琥珀色の戯言

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【読書感想】水族館哲学 人生が変わる30館 ☆☆☆


Kindle版もあります。

内容(「BOOK」データベースより)
廃館寸前の水族館を独自の斬新な手法で蘇らせてきた水族館プロデューサーの著者。水族館について全てを知り尽くす著者が、数多ある中から30館を選りすぐり、その常識的な枠を超えた「展示」の本当の魅力や見所を紹介する。地球と生き物の命、日本のアニミズム、水中世界の癒しなど、超ユニークな視点で綴られた驚異の一冊!


 水族館プロデューサー・中村元さんが選んだ、日本の水族館30選。
 僕は水族館大好きなので、30館の半分くらいは行ったことがあるんじゃないか、と思っていたのですが、実際に行ったことがあるのは9館でした。
 沖縄美ら海水族館海遊館名古屋港水族館といった有名どころから、おんねゆ温泉・北の大地の水族館、蒲郡市竹島水族館鶴岡市立・加茂水族館のような、知る人ぞ知る水族館まで、大小さまざまな規模の日本中の水族館が紹介されています。
 綺麗なカラー写真もたくさん掲載されていて、それを見ているだけで、ちょっと癒されますし。


 知らない水族館の紹介はもちろん興味深かったのですが、行ったことがある水族館を中村さんがどう評価しているのかを読むほうが、面白かったんですよね。
 ああ、僕にとっては、「なんだか狭いし、魚も少ないし、アートな雰囲気で誤魔化されてしまった気がする水族館(『すみだ水族館』のことです。好きな人はごめん)は、中村さんにとっては、こういう意味があるのだな、って。
 基本的には、海に近い、大きな水族館のほうが、僕は好きです。
 僕にとっては身近な水族館のひとつである長崎ペンギン水族館、ペンギンパレードの話が出てくるのですが、ここがまだ「長崎水族館」だった頃は、寂れてお客さんも少なかったんだよなあ。

 北海道のど真ん中の山裾、寂れて閑散とした温泉街、車も通らない道、冬はマイナス20度の極寒、旧水族館の入館者は年間2万人弱、おまけに建設費は極小予算——。そんな状況で水族館を建て替えようとすること自体が無謀でしかあり得ないのだが、やってしまった。しかも集客できる水族館にする約束まで付け加えて、ついに実現した。


 去年の秋、この北の大地の水族館に、札幌からレンタカーを運転して行ったのも思い出します。
 道の駅の中にあって、大きな水槽は5つか6つくらいしかない、小さな水族館なのだけれど、イトウをあんなにたくさん見ることは、もう二度と無さそうです。
 

 個人的に次に行ってみたいと思ったのは、名古屋港水族館アクアマリンふくしまでした。
 あと、「ショボイ水族館」であることを逆手にとってセールスポイントにした竹島水族館の話も興味深いものでした。
 1956年の開館以来、61年間、ハード面がほとんど進化していない竹島水族館は、こんな方法でお客さんを呼び込もうとしたのです。

 まずは、解説版で新しい魅力づくり。展示生物にも水槽にもこれといった魅力がないという弱点から発想し、他の水族館では利用者の誰も読まないであろう解説板で勝負に出た。
 内容もよくありがちな生物学的知識は二の次にし、食用としての知識、名前の面白さ、笑えるダジャレ、トリビア情報など、利用者の興味を惹くことを中心に変えた。
 さらに、そのほとんどをスタッフの手書きにした。実は手書き解説は、展示スタッフの気持ちが伝わることで読ませる力が強く、タイプ文字の10倍以上の人が読む。それではなぜ、全ての水族館で行わないのか?
 この裏技、新しい水族館や雰囲気重視の水族館では、手書きがヘンに主張して水塊の邪魔になるし、何よりも貧乏くさい。竹島水族館が超古いという弱点があるからこそ、効果的に使える裏技なのだ。
 次はスタッフ自身の改革だ。それまで隠れるようにして観覧通路に出てこなかった飼育スタッフを説得して、積極的に観覧側に出て客と話をさせるようにした。


 話しかけられることに抵抗がある、というお客さんも少なからずいるとは思うのですが、レトロな雰囲気の水族館だからこそ、より親しみを持ってもらいやすいのでしょうね。


 あと、琵琶湖博物館では、「川魚専門の魚屋さんの店先が再現され、鮒ずしの匂いまでもが展示物の一つとなった」なんていうのを読むと、どこもいろんな工夫をしているのだなあ、と感じずにはいられません。
 水族館って、どこも同じようで、みんな、それぞれ違っているのだよなあ。


 水族館好きには、眺めているだけで楽しく、役にも立つガイドブックだと思います。
 ちょうど、夏休みでもありますしね。


fujipon.hatenadiary.com

いただきますの水族館: 北の大地の水族館で学ぶ「いのち」のつながり

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水族館の通になる―年間3千万人を魅了する楽園の謎 (祥伝社新書)

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