琥珀色の戯言

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【読書感想】雑学の威力 ☆☆☆


雑学の威力 (小学館新書)

雑学の威力 (小学館新書)


Kindle版もあります。

内容(「BOOK」データベースより)
電車待ちの5分が人生を変える!最強の教養とも言える「雑学」を身につける方法から、その活かし方までを、博識の漫画家であり、テレビコメンテーターのやくみつるが余すことなく伝授する。さらに名だたるクイズ番組を席巻する著者が、30年かけて会得した「物知り」になれる習慣を初公開!この一見、役に立たない知識をうまく利用すれば、会話が途切れなくなり、コミュニケーション力がアップ。周囲の好感度も一気に上がることが確実だ。


 やくみつるさんの「雑学」のススメ。
 僕はこれを読みながら、ちょっと考え込んでしまいました。
 まあ、「そういう本」だからしょうがないのもわかるのだけれど、やくさんは、この本の前半で、雑学をたくさん知っていることによる「現世利益」の数々を紹介しています。

 では、実際にどのような方法で雑学を活かしていけばいいのでしょうか。私がよく実践するのが、「地理的雑学ネタ」によるアプローチです。
 方法はいたって簡単で、会話の糸口がなかなか見つけられないと感じたら、相手の出身地を話題にしてコミュニケーションを図ってみるのです。これは誰が相手でも通用するので、かなり便利な方法と言えます。
 実は、つい先日も若い女性がたくさんいるお店(つまり、キャバクラです)に案内された際、隣にいるお姉さんと何を話したらいいのかわからなくなってしまった私は、彼女の出身地を話題にして会話を自分のペースに持っていこうという作戦に打って出ました。


 「地理に関する雑学」があれば、他者とのコミュニケーションのきっかけになるし、キャバクラでも女の子と楽しく会話できる、とか。
 たしかに、「どちらのご出身ですか?」というのを、会話のきっかけにする人は、けっこう多いのです。
 転勤族で、特定の「地元愛」みたいなものを持たない僕にとっては、ちょっとつらい質問でもあるのですが、みんなどこかに「出身地」はあるわけで、無難かつ広範に利用できる質問なのでしょう。
 でも、「やたらと蘊蓄を傾けるオッサン」って、「話が面白い人」というよりは、「ウザい」と思われる可能性のほうが高いような気もするんですよね。
 有名人・やくみつる、ならともかく。
 それにしても、やくさんの「知ること」への欲求とそのための努力には、頭が下がります。
 本として売るのためには「ビジネスにも役立つ!」って書かなきゃいけないんだろうけど、本質的には「知ることを日常に組み込めば、人生をいっそう楽しめる」ということなのでしょうね。

 そのほか、ごく短期間でしたが、路上に置いてある「カラーコーン」の写真を撮影していたこともありました。工事現場などで見かける円錐形のアレです。普段見かけるものは赤が主流ですが、そのほかにも様々な種類があることに気がつき、撮影を始めたのです。
 葬儀場の駐車場などでは、当然ながら赤いカラーコーンは絶対に使われることはなく、青いものが置かれていることにも気づかされます。ボウリング場やパチンコ屋などのエンタメ系の場所では、同じ色ではなく、赤や黄色、緑など色とりどりのカラーコーンを並べていることが多かったりします。


 やくさんの「知識」は、観察力とマメさからできているのです。
 わからないことやものは、自宅の事典で「答えあわせ」をするし、こうして、多くの人は目にもとめないカラーコーンにも、「なぜ、この色なのか?」と疑問をもつ。
 実際に、こだわる人がいるから、こんなふうに色の使い分けもされているのでしょうね。
 こういう人だったら、散歩も退屈しないだろうなあ。


 やくさんは「雑学王」として知られているため、プライベートで出かけているときも、いきなり知らない人からクイズを出されることもあるそうです。
 漫画家のはずなのに、クイズ番組にばかり出て、稼いでいる人のようにみえるけれど、それはそれでけっこう大変みたいですよ。


 この新書のなかでは、クイズ番組の演出についても触れられています。
 16分割した画面に示されているヒントを一つずつ見て、共通点を当てる、というクイズで、最初のパネルに「コンパス」とあったのを見て、やくさんは「星座」という正解を答えたそうです。

 しかし、このとき司会者から叱られてしまいました。
「やくさん、困りますよ。早すぎます。ひとつずつヒントを見ていって、解いていく過程を楽しむ問題なんですから!」
 そのほかのパネルには、「髪の毛」「きりん」「みずがめ」といったものがありました。これらを見れば、多くの人が星座だと気がつくでしょう。「答えるのが早すぎる」かもしれませんが、早押しクイズではまごまごしていては先を越されてしまいます。
 ところが、実際にオンエアを見てみると、テレビ局の制作側も上手に処置を行ったようで、5、6枚のパネルが開いた後にようやく解答したかのように映像が編集してありました。その場面を見た瞬間、「自分の素早さを視聴者に見せたかったのに」と、少々恨めしく思いましたが、視聴者に楽しんでもらうことを考えれば、編集操作やむなしと理解することにしました。

 これって、「演出」なのか、それとも「やらせ」なのか……
 そもそも、書いてよかったのか……
 そのくらい、やくさんにとっては「不本意」ではあったのでしょうし、他の番組もみんなそうしている、というわけでもないんでしょうけど。


 とりあえず、雑学は、少なくともそれを追い求める本人だけは、けっこう幸せにするのかもしれないな、という気がする新書でした。

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