琥珀色の戯言

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【読書感想】未来の年表 人口減少日本でこれから起きること ☆☆☆


Kindle版もあります。

内容紹介
日本が人口減少社会にあることは「常識」。だが、その実態を正確に知る人はどのくらいいるだろうか?
人口減少に関する日々の変化というのは、極めてわずか。ゆえに人々を無関心にする。だが、それこそがこの問題の真の危機、「静かなる有事」である。

書店には、人口減少・少子高齢社会の課題を論じた書物が数多く並ぶ。しかし、テーマを絞って論じるにとどまり、恐るべき日本の未来図を時系列に沿って、かつ体系的に解き明かす書物はこれまでなかった。それを明確にしておかなければ、講ずべき適切な対策とは何なのかを判断できず、日本の行く末を変えることは叶わないはずなのに、である。

本書が、その画期的な役目を担おう。
第1部は「人口減少カレンダー」とし、年代順に何が起こるのかを時系列に沿って、かつ体系的に示した。未来の現実をデータで示した「基礎編」である。第2部では、第1部で取り上げた問題への対策を「10の処方箋」として提示した。こちらは、全国の公務員・政策決定者にも向けた「応用編」と言える。

これからの日本社会・日本経済を真摯に考えるうえでの必読書!


 少子高齢化によって、これからの日本はどうなっていくのか?
 高齢者の割合が増えていき、介護や社会保障の負担が若年層に重くのしかかり、空き家だらけになっていく……
 そんな漠然としたイメージはあるものの、いま40代半ばの僕としては、「これからの日本が心配……とは思うものの、現在の自分や家族のほうがより一層不安でもあるし、なんとなく僕の世代くらいまではなんとかなるのかな」という感じでもあるのです。
 8歳と2歳の息子たちのことを考えると、自分だけ逃げきれればいい、というものではないのだろうけれど、まあ、それはそれで、なんとかその時代の人間がうまくやっていくんじゃないの?という根拠のない楽観的な気分、みたいなものもあります。
 天下国家を心配する余裕なんてない、というのが正直なところで、多くの人がそうなんじゃないかな。
 ネット上で自分の正義を主張するための「日本という国」は想定できても、じゃあ、「あなたは日本のために、生活が苦しくても、望ましい相手がいなくても結婚したり、子供をつくったりできますか?」と問われたら、ほとんどの人は、「それは無理」だと思うんですよ。
 「自由な生き方の選択が可能」「子供がいれば、仕事も家庭も育児も趣味も充実していなければならない」というのが建前の社会で、どんどん子供が生まれてくるとも思えない。
 自分自身の生活だって、けっしてラクではないのに。

 人口減少をめぐっては、近年、衝撃的な2つの数値が相次いで公表された。
 その1つは2015年発表の国勢調査で、人口減少が実際に確認されたことだ。総人口が約1億2709万5000人となり、5年前の前回調査に比べて約96万3000人減ったのだ。1920年の初回調査から約100年にして、初めての減少となった。
 もう1つは、翌2016年の年間出生数が初めて100万人の大台を割り込み、98万1000人にとどまることである。
 もちろん、ここ数年で日本が消滅するわけではない。だが、50年、100年の単位で将来人口推計を見ていくと、ぞっとするほど日本人は少なくなる。国立社会保障・人口問題研究所(以下、社人研)が「日本の将来推計人口」(2017年)を5年ぶりに改訂したが、本書ではこの最新データを駆使して、日本の未来図を描いていくことにする。
 2015年時点において1億2700万人を数えた日本の総人口が、40年後には9000万人を下回り、100年も経たぬうちに5000万人ほどに減る。この推計はメディアでも繰り返し取り上げられているのでご存じの方も多いだろうが、こんなに急激に人口が減るのは世界史において類例がない。われわれは、長い歴史にあって極めて特異な時代を生きているのである。
 あまり知られていないが、この社人研の推計には続きがある。一定の条件を置いた“机上の計算”では、200年後におよそ1380万人、300年後には約450万人にまで減るというのだ。世界的に見れば人口密度が非常に高かったはずの日本列島は、これからスカスカな状態になっていくということである。300年後というのは現在を生きる誰もが確認しようのない遠い未来の数字ではある。が、450万人とは福岡県(約510万人)を少し小ぶりにした規模だ。日本の人口減少が地方消滅というような生易しいレベルの話ではないことはお分かりいただけよう。
 この“机上の計算”は、さらに遠い時代まで予測している。西暦2900年の日本列島に住む人はわずか6000人、西暦3000人にはなんと2000人にまで減るというのである。ここまで極端に減る前に、日本は国家として成り立たなくなることだろう。それどころか、日本人自体が「絶滅危惧種」として登録される存在になってしまいかねないのだ。


 大きな戦争などの「外力」がなくて、自由な生き方が選択でき、宗教的な束縛がない(子孫を残す、家を保つのが義務である、という規範がない)社会では、「子供を産み育てることは、自分自身にとってはデメリットのほうが大きい」という考え方は、けっして異常ではないと思います。
 戦争や疫病といった大きな要因がなくても、日本人は(たぶん人類全体も)どんどん減っていくのです。
 天災でも疫病でも外敵でもなく、自らの意思でゆるやかに滅んでいく、というのは、なんだか少し美しく感じるところもあるのですけど。
 おそらく、そんな生き物は、これまでの地球上には存在しなかったでしょうし。


 まあでも、わからないところはありますよね。
 僕が子供の頃、1970年代から80年代にかけては、地球の人口の爆発的な増加が予想されていて、人口増をいかに食い止めるか、ということがしきりに語られていたのだから。
 当時の日本には「産めよ増やせよ」みたいな雰囲気はありませんでした。
 それが今はこの状況なのだから、今後、「出産ブーム」が起こる可能性だってある。
 クローン人間や試験管ベビーといった形で種の保存を試みることも予想されますが、それはもう、僕の世代にとっては「想像できても、実感はできない話」です。

 
 著者は、読者がイメ―ジしやすいように、時系列に「日本の人口減によって、実際にどんなことが起こってくるのか」を記しています。

2020年:女性の2人に1人が50歳以上
2024年:3人に1人が65歳以上の「超・高齢者大国」へ
2030年:百貨店も銀行も老人ホームも地方から消える
2033年:全国の住宅の3戸に1戸が空き家になる
2042年:高齢者人口が約4000万人とピークに


 この先の「外国人が無人の国土を占拠すある」なんて話は、煽りすぎというか、その頃には外国もそれどころじゃない、と思うのですが、2020年って、東京オリンピックパラリンピックの年だし、2042年くらいなら、まだ僕も生きている可能性が高そうです。
 今後、四半世紀で、こんなに日本は急激に「縮んでいく」のか……

 先に取り上げた内閣府の報告書「地域の経済2016」は、これらのデータをベースに、三大都市圏を除いた自治体のうち、今後の人口減少の影響でどのようなサービスの立地が厳しくなるのかを計算している。
 具体的には、2010年時点の人口規模ならばサービスの存在確率が50%以上だった自治体のうち、2040年には存在確率が50%を割って店舗や施設の撤退が始まる自治体の割合を予測しているのだが、大きな需要規模を必要とする百貨店は38.1%の自治体で立地が難しくなる。大学は24.5%、有料老人ホームは23.0%で存続できなくなる可能性が出てくる。救急告示病院(18.3%)やハンバーガー店(22.7%)、公認会計士事務所(19.5%)、税理士事務所(18.3%)などは約20%の自治体で存続できなくなる可能性があると推計している。
 2040年時点での人口規模が2万人以下になるとペットショップや英会話教室が、1万人以下では救急病院や介護施設、税理士事務所などが、5000人以下になると一般病院や銀行といった日常生活の中でよく利用するサービスまでもが姿を消す。
 これに対しては、AIやICT(情報通信技術)に活路を求めればよいといった意見も多い。だが、どんなに技術が発達しようとも、人の手を使わなければできない仕事、人が携わったほうがよい仕事は残り続ける。機械化でコストを縮減できたとしても、機械の開発や維持にかかるコストは最低限得なければならない。


 人口減によって、地方ではさまざまなサービスが失われていき、それがさらに地方の人口減を助長する、ということになるのでしょう。
 マクドナルドが店舗を整理してきているのも、「美味しくない」「高い」という消費者からの評価だけが理由ではなさそうです。
 大学も、どんどん統廃合されていくことになるでしょう。
 団塊ジュニア世代の僕としては、難関大学に入りやすくなるのだとしたら、ちょっとうらやましいなあ、と思ってしまうところもあります。
 著者は、外国からの移民の推進にも、AIによる技術革新にも状況を劇的に改善する力はないと考えておられるようです。
 僕も移民政策は言葉の問題や同じように人口減を抱えている国がたくさんあることを考えると、日本にとっての決定打にはならないと思うのですが、AIをはじめとするテクノロジーの進歩には、大きな可能性があると感じています。
 いまの段階では、答え合わせはできないのですけど。


 この問題の最大の難点は、「日本の将来より、自分の現在」というのが大部分の人(もちろん僕も含めて)の本音だということなのです。
 「日本の未来予想図」に愕然としながらも、「じゃあ、あなたは今から何をしてくれますか?」という問いには、「まあ、先のことは先になってみないと、わからないし……」って、思ってしまうんですよね。
 未来というのは、どんなに心配しても、予想通りになるものではない、というのも事実です。
 太平洋戦争が終わったときの日本人が思っていた「70年後」、1967年の日本の有識者が考えていた「50年後」、僕が子供の頃に想像していた「21世紀」って、たぶん、こんな世の中じゃなかったはず。