルトの道路をつくり続けます。当然、排水能力以上の雨が降れば洪水が発生します。


(中略)


 でも、水があふれ出すだけなら、コンゴの人たちも殺そうとするほど怒りはしなかったでしょう。
 残念なことに、この地域では、子どもが命を落とす事故があったというのです。
 コンゴでは、ベルギー植民地時代に地中に電線を埋め込みました。しかし50年以上の歳月が流れて、電線を覆っていたケーブルなどが劣化。あちこちがむき出しになっています。しかし中国の企業は事前調査をしません。どこに電線が埋められているか、電線がどういう状態か、わからないまま工事をはじめます。しかも中国の道路は、地表一面を覆います。先ほども書いたように雨期の豪雨で、瞬く間に道路に水があふれ出します。降雨量に排水が追いつかないのです。やがて地中に流れ込んだ水が電線に触れると、道路を流れる水にも電気が流れ出します。
 この地域では、雨の日に外を歩いていた幼い子どもたちが感電死してしまったというのです。
 子どもだけではありません。アフリカの人々はふだんビーチサンダルで生活しています。大人たちも感電して、大けがを負う事故が増えています。同様の事故がアフリカ各地で何件も起きて、社会問題になっています。

 
 それはさすがに怒るだろ……と。
 現地の人の仕事が生まれるわけでもなく、まともに調査もせずに、危険な道路をつくってしまう中国。
 ムルアカさんによると、日本の企業は、ちゃんと現地調査をして、現地の人を雇って工事をするので、ちゃんとした道路もできるし、評判もすこぶる良いそうです。
 工事を終えたあとのメンテナンスもしっかりしていて、耐久性にもすぐれている。
 最近の日本国内でのマンション偽装などをみると、「昔の日本人は偉かった」ということなのかもしれませんけど。
 それでも、中国は、政府と連携した積極的な売り込みとスピードで、どんどんアフリカでのインフラ工事をすすめているのです。現地の人にとっては、はた迷惑としか言いようがないような。


 ただ、人口が多く、チャンスを求めて、アフリカまで仕事を求めてやってくることを厭わない中国人と、「アフリカにまで行って、働かなくても……」という現代の日本人の意識の差も大きいのかもしれませんね。
 なんのかんのいっても、日本でのアフリカのイメージは、内戦とかHIVエボラ出血熱、テロなどのマイナスのイメージが強く、いくら「ビジネスチャンス」だと言われても、そこで道路をつくるために働こう、という人は、そんなに多くはなさそうだから(日本人だと人件費も高くなりますし)。

 中国人たちは、本当にわずかなビジネスも見逃しません。
 まさかそこにきたか……。私だけでなくアフリカの人々が夢にも思わなかった出来事があります。
 コンゴでは朝、路上で揚げたてのドーナツを売るおばあちゃんたちの姿がよく見られました。おばあちゃんたちが起きるのは朝3時。作りたてのドーナツを小学校に登校する子どもや仕事に向かう労働者が買って食べる――コンゴの原風景といってもいい毎朝の光景でした。
 しかし中国人は、おばあちゃんたちの仕事だったドーナツ屋台にも目をつけました。正直にいえば、当初、私たちには信じられませんでした。わざわざ中国からやってきてまでやるビジネスなのか、と驚き、本当にメリットがあるのだろうか、と疑問に思ったのです。
 しかし彼らはおばあちゃんたちの仕事を乗っ取りました。彼らは安く大量のドーナツを生産しました。先ほども話したように残念ながらアフリカではまだ食の安全に対する意識は日本ほど高くありません。しかも毎日のことですから、買う側もどうしても安い方を選んでしまいがちです。
 結局、昔ながらのおばあちゃんが作るドーナツ屋が姿を消して、代わりに中国人が経営するドーナツ屋ばかりになってしまいました。
 中国人の進出により、コンゴの人たちにとっては当たり前だった原風景が奪われかけているのです。
 最近は中国製ドーナツを食べた人が食中毒を起こし、ドーナツを作った屋台が廃業に追い込まれるという出来事がありました。


 ほんと、よくここまでやるなあ、と思うんですよ、中国。
 食の安全に関して、かなり杜撰な国であるというのは日本人としては痛感せざるをえないのですが、コンゴまで行って、現地のおばあちゃんが早起きしてつくっていたドーナツ屋にまで、取って代わろうとするのか……


 ただ、こういうバイタリティというのは、彼らの「強み」でもあるんですよね。
 ムルアカさんは「アフリカは『ラストフロンティア』だし、ビジネスチャンスがたくさんある。資源があるけれど技術がないアフリカ諸国と、資源はなくて技術は持っている日本は補完し合える存在だ、と仰っています。
 それはたしかに、その通りなのだと思います。
 でも、日本という国の将来にとって有益でも、個々の企業や労働者にとっては、ここで中国と競り合って、摩擦を起こしてまでやるのか、と問われると、尻込みしてしまうのではないかなあ。
 アフリカも危険な場所ばかりじゃない、というのもよくわかります。
 パリの中心部だって、あんなテロに遭ってしまうこともあるのだし。
 とはいえ、日本にとっては、あまりにも遠い国であるのも事実です。

 2014年に一人あたりのGDPが1万ドルを超えてアフリカ第三位となった産油国ガボンの臨時代理大使であるフランスワ・ペンジェ・ボンビラ氏は興味深い指摘をしました。
中国企業は、日本企業や欧米企業と違い、その国の国内情勢などに関係なく、ビジネスになるかどうか、という部分で投資の判断をしています。仕事をして利益を上げることだけを考える。一方の日本や欧米の企業はその国の治安や政情などを踏まえて、進出を決めます。また、技術指導を同時に行なったり、国内情勢にもタッチしようとしたりする。我々の国としては、単純にビジネスとして投資してくれる中国の方が判断のスピードが速いので取引しやすい。そこが日本とのビジネスが進展しない要因のひとつではないでしょうか」
 日本は相手の国の政情について十分に把握した上で、いいものをつくり、人材育成、技術移転を行なって相手のメリットも生み出そうとします。
 自分たちがいなくなっても、メンテナンスや運営に支障がないような形の支援をしてきました。もちろん派遣する技術者や専門家の安全も確保しなければなりません。
 そこが評価される反面、決断までに時間がかかるというデメリットになります。
「石橋を叩いて渡る」という日本のことわざがありますが、叩いても「渡らない」。
 日本企業はアフリカに対する知識が乏しい。理解できないものには手が出しにくいので、二の足を踏んでしまうわけです。


 だからといって、中国と同じやりかたでいく、というわけにもいかないですよね……
 ムルアカさんが書いていることは、すごくよくわかるのだけれど、現実問題として、いまの日本に、そこまでの切迫したフロンティア・スピリットを求めるのは厳しいのではなかろうか。
 アフリカが経済的にもう少し豊かになってからが、日本の出番、となれば良いのですが。


 それにしても、「ラスト・フロンティア」まで、こうして開発されてしまったあと、資本主義はどこへ向かうのでしょうね。

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