琥珀色の戯言

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【読書感想】宝くじで1億円当たった人の末路 ☆☆☆

宝くじで1億円当たった人の末路

宝くじで1億円当たった人の末路


Kindle版もあります。

宝くじで1億円当たった人の末路

宝くじで1億円当たった人の末路

内容紹介
「宝くじで1億円当たったら……」。
こんな淡い期待を胸に、宝くじ売り場につい並んでしまうビジネスパーソンも多いのではないでしょうか。
果たして、「宝くじで1億円当てた」後に待ち受ける末路とはどんなものなのでしょうか。


「大学時代からバックパッカーを続けて、20代を放浪の旅人として過ごせば、どんな人生が待ち受けているのか」
「30~40代で友達がゼロの会社員が孤独な生活を続けていったら、最終的に人生はどうなるのか」
「キラキラネームを子供に付けてしまったら、その子の将来はどうなってしまうのか」――。
いずれも、何となく"やばいこと"になりそうなのは分かります。


でも、その先の人生がどうなるか、正確に教えてくれる人はなかなかいません。
こうした疑問に、しっかり答えられる人も少ないはずです。
グローバル化とITの革新によって、私たちの人生の選択肢は、飛躍的に広がりました。
誰もが、その気になれば、大抵の挑戦はできる。そんな時代に私たちは生きています。
でもその割には、「いろいろ挑戦して人生を楽しんでいる人」って少ないと思いませんか?
みんな実は、人生で一つの「選択」をした後、どんな「末路」が待ち受けているかよく分からなくて、不安なのだと思います。
だったら、気になる様々な人生の「末路」を、専門家や経験者に取材してしまえばどうか。


いろいろな「末路」を知れば、きっとあなたの心は解き放たれます。


「好きなように生きていい」。


専門家と著者が導き出す多様な「末路」が、そんなふうに、そっとあなたの背中を押すはずです。


 平凡な人生はイヤだけれど、他人とは違う生き方をするのも不安だ……
 人生にはセーブポイントはありませんから、一度選んでしまったら、後戻りはできません。
 この本では、自分の意思、あるいは他者の介入や偶然で、「普通とはちょっと違う人生」になった人が、どう生きたのか、あるいは、どう生きているのかを紹介しています。
 ただし、宝くじの当選者の項でいえば、実際に大勢の当選者に取材したわけではなく、有識者への取材でまとめていますし、「若い頃、ずっとバックパッカーをしていた人」への取材も、その後社会復帰(?)して、起業後、成功している人の話です。
 正直なところ、もっと多くの人に対する統計的な調査とか、「しくじってしまった人」の実体験などを聞きたいな、とも思ったんですよね。
 23の「末路」があるのですが、後半はネタ切れっぽい感じで、いかにも『日経ビジネス』らしいというか、「こんな時代でもがんばって丁寧な仕事をしているクリーニング屋さんの話」とかが出てきます。
 「アジアの路上生活者のために日本にいてできること」が「一生懸命仕事をし、その国の経済発展に貢献すること」なんていうのは、そりゃそうかもしれないけど、あまりに「日本のビジネス雑誌っぽい感想だなあ」と苦笑せずはいられませんでした。
 

 それでも、身につまされるというか、人間が陥りやすい罠、みたいなものが、こういう「特別な人生を送った人」のエピソードには詰まっているんですよね。
 「宝くじで1億円当たった人の末路」について、マネーフォワード取締役の瀧俊雄さんの話。

瀧俊雄:現実には、当たる前は「黙っていよう」と思っていても、多くの人はばれてしまいます。我慢し切れずに自らカミングアウトする人もいるし、隠そうとしてもついつい生活が派手になり周囲に隠し切れなくなる人もいるようです。


——なるほど。


瀧:人間の浪費というものは一回始まるとなかなか止まらないものなんですね。普段、2000円の寿司を食べている人が、宝くじが当たって「自分へのご褒美」などといって1万円の寿司を食べたとしましょう。ところが美味しいものを食べた時に出る脳内麻薬は、寿司の金額が5倍になっても、比例して5倍になることはありません。「あれ、おかしいな。じゃあ3万円はどうだろう」と、すぐエスカレートしてしまいます。クルマ、旅行、宝飾品……。浪費はどんどん膨れ上がり、周囲からすぐに「何かあったな」と勘繰られるようになるはずです。


——「そんなことには絶対にならない。自分は鉄の意志で自制心を失わない」と思っている読者もたくさんいると思いますが。


瀧:そう思っているほど、危ない。企業側も「急に資産を築いた人」の財布を開くためのマーケティングは研究し尽くしています。ただでさえ、人は「不慣れな金額の取引」は金銭感覚が麻痺して失敗しやすいものなんです。普段800円のランチを食べている人が、別の店に行ってランチが1150円だったらどうします。


——慎重にメニューを吟味します。


瀧:でも5000万円で家を買う時、70万円追加すれば、より生活が快適になるオプションが付きますよと言われたら。


——「そりゃもう5000万円払うんですから、70万円なんて大した金額ではない」などと思う人もいるでしょうね。


瀧:そうですよね。でも、金額的には、その意思決定はランチの2000倍、吟味すべき対象なんです。それくらい、不慣れな取引ではいい加減な意思決定をしてしまいがちなんです。
 超高級宝飾店で買い物をすれば、豪華なパンフレットやインビテーションが届くようになります。行けばVIPルームに通される。この”あなただけ感””エクスクルーシブ感”に堪えられる人は多くないですし、一度味わうとそんな生活を諦めることはより難しくなります。「急な富裕化」というのはそのぐらい危険なことで、例えば米プロバスケットボールNBAを引退した人の60%は5年以内に破産しているというデータもあります。


 人間は贅沢に慣れやすいし、使ったお金に比例して満足感を得られるわけではない。
 金銭感覚というのは、けっこうアバウトなものなのです。
 結婚披露宴のオプションとか、まさにそんな感じだったよなあ。
 せっかくだから、と、ちょっと良いものにしただけのつもりでも、1か月分の収入が飛んでいくのに、それを冷静に吟味することもなかった。
 老後や病気になったときに、そのお金があれば、かなり助かったかもしれないのに。
 また、「急にお金持ちになった人」「大きなお金を使おうとしている人」の財布の紐を緩めるノウハウというのも、業界ではしっかり確立されているのです。
 それにしても、NBAを引退した人の60%が5年以内に破産って……
 この本のタイトルの「末路」って、ひどいよなあ、って思っていたのですが、実際に「末路」という言葉を使わざるをえないくらいの現実もあるようです。
 
 
 殺人事件や自殺が起こった部屋を検索できる、事故物件公示サイト『大島てる』を運営している大島さんのこんな話も興味深いものでした。

大島:ただ、こうした「事故物件でどんどん事故が起こる現象」はいわゆる心霊現象などではなくて、合理的な理由があると私は考えています。
 例えば、強盗殺人事件が起きたマンションは往々にして、防犯上の問題を抱えている。転落死亡事故が起きたマンションなら、バルコニーの造りに問題があったりします。火災の場合は消防車が通れない場所にありボヤで済まなかったなど、立地面の問題が考えられます。道路の突き当たりに位置し、クルマが突っ込みやすい土地にある建物なら、一度ならず何度も車両事故の被害に遭ってもおかしくない。また、事故物件化すると、賃貸物件の場合、家賃を下げざるを得ません。その結果、安い家賃の入居者と、事故前の高い家賃で住んできた入居者との間に溝が生じ、トラブルが起きやすくなることがあります。


 あらためて因果関係を精査してみると、「呪い」とか「祟り」ではない、合理的な原因がある場合が多い、ということなんですね。
 ただ、大島さんも、ごく一部に、そういう合理的な説明ができないような事例はある、とは仰っています。
 

 「キラキラネーム」をつけられた子どもの末路、という項もあります。
 「キラキラネーム」と揶揄される子どもの珍名・奇名については、あまりにも読みにくい名前だと労務管理上の問題があるとか、「人を馬鹿にしたような名前だと、取引先に悪印象を与えるのではないか」という配慮から、採用に慎重になる、という人事担当者もいるそうです。
 命名研究家の牧野恭仁さんの話です。

牧野:子どもを玩具にしているかのような「悪質なキラキラネーム」を付ける親はどんな人たちだと思いますか。


——それは、何と言いますか「民度があまり高くなく、社会ルールも積極的には守らない、どちらかと言えばアウトローな人たち」が思い浮かびますが……。


牧野:まったくの誤解です。奇抜な名前を付けようとする親の多くは、ごく普通の人たちです。階層も中流以上で、社会的地位もある大変真面目な人たちがすごく多い。


——なのに、なぜ……。


牧野:私の経験上、彼らには大きな共通項があります。「自分は個性的ではない」「抑圧された環境で没個性的な人生を余儀なくされてきた」という強い無力感、欠乏感を抱えているということです。そうした人たちが親になると、当然、子供には「個性的で格好いい人生」「環境に適応するのでなく自分で選んだ人生」を生きてほしいと願います。そんな思いが名付けの段階で暴走してしまう。これが「悪質なキラキラネーム」が生まれる最もありがちな構図です。


——「個性的な名前なら、人生も個性的になる」と安直に考えているわけですか。となると、我が子にキラキラネームを付ける親は、必要以上に個性的な人格になるような育て方をしてしまう、と。


牧野:いえ、そこが複雑なんですが、往々にして現実は逆になります。個性を磨いてほしいと口では言いながら、実際は「自分を押し殺して環境に適合せよ」「周囲に合わせて生きよ」と抑圧してしまう場合の方がずっと多い。
 そもそも、個性的に育てようとしても、自分はそう育てられていませんから、ノウハウを持ち合わせていません。一方で、自分が親から無意識のうちに刷り込まれた「集団の中で自分を主張するのは悪」「周囲に迎合して個性を埋没させるのが最も生きやすい」といった価値感は簡単にはぬぐえないから、結局はそれを我が子にも押し付ける。つまり、奇抜な名前の子ほど「周りを過剰に気にする没個性的な人格」に育ってしまうんです。


 これを読むと、キラキラネームが生まれる構図というのは、けっこうややこしいものがあるのだなあ、と考えさせられます。
 「自分が普通の人間だから、子供には『個性的な名前』をつけたくなる」っていうのは、気持ちとしてはわかるのですが、それはそれで、いじめの対象になる、なんていう不都合な現実もあるわけです。
 けっこうみんな「キラキラネーム慣れ」してきていて、多少のことでは驚かれなくなってもいるようなのですが。


 これを読んでいると、人間の幸福と不幸って、紙一重というか、幸福だと信じられている状態が不幸に繋がっていたり、その逆だったりすることは少なくない、と思うのです。
 とはいえ、「平凡なのが幸せなのだ」と言われても、なかなか実感できませんよね。


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