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琥珀色の戯言

【読書感想】【映画感想】のブログです。2016年8月より、『はてなブログ』に移行しました。

【読書感想】まんしゅう家の憂鬱 ☆☆☆☆


まんしゅう家の憂鬱

まんしゅう家の憂鬱


Kindle版もあります。

まんしゅう家の憂鬱 (集英社文芸単行本)

まんしゅう家の憂鬱 (集英社文芸単行本)

内容紹介
Kindle版について)
※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。


まんしゅう家で日々起こることとは――。漫画家のアシスタントを辞め、自暴自棄になっていたきつこ。新天地を求め、オムツプレイ専門店の面接を受けることに!? 小さな雑居ビルへ向かうとそこには――「オムツ倶楽部の面接」。ある日突然「姉ちゃん、オレが包茎手術した時の話を書いてくれ」と言い出した弟。戸惑いながらも、術前から術後の経過を描ききった姉のきつこ。あまりに痛々しく微笑ましいその結末とは――「包茎手術」。ブログ漫画に加え、「小説すばる」連載のエッセイを収録。身の回りのゲスな話をユーモラスに、時にシュールに描く、抱腹絶倒の全17編! 漫画家“まんしゅうきつこ”の原点がここにある!


 僕は基本的に、ひとりの人間の体験ってそんなに大きな違いはなくて(逆に、まったく同じ、ということもないのだけれど)、解釈のしかたというか、事実を見る、ひとりひとりのレンズの差のほうが大きいのではないか、と考えています。
 でも、この「まんしゅうきつこ」さんのエッセイ(+マンガ)を読むと、「うーん、やっぱり、ヘンな体験を引き寄せてしまう人って、いるのかもしれないな……」という気がしてくるんですよね。
 そして、こんなに「濃い」内容なのに、まんしゅうさんは、そんな自分を他人事のように観て、描いているのです。
 最初がいきなり「オムツ倶楽部の面接」だものなあ。
 そこに「ちょうど転職を考えていた」という理由で電話してしまう、まんしゅうさん。
 そして、経営者の男性が放った言葉。

 うちに来るお客さんは大概うんこするよ
 アンタ うんこのオムツ 替えられんの?

 そうか、赤ん坊のオムツならともかく、オッサンのうんこのオムツを替えるのは、けっこうキツいよね……
(というか、赤ん坊でも、自分の子どもじゃないと、けっこうキツいと思う)


 ほんと、こういうのが淡々と描かれているんですよ。
 私、すごいことしてきました!っていう力こぶは、まったく感じられないのです。


 キャバクラ勤めとしていたときのお客さんと、一度だけデートをした、というときの話。

 山田氏は競艇がかなり好きなようだったが、その日は300円賭けたものが一度当っただけだった。桐生競艇場を出てから、山田氏馴染みの定食屋に行った。定食屋さんの大将は山田氏のギャンブル仲間らしく、パチンコの話や、競艇の話で調理そっちのけで盛り上がっていた。山田氏は先程のレースで当てた話を得意気に話していたが、当ったレースでの掛け金がいつの間にか10倍した額の3000円になっていて、
(へー、ギャンブラーってこういう見栄のはり方をするんだなー)
 と、へんに感心してしまった。

 ああ、なんかほんと、「リアル」だなあ、と。
 釣ってきたザリガニをお父さんが「食べられるんだぞ」と言いだし、後に引けなくなって食べた話とか、あまりにも強烈で、僕もエビが食べられなくなりそうでした。


 この本のなかで、いちばん印象に残ったのは、

 なぜなら、頭のおかしい人のフリをすることは、ものすごく気持ちが良かったからだ。

 という言葉でした。
 大学生が「カッコつけてタバコを吸っているふり」をしているうちに、いつのまにか「喫煙者」になってしまうように、「おかしい人」のふりをしているうちに、それが「自然に」なってしまうことって、あるのではなかろうか。
 あるいは、本人は、ずっと「フリ」をしているつもり、だとか。


アル中ワンダーランド

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ハルモヤさん 1 (BUNCH COMICS)

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