琥珀色の戯言

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【映画感想】メッセージ ☆☆☆☆

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あらすじ
巨大な球体型宇宙船が、突如地球に降り立つ。世界中が不安と混乱に包まれる中、言語学者のルイーズ(エイミー・アダムス)は宇宙船に乗ってきた者たちの言語を解読するよう軍から依頼される。彼らが使う文字を懸命に読み解いていくと、彼女は時間をさかのぼるような不思議な感覚に陥る。やがて言語をめぐるさまざまな謎が解け、彼らが地球を訪れた思いも寄らない理由と、人類に向けられたメッセージが判明し……。

www.message-movie.jp


 2017年の映画館での11作目。公開初日のレイトショー。
 観客は40人くらいでした。


 この映画を観る前に、ネットでいろんな人の感想を眺めていたのですが、そのなかに、こんなことを書いている人がいました。
「これから本作を観賞される方は“非ゼロ和”をググってから観賞してください」
 この人には、感謝しています。
 まあ、あんまり詳しく解説すると、それはそれでちょっとネタバレになってしまいそうなんですが、「複数のプレイヤー間で、決まった量の報酬を取り合う(あるいは、勝ち負けを決める)のが「ゼロ和(ゼロサム)ゲーム」で、各プレイヤーの行動によって、報酬の総量が変化するのが「非ゼロ和(ゲーム)」ということくらい頭に入れておけば良いと思います。


 この『メッセージ』という映画、観ていて、「続きが気になるんだけど、眠くなる」という、ちょっと不思議な感じでした。先にご飯を食べてしまったのが良くなかったのだろうか。
 中盤くらいまでは、ものすごく地味な映像なんですよ。
 宇宙からやってきた、12隻の巨大な宇宙船。さて、その目的とは何なのか?
 この映画は、ものすごくアカデミックなんですよね。
 宇宙人との駆け引き、というより、言語学者は、未知の種族や言語を持つ存在に対して、どうアプローチしていくのか、というのが、けっこう丁寧に描かれているのです。
 読みながら、『ピダハン』という本のことを思い出していました。


fujipon.hatenadiary.com

 ピダハン語を習得する上で最も難しいのは、言語そのものよりも「単一言語」環境で学ばなければならないことだった。「単一言語」のフィールドというのは世界の様々な言語環境のなかでひじょうに珍しいことで、研究者は話者と一切共通言語をもたない。わたしがピダハン語を学びはじめたときがそうだった。彼らはポルトガル語や英語はおろか、ピダハン語以外のいかなる言語も話さない。ほんの二、三、言いまわしを知っている程度だ。だから彼らの言語を学ぶにはまず、彼らの言語を覚えなければならない。つまり堂々巡りというわけだ。別の言葉に置き換えてもらうとか、ピダハン語以外の言語で説明してもらうということができないのだ。こうした状況でも研究を進める手立てはある。当然ながらわたし自身も、苦労を重ねたおかげで自分なりにやり方を編みだしたが、単言語環境でのフィールド調査の手法は、わたしがピダハンに出会うずっと以前からすでに大方確立はされていた。
 とはいうものの、困難なことに変わりはない。


 どんな天才的な言語学者でも、未知の言葉を聞いただけで理解するなんてことはできない。それは、どらえもんのひみつ道具の世界です。
 本当に地道に、一歩一歩、その答えに近づいていくのです。暗号解読のように。
 でも、観ていると、なんだかとても不思議なんですよ。
 この挿入されているシーンは、意味があるの?
 あの宇宙人の目的は?
 彼らが人類に伝えようとしている「メッセージ」とは、何なのか?


 正直、観終えてスッキリした、という感じでもないんですよね。
 登場人物たちのこれからも、良いことばっかりじゃないよね、と思います。
 意図的に省略されているところがたくさんあって、観客としては、そこを自分の想像力で埋めることができるかどうかが問われるのです。
 僕は……自分なりの解釈はできたのですが、それが正しいのか、と言われると、あんまり自信ないなあ、と。
 そもそも、人間の感覚では、理解できても実感はできない世界の話なのかもしれません。


 ただ、この映画に関しては、「普通のハリウッドSF映画の方程式」にあてはまっていなくて、けっこう最後のほうまで、「この映画、これからどうなるんだ?」という「この先に何が起こるかという興味」を持ち続けることができたんですよね。
 これだけ「わからない」のに「どういうところに着地するのか気になる」という映画も、珍しいと思います。
 まさか最後は突然ウイルスとかにやられて、このエイリアンたちは去っていくのか?(それ違う映画……)
 まあ、本当に「地味」なんですけどね。
 そして、「わかりづらい」し、冒頭に御紹介したように、かなり「説明不足」なところもあります。
 このくらいで「説明不足」と感じてしまうのは、日頃、過保護な映画ばかり観ているせいなのだろうか……
 今の映画界における、「中国の存在の大きさ」みたいなものが、垣間見える作品ではありますね。日本は、北海道がほんの少し出てくるくらいなのにねえ。

 

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ピダハン―― 「言語本能」を超える文化と世界観

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