琥珀色の戯言

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【映画感想】パトリオット・デイ ☆☆☆☆

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2013年4月15日。アメリカ独立戦争開戦を記念して毎年開催されるボストンマラソンで、ギャラリーの歓声を受けながら多くのランナーが疾走していた。そしてすさまじい爆発音がとどろき、煙が吹き上がる。街がパニックに包まれる中、FBIは爆発をテロと断定。ボストン警察のトミー(マーク・ウォールバーグ)は、捜査の指揮を執る捜査官リック(ケヴィン・ベーコン)らFBIとぶつかり合いながらも共に犯人を追う。やがて、黒い帽子の男と白い帽子の男の存在が捜査線上に浮かび……。


www.patriotsday.jp


 2017年の映画館での13作目。観客は10人くらいでした。
 2013年に起こったボストンマラソンでの爆弾テロと犯人を拘束するまでを描いたドキュメンタリー風の映画で、事件にかかわった実在の人物がたくさん出てきます。
 ただし、マーク・ウォールバーグさんが演じている主人公の警察官・トミーは、この事件に関与した大勢の警官の象徴としての架空の人物だそうです。
 うーむ、話をわかりやすくするためには、このほうが良いのかもしれないけれど、ノンフィクションのなかにフィクションを混ぜてしまうと、なんだか「どこまでが事実なの?」って悩んでしまいますよね。
 2013年に起こった、まだ記憶に新しい事件だけに、いろいろ配慮しなければならないところもあったのでしょうけど。
 「英雄」になるのは、けっしてプラスの面だけじゃないし。


 この『パトリオット・デイ』を観ると、アメリカという国で生きている人の考え方や「愛国心」みたいなものが少しわかるような気がします。
 この映画、「テロリズムに負けないボストン市民の勇気と強さ」、そして、テロの犯人をわずか102時間で拘束した警察やFBIの活躍を描いているのです。
 捜査官の初動の速さと捜査本部があっという間につくられ、現場が再現され、大勢のプロフェッショナルがそれぞれの専門を活かして犯人を特定していくのをみると、アメリカの「本気」ってすごいなあ、と感心するばかりです。
 その一方で、「犯人を拘束する、次の被害を防ぐ」ことが、被害者に対する配慮よりも優先される、という「合理的ではあるけれど、冷たい」ところも垣間見えるのです。


 50万人も集まり、みんながランナーのほうを見ている、という状況で、長いコースのどこかでテロが行われるのを防げるのか?
 犠牲者が出たあと、犯人を逮捕することはできるかもしれないけれど、事前に予防するのは、非常に困難だと思うんですよ。
 犯人自身も命を捨てること前提でやられたら、防ぎようがない。
 唯一方法があるとすれば、そういうイベントをやらないこと、に尽きるでしょう。
 これを観ていると、「東京オリンピック、ヤバいんじゃない?」って、不安になってくるのです。
 そして、あれだけ大勢の警官が犯人を囲んでいたのに取り逃がすなんて、日本で同じことがあったら、警察の大失態としてバッシングされただろうなあ。
 ボストンでは、犯人が拘束された際には、市民が警官たちをを大歓声で迎えたらしいのです。
 アメリカって、ポジティブ思考というか、犠牲は覚悟のうえで、ひたすら前に進んでいく国なのだ。
 その一方で、海外での戦争では、アメリカ軍に犠牲者を出さないこと、が重視されるようになっているそうなのですが。


 ナントカに刃物、というか、その気になったテロリストが2人いるだけで、これだけ多くの人々が犠牲になり、怖れ、振り回されるのだという現実に、僕は愕然とせずにいられませんでした。
 この映画で描かれているテロリストたちは、宗教的な動機というよりは、ある種の妄想みたいなものにとらわれて、こんなテロを行ったようにみえます。
 でも、相手がどんな「理不尽な動機」であっても、人は爆弾が爆発すれば命や手足を奪われるし、銃で撃たれれば致命的なダメージを受けるのです。
 この映画をみて、アメリカ人は、銃規制が必要だとは思わないのかなあ。
 むしろ、こういう連中に対して自衛するためには、銃を持たざるをえない、と考えるのだろうか。
 

fujipon.hatenadiary.com



 この本のなかで、著者は、1966年にテキサス州オースティンのテキサス大学の時計塔に登った25歳の白人学生が、そこから眼下の通行人をライフルで狙撃して16人の死者と32人の負傷者を出した事件を紹介しています。
 いまからちょうど半世紀前に起こったこの事件の際、警察の標準装備は短銃で射程距離が短かったため、役に立ちませんでした。
 そんななか、多くの一般市民が自発的にライフル銃を持って時計塔に近づいて犯人を狙撃し、犯人の身動きをとれなくして、犠牲者を減らしたのです。
 日本のように、相手も銃を持っていないことが当たり前の社会なら、お互いに持たないほうが安全だろう、と思うはずです。
 それに対して、アメリカ人は、「いざというとき、銃を持っている相手に対して、何もできないかもしれない」と考えてしまうのです。
 すでに銃が普及してしまった社会で、銃を規制するのは本当に難しい。


 たぶん、制作側は、これを「美談」として描いているのでしょう。
 しかしながら、いまの日本で暮らしている僕は「ああ、いまの世の中で、テロを予防するのは至難の業だなあ」とあらためて思い知らされましたし、犯人を拘束しても、犠牲者は帰ってこない、ということを考えずにはいられまませんでした。
 

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