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【読書感想】超ソロ社会 「独身大国・日本」の衝撃 ☆☆☆☆

超ソロ社会 「独身大国・日本」の衝撃 (PHP新書)

超ソロ社会 「独身大国・日本」の衝撃 (PHP新書)


Kindle版もあります。

超ソロ社会 「独身大国・日本」の衝撃 (PHP新書)

超ソロ社会 「独身大国・日本」の衝撃 (PHP新書)

内容紹介
2035年、日本の人口の半分は独身者! 少子高齢化より深刻な日本のソロ社会化。結婚してもそのリスクから逃れられない。あなたは一人になっても生きていけるのか? 2035年、日本の人口の半分が独身になる! 未婚化・非婚化に加え、離婚率の上昇や配偶者の死別による高齢単身者の増加など、確実に進行する日本のソロ社会化。高齢化や少子化ばかりが取り沙汰されているが、このソロ社会化こそ、日本が世界に先駆けて直面する課題だ。「個」の生活意識や消費意識、価値観はどのように変化していくのか。内容例を挙げると ◎未婚者は社会悪なのか? ◎働く女性が増える社会は非婚化へ進む ◎男たちは嫌婚になったのか? ◎9割が結婚したいというデータの嘘 ◎配偶者に依存しすぎる日本の夫婦 ◎消費の形が「個と個」の向きあいへ ◎ソロ社会は孤立社会ではない ◎家族とソロ社会とは対立しない 等々 博報堂ソロ活動系男子研究プロジェクトリーダーが問う日本の未来。


 『バンド臨終図鑑』という、これまで活動してきたさまざまな人気バンドが、いかにして解散していったのか(そして、その多くが再結成することになったのか)をまとめた本があります。


fujipon.hatenadiary.com


 それを読んでいて痛感したのは、「ミュージシャンというのは、結局のところ、『ソロ活動』に向かっていくというか、『ひとりでやりたい』と思うようになるのだな」ということでした。
 それでもバンドを組んだり再結成したりするのは、「ひとりだとクオリティ的にも人気においても、満足いく成果が出ない」という現実に直面するからなのです。
 もちろん、「みんなでやるバンドの魅力」というのはあるのですが、それをずっと続けていると、大概の人は「ソロで自分の力を試してみたい」あるいは、音楽性や人間性の違いから、「あいつらと一緒にやっていくのはもう勘弁してくれ」という気持ちになっていく。
 人間というのは「ひとりでいると寂しいし、他人といると鬱陶しい」というめんどくさい生き物なんですよね。

 20年後の未来、あなたは何をしていますか?
 20年後の未来、日本はどうなっていると思いますか?


 現在2017年、20年後は2037年である。正確には20年後ではないが、2035年の話をしたい。
 国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、2035年には15歳以上の未婚率は男35.1%、女24.6%(生涯未婚率ではなく、15歳以上の全人口の未婚者率)となり、有配偶者率は男55.7%、女49.3%と、女性の有配偶者率が初めて50%を切る。離別死別による独身者も男は9.2%だが、女は26.1%にまで達する。
 そうして、15歳以上の人口に占める独身者(未婚+離別死別者)率は、男女合わせてほぼ48%に達する。
 約20年後、人口の半分が独身という国に日本はなる。
 日本の「ソロ社会化」は不可避で、確実にやってくる。


 世帯別にみても、現在は「単身世帯」がもっとも多く、かつて「標準世帯」と呼ばれた「夫婦と子どもの世帯」は、2010年に「単身世帯」に抜かれ、全体の3割を切っているのです。
 2035年には「単身世帯」が4割弱、「夫婦と子どもの世帯」は23%程度に縮小すると推定されているそうです。


 女性も仕事をしろ、子供を産め、もちろん、育児も家事もおろそかにするな、と言われ、男性は「仕事ばかりじゃなくて、家事や育児もちゃんとやれ」とプレッシャーをかけられる。
 それならば、いっそ、結婚もせず、子供もいなければ、「自由に生きられる」んじゃない? 稼いだお金は自分で使えるし、食事は外食や中食、家事は代行サービスを頼めばいいし。

「社会というものはない。あるのは、男と女という個人と家族だけだ」
 これは、鉄の女と言われたイギリス元首相サッチャーが、今から30年前の1987年に発した言葉である。30年間にはまだ「家族」は重要な共同体として残っていたが、今や「家族」という存在すら危うくなりつつあるのだ。


 夫婦生活や家族は、お金が全くないと成り立たないし、それぞれがけっこう稼いでいると、「ソロ活動」のほうがラクなのではないか、と解散することも少なくない。
 結婚生活、家族生活のメリットをいちばん享受できるのは「ふたりの収入をあわせると暮らしていける」という中流階級であり、その「中流層が薄くなっていること」が、「ソロ活動」の増加のひとつの要因なのかもしれません。
 そういえば、バンドや漫才コンビだって、全然売れなかったり、ものすごく売れたりすると、「解散」に至りやすいように思われます。


 ちなみに、著者がさまざまなデータを参照して試算したところによると、「生涯未子率」は、2010年の時点で男性31%、女性21%で、2035年は男性41%、女性32%になるそうです。
 子供を持たない人生というのは、今や珍しいものではなく、今後もどんどん「当たり前のこと」になっていきます。


 しかし、こんな現実とは裏腹に「まだ結婚しないの?」「孫の顔が早く見たい」というようなプレッシャーをかけてくる人は、今でも少なからずいるんですよね。
 僕自身も、ある程度以上の年齢で結婚歴がない人に対しては、「何か問題があるのだろうか」と心の中で勘ぐってしまうことがあるのです。
 いまは、そういうのが時代遅れだというのが浸透していく過渡期なのかもしれませんけど。


 著者は、独身で自立していて、人生を楽しめる人を「ソロ充」と定義しています。

「ソロ充」とは、男女問わず若年層を中心に、頻繁にSNS上で使用されている言葉である。意味は、ひとりで楽しむことができる人のこと。ソロ(ひとり)が充実しているさまをあらわす。友人を誘うのが面倒、人といると気を遣う、相手のペースに合わせるのがしんどい、というタイプの人に多い。ソロでいたとしても、自由気ままに過ごすことができ、あくまで本人は楽しんでいる人または状態を指す。
 ソロ充の元になった言葉はご存じ「リア充」である。この言葉の起源は、2006年に2ちゃんねるで使われたのが最初とされ、翌年頃からはツイッター上でも広まり、一般に流布したのが2010年頃というのが定説となっている。


(中略)


 では、「ソロ充」という言葉はいつから使われ始めたのか。
 こちらも正確な起源は不明だが、元になった「リア充」が流布されたのが2010年頃であること、ヤフー知恵袋上で「ソロ充」という言葉が最初に出てきたのが2012年なので、2010〜2012年の間だろうと推測できる。同時に「キョロ充」という言葉も使われ出した。


 これからの世の中では、「ソロ活動」をする人がどんどん増えていくことは、まず間違いないでしょう。
 「ひとりでも充実した人生を過ごせる技術」は、持っているに越したことはありません。
 ただ、この本の著者は博報堂に勤めていて、「博報堂ソロ活動系男子研究プロジェクト・リーダー」として活動されているんですよね。
 こういう、経済的な不安がない人というのは、少数派の「エリート・ソロ充」なんだよなあ。
 世の中には、「お金も人間関係も希望もない」という状況の「ひとりで生きている人」が大勢いるわけです。
 まあ、そういう人たちは、こういう新書を買って読まないのかもしれないけれど。


 紹介されているさまざまなデータは興味深いものです。
 しかしながら、著者の「属性」からは、マリー・アントワネットに「パンがなければ、お菓子を食べればいいじゃない」って言われる庶民というのは、こんな気分なのかな、と思うところもあるのです(ちなみに、マリー・アントワネットが本当にこの発言をしたのかどうかは大いに疑問だというのが現在の定説なのですが)。
 いずれにしても、自立していて、ひとりを楽しめるほうが、これからの世の中では生きやすいことは事実でしょう。


 バンドをやっていればソロ活動をしてみたくなり、ソロがうまくいかなければ、バンドを再結成したくなる、その繰り返し。
 そういうのが「人間的」なんですよね、実にめんどくさい性質なんですが。


ヒットの崩壊 (講談社現代新書)

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