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- 出版社/メーカー: ポプラ社
- 発売日: 2017/04/28
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内容紹介
小説家って面白い! 無類の本好き芸人・オードリー若林正恭と、20人の作家たちが“自分のルール”を語りつくす。 大人気番組、ついに書籍化! 西加奈子/朝井リョウ/長嶋有/加藤千恵/村田沙耶香/平野啓一郎/山崎ナオコーラ/佐藤友哉/島本理生/藤沢周/羽田圭介/海猫沢めろん/白岩玄/中村航/中村文則/窪美澄/柴崎友香/角田光代/尾崎世界観/光浦靖子
「本好き芸人」オードリーの若林正恭さんが、いま第一線で活躍している20〜40代くらいの人気作家たちと対談するBSジャパンの「文筆系トークバラエティ ご本、出しときますね?」を書籍化したものです。
正直に言うと、僕は最近の本屋大賞や直木賞によくノミネートされている、仲良しの人気作家、西加奈子さんや朝井リョウさんや中村文則さん、羽田圭介さんたちが、あまり好きじゃないんです。
なんかお互いにつるんで褒め合っているのが、感じ悪いな、とか思ってしまうんですよね。
そこに、又吉直樹さんや若林さんが絡んで、お互いに「すごいすごい」って、馴れ合いかよ!と。
ただ、そんな個人的な印象はさておき、この対談本では、いまの日本の人気作家たちの「生態」みたいなものが、けっこう率直に語られているのです。
「ああ、僕が勝手に偏見というか、コンプレックスを持って斜に構えてみているだけで、単に同じ仕事をしている人たちと仲良くしているだけ」なのかもしれないな、と思えてくるんですよね。
角田光代さんについて、西加奈子さんがこんな話をされています。
「書けない」「登場人物の台詞が降りてこない」ときに、どうするのか?
西加奈子:何か月も書くから、登場人物たちとも付き合いが長くなるやん。ほな、この子やったらどうやろ、こっちの子やったらどうやろって書いていく。自分を投影するっていうのはあんまりないけど。でも角田さんがおっしゃってた。降りてくることが一切ないって。書くことなくなったりしないんですか? って聞いたら、あるよって。そういうときどうするんですか? って聞いたら、TSUTAYAの会員になったよって言うてた(笑)。
ああ、なんか親近感わくなあ!
まあ、ほとんどの人は、TSUTAYAでDVDを借りても、小説は書けないんですけど、「キャラクターが勝手に喋り出す」なんていう人ばっかりじゃないんだなあ。あの角田光代さんが、そんな感じなのか。
この対談集のなかでいちばんインパクトがあったのは、『コンビニ人間』で芥川賞を受賞した村田沙耶香さんでした。
若林正恭:コンビニって、いろんな人種が来るじゃないですか。たとえばイライラしてるお客さんが「早くしろよ!」って怒鳴ったり。そんな客がいたら、腹が立ちませんか?
村田沙耶香:それを愛するのがコンビニ店員だから。
加藤千恵:そうなの!?
村田:そうだよ。店員はみんなそうだよ。
若林:俺、それ無理だわ! だとしたら時給が安すぎる!
村田:よく、「バイトしてるんです」って言うと、小説の題材にするためにお客様を観察してるんでしょう、って言われるんですけど、違うんです。もっと真剣に働いているので、観察はしていません。
若林:コンビニ店員として、真面目に勤務してるんだね。
村田:だって、自分のことを観察してくるコンビニ店員、嫌じゃない?
加藤:うん、わたしはいつも初めてのように接してほしい。
村田:だからタバコも、いつも初めて注文されたかのように承る。「ああラークのいつものやつですね」って出したりは、絶対にしない。「おタバコ何番ですか?」って聞く。今日出会ったかのように。
若林:どの職業でもそうですけど、こちら(客)は、店員さんに影響を受けますよね。店員さんが明るいと、ちょっといい気分になりますよね。すっげー滑った収録のあと、ヨーグルト買って帰らなきゃ……ってコンビニでヨーグルト買って、笑顔で「ありがとうございました」って言われると少し気分が良くなる。
村田:そういう方のために働いてるんです。
村田さん、僕の行きつけのコンビニで働いてほしい……
僕もよくコンビニを利用するのですが、どんな店でも「いつもありがとうございます」と言われると、「常連としての愛想の良いふるまい」を求められているように感じて、足が遠のいてしまうんですよね。
ただ、コンビニのレジで「いつもの!」ってタバコを買う人もときどき見かけるので(「いつものですね」って言われる前から出してくる店員さんもいます)、相性というのはあるのでしょう。
僕も「いつも初めてのように接してほしい」。
窪美澄さん、柴崎友香さんの回では、若林さんの「女性を泣かせた過去」についての話が出てきます。
窪美澄:部屋とか勝手に掃除されるの、イヤそうですよね。
若林:うわあ、大正解。やっぱりそういう感じが出ちゃってるんだなあ……。俺、酷い人間なんです。この問題で女性を何人も泣かせてるんですよ。まあ、単純も単純。「若林くんの為を思ってやったんだけどな……」とか言われると、「頼んでねえから」って言っちゃうの。わかってます、最低ですよね(笑)でもね、経済の流れから見ても、百パーセント、「人の為を思って」なんてことはありえないでしょう? たとえばボランティアにしたって、やると気持ちいいですよね。奉仕の精神は、もともと人間に備わっている。相手の為にもなるし、自分の為にもなる。それを、「全部、あなたの為よ」とされると……怒りが湧いてきちゃう。人間は結局自分の為に、合理的な行動をとってるんだよ! って。
柴崎:実は自分の為にやってるのに、人の為とか、なにか大きいものの為、という考えがよくないんですよね。
若林さんも、作家さんたちも、けっこうめんどくさい人たちだなあ、と思うんですよ、これを読んでいると。
でも、きっとそういう「めんどくささ」に、僕はひきつけられてしまうのだろうな。