琥珀色の戯言

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【読書感想】「ミヤネ屋」の秘密 大阪発の報道番組が全国人気になった理由 ☆☆☆


Kindle版もあります。

内容紹介
「残り30秒」が突然「残り10分」に。状況次第では、事前に用意されたVTRはもちろん、出演者さえ飛んでいく。宮根誠司の当意即妙の司会ぶりにときには振り回されながらも必死でついていくレギュラー陣とスタッフたち。大阪発のローカルから全国へ。東京に比べ、はるかに少ない予算と人員の中、創意工夫で人気番組へと成長した秘密を番組登場の解説委員が明らかにする。


 僕が平日のワイドショーを観るのは、祝日に家にいて、とりあえずテレビが点いている、という状況くらいで、『ミヤネ屋』も、そんなに頻繁にみているわけではありません。
 それでも、ワイドショーのなかでは、けっこう印象に残る番組ではあるんですよね。


 著者は読売テレビの報道局解説委員長として、10年以上『ミヤネ屋』でコメンテーターをつとめている春川正明さん。司会の宮根誠司さんとの掛け合いは、番組の名物にもなっています。

 番組を観ていただいている多くの視聴者の方々から「ミヤネ屋の放送前の打ち合わせは、どれくらいやっているのですか?」とよく聞かれますが、「三分だけ」と答えると皆さん驚かれます。「でも、司会者とコメンテーターがどんなやり取りをするのかは、事前に打ち合わせするのですよね?」とも聞かれますが、じつは司会者とコメンテーターとの事前の打ち合わせはありません。
 もっと言うと、私を含めてコメンテーターが一堂に会しての打ち合わせもありません。私以外のコメンテーターの方には、プロデューサーが番組内容を個別に説明して回り、注意点があれば伝えるだけです。
 私はこの番組に10年近くレギュラー・コメンテーターとして出演していますが、宮根さんと事前にじっくり打ち合わせをしたのは、安倍晋三首相が生出演した時の一度だけです。


 この本を読んでいると、『ミヤネ屋』、そして宮根誠司さんの臨機応変な対応が人気を支えているということがよくわかります。
 番組スタッフ側では、名物のパネルの作り込みなどは、かなりキッチリやっているようなのですが、話が盛り上がっているときには、宮根さんの判断で、その話題を延長し、ゲストや企画がキャンセルされる、ということも少なくないそうです。
 宮根さんをみていると、僕は『ニュースステーション』時代の久米宏さんを思い出すんですよね。
 おべっか使いにならないギリギリの線の「視聴者目線」とか、事前に入念な準備をしながら、放送中にそれを壊すことをおそれないところとか。
 コメンテーターとも事前のやりとりがほとんどなく、出演者の側も何を聞かれるかわからないという緊張感が、番組を面白くしているのです。
 ただ、それは情報の正確さ、という意味では、かなりリスクがありそうですし、著者も「他の出演者のコメントの明らかな間違いは訂正しているし、意見が偏らないように調整している」そうです。
 ただし、生放送で他の人のコメントを「訂正」するのは、確信がないとできないし、かなり勇気が要る、とも仰っています。


 僕がこの本を読んでいて驚いたのは、安倍首相が生出演した際に、春川さんが、集団的自衛権や安全保障法制について、「安倍さんがリーダーとして、人の話に耳を傾けてくれるのかと不安感を持っている人が多いと感じている」「誰のための総理をやってらっしゃるんですか?」と質問をしたときの話でした。

 放送終了後、この安倍首相とのやり取りについては、大阪と東京で受け取り方が違いました。
 大阪では思ったほどの反響はありませんでした。社内でも、まあ良かったんじゃないかみたいな感じであまり反応がありませんでした。
 ところが、その後東京に行った時に、東京の某キー局の政治部長が、ある会合で一緒になった際に「この前観ていましたけど、春川さん、よくあんなことを総理に聞きましたね」と私に言ったのです。
 私は、別に言い過ぎたなということはまったくなくて、ジャーナリストとして聞くべきことを聞いただけだと思うのですが、おそらく東京の局では、これだけ直球で総理に聞くことはないのかも知れませんし、ましてや現職の総理に面と向かって、「誰のために総理をやっているのですか」という聞き方はたぶんしないので、やはり東京の人は受け止め方が違うのだなということを強く思いました。


 そういう「聞きにくいことを権力を持っている人にちゃんと聞く」のが、マスメディアの役割だし、この本で引用されている春川さんの質問や言葉遣いは、「礼を失したもの」ではないと僕は思います。
 それだけのこの東京の某キー局の政治部長の言葉は意外というか「誰のためにジャーナリストになったのですか?」とこの人にこそ聞いてみたくなりました。
 でも、こういう「権力側を向いている『自称ジャーナリスト』」って、けっこういそうだし、そういう人が偉くなっているのかもしれないなあ。

 多くの視聴者の方からミヤネ家についていろいろと聞かれますが、最も多いのは、やはり「宮根さんって本当はどんな人なのですか?」という質問です。番組の中では縦横無尽に大活躍する宮根さんですが、プライベートでの宮根さんはいったいどういう人なのかということにとても興味があるようです。
 宮根さんは、一言でいうととってもシャイな人です。かなりの人見知りです。親しくなるまでは、話す時でもなかなか目を見てくれません。こう言うと、たいていの人は驚きますが、一緒に仕事をするようになっても、何でも話せるようになるには少しばかり時間がかかる人だなと感じます。テレビで見る印象とはまったく違いますが、個人的に仲良くなるには時間が必要だと思います。
 だいぶ前のことですが、宮根さんと共に仕事をしていた女性アナウンサーから「私、宮根さんに嫌われているみたいです」と言われたことがありました。一緒に仕事をするようになってだいぶ時間が経つのに、いまだに宮根さんの携帯電話の番号も知らないし、一緒にご飯に行ったこともないのだと言うのです。


(中略)


 宮根さんは、基本的に二人きりでご飯を食べるのが得意でないと思います。
 私も、宮根さんと二人で晩ご飯を食べに行こうという約束をしていた時に、約束した日が近づいてくると、宮根さんから「もう一人連れて行ってもいいですか」と聞かれたことが何度かありました。その時、「あー宮根さんは、二人きりでご飯を食べるのが苦手なのだ」と理解しました。いつも周りにいる気心の知れた人たちを連れてくるのです。そのほうが気を遣わずに済むのでしょう。いわゆる、ビジネス会食が苦手なのだと思います。


 宮根さんは、みんなが一緒のときには、カラオケなどでも自ら場を盛り上げようとされるそうなので、「素の自分を誰かに見せる」「1対1で深い話をする」のが苦手なタイプなのかもしれませんね。


 『ミヤネ屋』のファンの人や、いまのテレビでの「報道とバラエティの境界」について興味がある人は、読んでみて損はしないと思います。
 現役コメンテーターの著者なので「番組にとって都合の悪い話」はほとんどないし、あくまでも「春川さんの視点での『ミヤネ屋』」ではあるのですけど。


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