琥珀色の戯言

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【読書感想】PTA、やらなきゃダメですか? ☆☆☆☆


PTA、やらなきゃダメですか? (小学館新書)

PTA、やらなきゃダメですか? (小学館新書)


Kindle版もあります。

PTA、やらなきゃダメですか?(小学館新書)

PTA、やらなきゃダメですか?(小学館新書)

内容(「BOOK」データベースより)
子どもを持つ人にとって、悩ましいのがPTA問題。「役員を押しつけられた」「委員を断ると仲間はずれにされた」「“お手伝い”を強要された」などトラブルは少なくない。その最大の元凶は、PTAへの加入や行事への参加が「義務」だと思われていることにある。これに対して、とある公立小学校のPTAから「役員会」や「委員会」をなくし、地域と協力しつつ「完全ボランティア」による運営を実現させた山本浩資氏が、PTA活動を楽に、楽しくするポイントを説く。


 僕も小学生の子どもを持つ親ですので、PTAと無縁ではいられないのですが、率直に言うと「恐怖の大王」というか、「可能であれば、あまり関わらずにやり過ごしたい役割」ではあります。
 住んでいるマンションの持ち回りの役員とかでも、けっこうめんどくさかったものなあ。
 日常であまり接点がない人と、あらためて関わるというのは、もともと人間関係の構築が得意ではない僕にとっては、けっこうつらいことなのです。
 まあ、そういうのが大好き、という人も、そんなにいないとは思うのですが。
 ただでさえ日常に消耗しているのに「余計な仕事」が増えてしまうものだし。

 東京都の南端にあるA小学校(児童数約730人)では、PTAをやめ、PTOに改組してしまいました。会長と副会長を中心に、役員たちが各委員を束ねる従来の組織から、すべてをボランティアで運営するかたちに変えたのです。
 お堅い、こわ〜い印象があった「役員会」は「ボランティアセンター(ボラセン)」に、「PTA会長」は「団長」に名称を変えました。本書では、私がPTO団長として3年間、仲間といっしょに進めた組織のイノベーションを紹介していきます。


 この新書は、新聞記者だった著者が、「PTA会長を引き受けた(引き受けさせられた)ことを契機に、PTAという組織の改革に取り組み、成果をあげるまで」が書かれています。
 最後まで読んで驚いたのが、著者は1975年生まれで、僕よりも年下なんですよね。
 にもかかわらず、このやる気とリーダーシップの差は何なんだ……
 僕はちょっと自分にがっかりしてしまいましたよ。


 これを読んでいて最初に驚いたのは「PTA会長」の過密スケジュールでした。

 新年度が始まる2週間ほど前、つまり3月中旬に臨時総会が開かれます。ここで私が会長に就任しることが決議されることになっていたのですが、そのさらに2週間後、新役員候補者あてに「今後の予定のお知らせ」という手紙が届きました。数年前のことなので日付と曜日は合っていませんが、参考までに記しておきます。


 3月17日(土)9時30分〜 PTA臨時総会(新役員候補者・規約改正承認など)、第6回運営委員会、顔合わせ会
 3月22日(木)9時〜13時 卒業式お手伝い
 3月31日(土)10時〜12時 入学式準備
 4月6日(金)9時〜12時 入学式お手伝い、参列(新会長は祝辞)
 4月9日(月)9時30分〜 近隣中学校の入学式参列
 4月14日(土)13時30分〜 全区小学校PTA連絡協議会の新任役員研修会
 4月21日(土)9時30分〜 PTA委員総会
 4月27日(金)14時〜16時 PTA歓送迎会(離任式と同日)
 5月2日(水)9時30分〜 PTA第1回運営委員会(決算・予算)
 5月12日(土)9時30分〜 PTA定期総会
 5月26日(土)18時〜 近隣地区小学校PTA連絡協議会の総会・歓送迎会


「ああ、だまされた!」
 手紙を見て、ぼやいたことをいまでも覚えています。ほぼ毎週のように、「会長」としての予定で埋まっていました。推薦委員会の方に聞いていた年間スケジュールはあくまでおおざっぱなもので、実際にはその何倍も予定があったのです。


 3月末から5月というのは、学校のなかでも行事が多いシーズンだとは思うのですが、それにしても、こんなにいろんな行事に出席しなければならないとは……
 会長になったのは、著者が30代後半ですから、仕事も忙しい時期だったはず。
 どうやって両立したのだろう、と疑問になるくらいのハードスケジュールです。
 僕のイメージでは「入学式や運動会で、ちょっと挨拶をする偉そうなおじさん」だったPTA会長って、こんなにいろいろやることがあったのか、しかも「○○会」みたいな、めんどくさそうなものばかり!


 そんななかで、著者は、岩崎夏海さんのベストセラー『もしドラ』(「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」)などを参考に、PTA改革をすすめていくのです。


 みんながやりたがらなかったPTAから、「会議のための会議」の頻度・時間を減らし、役職を整理・統合し、PTA活動を、子どもたちと一緒に保護者も楽しめるものに変えていこうとしたのです。

 そこで、やりたい人が企画し運営する「この指止まれ方式」を採用することにしました。重要度などを考えて役員会でプロジェクトを起案し、案件ごとに参加希望のボランティアを募る方法です。
 参加希望のボランティアが集まらないプロジェクトは、運営するのが困難なため、開催ができないこともあるというルールを設け、「夢プロジェクト」として保護者にもお知らせしました。
 新規のプロジェクトについては、学校・地域の行事や事情などを考慮して役員会で調整しますが、会員からの提案も受け付けることにしました。
 その第1弾として、5月のとある日曜日に「逃走中 IN A小学校」を企画しました。
 役員会で子どもたちに聞いたところ、テレビの人気番組『逃走中』をやってみたいという声が大きかったのです。
『逃走中』はいわば大がかりな鬼ごっこで、ハンターと呼ばれる鬼に捕まらずに一定時間を逃げ切れれば勝ち(高額の賞金を手にできる)。テレビでは芸能人たちが参加して、ハンターから必死に逃げ回るのですが、あちこちに仕掛けられたギミック(ハンターが増えたり、捕まった人に再挑戦のチャンスが与えられたりする)が絶妙で、見ているだけでもおもしろいものです。これをみんなでやってみようということになりました。
 A小学校の裏手には、河川敷が広がっています。そこを舞台にしました。ちなみにこのプロジェクトは、新しく副会長になった3人(男性2人、女性1人)が中心になって構想したものです。


 この『逃走中 IN A小学校』は大きな反響を呼び、350人もの子どもの申し込みと、50人のハンターをはじめとする、180人ものボランティアが集まり、大成功をおさめたそうです。
 これを読みながら、「ああ、うちの子も、これ、参加したがるだろうなあ」と思いましたし、ニヤニヤしながら「ハンター」に扮している大人たちの姿も目に浮かんできます。
 もちろん、すべてのイベントが、こんなにうまくいくわけではないのでしょうけど、親というのは、子どもが喜ぶ姿を見たい、と思うものではあるんですよね。
 やっていることが「子どもの喜び」に直接繋がることであれば、協力したいという親は、けっこう多いのかもしれません。
 

 著者の改革のすすめかたを読んでいくと、ホームページの作成や、ボランティア登録をネット上で行なうシステム、メールでの連絡など、インターネットをうまく利用していることもわかります。
 僕も小学生の親になってみて、現代の学校の「IT化」に驚かされているのですが(子どものテストの成績も、パスワードを入れればネットで見られるんですよ、もう、のび太も0点の答案を隠せない!)、PTA(PTO)活動のような「都合がつく人の参加を広い範囲で求める」場合に、ネットというのは非常に有効なツールだと思います。
 

 ここでみなさんに質問です。
「ボランティアにはお茶が出るのが当然だ」
 ○、×、どちらでしょうか?
 答えは「×」。
 ボランティア活動では、必要な場合、お茶は持参しましょう。


 「お茶を出さないのがあたりまえ」になるだけで、お茶を出すための費用や人手が不要になります。
 そして、出される側も「お茶の有無」なんて、そんなに気にしてはいない。
 中には「お茶も出ないのか!」なんていう人だっているかもしれませんが、それは、ごく少数派でしょう。


 とにかく憂鬱なPTA活動に対して、こんなふうにアプローチし、改革していった人がいる。
 しかも、新聞記者としての経験があるとはいえ、「特別な人」ではなかったのに。
 誰も楽しくないPTAから、みんなで楽しむPTOヘ。
 とりあえず、ムダと義理を省くだけでも、だいぶスリムになるのですよね。
 なかなか言い出せないことではあるのだけれども。