琥珀色の戯言

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【読書感想】闇経済の怪物たち〜グレービジネスでボロ儲けする人々〜 ☆☆☆☆



Kindle版もあります。

内容紹介
◆ネットでの裏情報提供業者◆出会い系サイトの経営者◆デリヘルの実業家◆危険ドラッグの仕切り屋◆闇カジノのイカサマ・ディーラー◆FXや仮想通貨販売業◆六本木・関東連合の育ての親◆純金インゴットの密輸入や振り込めなど特殊詐欺の首領◆街場の顔役……法律スレスレの世界で、荒稼ぎする9人の男たち。――現代の「欲望」を糧として躍動する、彼らの知られざる実態に、極道取材の第一人者が迫る!


 世の中にはいろんな「仕事」があるんだな、学歴とか道義的な正しさと「勤勉さ」というのは別物なのだな、と思いながら読みました。
 登場してくる、9人の「闇経済の怪物たち」は、基本的に「違法かどうかのグレーゾーン」に属している人たちなのですが、その中にも、「ほとんど違法」から「違法ではないけれど、けっこう裏社会との繋がりもあって、ちょっと危険な感じ」まで、さまざまなグラデーションがあるのです。
 ただ、これを読んでいて痛感するのは「闇経済」であっても、成功するのは、勤勉で用心深く、人の使い方をよく知っている人なのだな、ということです。
 「表」だったら、「能力はあるけれど、人格的に問題がある」ような人でも、資格や技能に護られてうまくいっていることが少なくないのですが、「裏」だからこそ、「人に信頼される」ということが大事なのかな、と。
 どんな天才でも、銃弾一発で人生終わり、ってこともあるのだし。


 この本の一人目には、『「裏」情報サイトの先駆者」として、「激裏情報」の「本堂マサヤ」さんが登場しています。
 僕も聞いたことあるぞ、「激裏情報」。

 彼の成功理由は、普通の人がカネを払っても知りたいという情報の提供サイトをいち早く立ち上げたことにある。激裏情報の立ち上げはヤフーが日本で検索サイトを始めた半年後の96年11月である。以来20年間、途中山あり谷ありだったものの、終始、競争の激しい業界で先行者利得的なリードを保ち続けて今に至っている。

 
 本堂さんは『ラジオライフ』の愛読者で、インターネット上に『ラジオライフ』のような情報を扱っているサイトがないことを確認し、自ら「激裏情報」を立ち上げたそうです。

「当初から年会費1万円で始めました。今もそうですが、ウェブサイトは無料が当たり前で、ボランティア的に成り立っていた。有料だと叩かれましたが、うちは裏情報なので、裏なら仕方ないか、とあまり攻撃されなかった。アダルトを見たい人はカネを出しても見たい。始めると会員が月に100人ずつ増えていく、かかる経費は知れたものだし、うちは赤字になる要素が最初からなかったんです」(本堂氏)


 これぞまでに「先行者利得」という感じですが、日本にヤフーができた半年後で、まだモデムやISDN
回線の時代にここに目をつけたのは、先見の明があった、ということなのでしょう。
 でも、1万円って、けっこう高くない?
 と思うのですが、ウェブ上に広告が表示されるだけで怒る人がいる一方で、アングラなものやアダルトに関しては、有料でもニーズが少なからずある、というのは事実のようです。
 この新書のなかに登場してくる人たちにも「性」とか「金儲け」をコンテンツにして稼いでいる人が多いんですよね。
 人の欲望を刺激する商売というのは、うまくいくと、利ざやが大きいのです。

「1999年には名誉毀損で逮捕もされてます。というのは、会員から『この女性に電話すると、やれます』という情報が寄せられた。それを確かめず、というか、確かめることもできずに、その内容のまま会員に送信してしまった。まだ『ネットのことだから、何をやっても大目に見られる』という甘えもあったんです。ネットでの名誉毀損をなめていた。会員が4200人のころの話です」
 やれると書かれた女性は松戸市に住む会社員の女性(当時23歳)と千葉県の短大生(同20歳)だった。彼女たちの家には電話が殺到し、家族たちは応対にくたびれ果てた。誰がいい加減なことを言い始めたか、困惑も怒りもあったろう。もちろん電話は「激裏情報」の会員が掛けていた。

 これで本堂さんは懲役1年、執行猶予3年の刑を言い渡されたのですが、ネットでの誹謗中傷というものの「やる側のカジュアルさ」と「やられる側が受ける被害の大きさ」を考えさせられる事例です。
 そんなの信用して電話する人たちにも問題はあると思うのだけれど、それにしても、ね。


 2人目の「出会い系サイトの帝王【P】」さんの話もすごい。
 携帯電話に、ときどき「迷惑メール」が来ますよね。
 「お金を2000万もらってほしい!」というようなものが。
 ああいうのを見るたびに、「誰がこんなのに騙されるんだよ、くたばれスパム業者!」と不愉快な気分になるのですが、いるんですね、信じてしまう人が。

 中にはメールをまともに受け取る人もいて、国民生活センターに相談したりしている。同センターのホームページに掲げられた事例を見ると、

・高齢の父がパソコンの出会い系サイトで『7500万円の遺産を渡したい』と言ってきた相手を信じ、メールをやり取りしているうちに、サイトの利用料金が50万円を超えた。相手と会う約束を10回以上しているが一度も会えずにいる(当事者は70歳代の男性)


・あるとき『1200万円あげる』というメールが目に留まった。信じ込んでやり取りしているうちに、そのためのポイント代として200万円も支払ってしまった。詐欺ではないか(80歳の男性)

……など。


 それ、詐欺に決まってるよ……
 高齢で、「ネット慣れ」していない人の中には、信用してしまう人がいる、ということなんですね。
 そして、ごくわずかな割合でも、信じてしまう人がいれば、十分儲かる仕組みになっている。
 まあ、これはデリヘル経営などに比べると「グレーゾーン」というより、「ブラック」だと思うけど。


 これを読んでいると、結局のところ「成功する、お金を稼げる人」の条件というのは、「表」でも「裏」でも、そんなに変わらないのではないか、とも感じます。
 ある人は「自分が騙さなくても、こういう被害者はどうせ他の誰かに騙されるのだから」というようなことを言っています。
 それなら、自分が騙して、何が悪い?


 まあ、いろいろ思うところもあるのですが、学歴とか文化資本とかに恵まれない人にとっての「成功」の法則みたいなものが書かれている本です。
 「普通の人」にとっては、「グレーゾーン」だからラクとか簡単というわけではない、というのもわかるのだけれども。


 

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