琥珀色の戯言

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【映画感想】三度目の殺人 ☆☆☆

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あらすじ
勝つことを第一目標に掲げる弁護士の重盛(福山雅治)は、殺人の前科がある三隅(役所広司)の弁護を渋々引き受ける。クビになった工場の社長を手にかけ、さらに死体に火を付けた容疑で起訴され犯行も自供しており、ほぼ死刑が確定しているような裁判だった。しかし、三隅と顔を合わせるうちに重盛の考えは変化していく。三隅の犯行動機への疑念を一つ一つひもとく重盛だったが……。


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 2017年の映画館での23作目。19時からの回で、観客は15人くらいでした。
 予告編を観て、少なくとも気分爽快になる映画じゃないな、と覚悟していたつもりだったのですが、予想を上回る不快さ。
 映画『怒り』を思い出してしまいました。

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 この映画も、2時間ひたすら「嫌な気分になる爆弾」をスクリーンの向こうから投げつけられ続けるような感じなんですよ。
 広瀬すずさんが、また酷い目にあってるし。
 広瀬さんも含めて、みんな本当のことを言っているのかよくわからないのです、この映画。
 福山雅治さんが演じている重盛も、弁護士でイケメンで有能で……と言うことなし、にみせかけて、娘さんのことなど、さまざまな問題を内面に抱えています。
 高額報酬が期待できそうもなく、手間がかかるこの事件を、効率至上主義者のようにみえる重盛が扱うということそのものが、重盛の順風満帆とはいえない立場をあらわしている、ともいえますし(北海道への旅費が出るか、とか確認するシーンもあったので、国選弁護人だったのかな……)。
 まあ、いまは士業もラクじゃない、簡単には稼げない、って言いますよね。
 

 物語の中盤で、福山雅治さんが演じていた弁護士が、役所広司さん演じる殺人犯・三隅に「本当のことを言ってくれ!」と怒鳴るシーンを観ながら、「だよねえ……」と呟いていました。
 メディアが伝える表層的な「事実」と当事者にとっての「真実」の乖離とか、真実を究明するより効率重視の裁判というシステムとかへの疑念を呈したいのだな、ということは理解できるですが、観ていると「是枝監督が言いたいことのために、都合よく作られためんどくさい物語」のようにしか感じられなくて、観ながらけっこうイライラしてしまったのです。
 こんなに言うことがコロコロ変わる人を相手にしなきゃいけないって、警察とか法曹関係者も大変ですよね。
 監督は彼らの効率重視主義に疑念を呈したかったのかもしれませんが、観ていた僕は、真実を明らかにする、とはいっても、こんなウソツキ村みたいなところで全部真に受けて隅々まで調査していたら、裁判なんて終わらなくなって、「ゴネ得」になるんじゃないか、と、かえって法曹関係者に同情しましたよ。
 法曹関係者も大変なんだな、と思わせるようにも描いているのが、是枝監督の丁寧さでもあるんでしょうけど。
 ただ、『それでもボクはやってない』では、痴漢冤罪というテーマを描きながらも、観る側にとっては「面白い映画」にしているのに、この『三度目の殺人』は、重い、ひたすら重苦しい。
 そして、徹頭徹尾「面白くはないし、面白くなりそうな予感もしない映画」なのです。
 観ていて、そんなにつまらないと思ってはいないはずなのに、少しだけ寝落ちしてしまいました。
 
 
 広瀬すずさんは、なんか不幸な役が多いよねえ。
 被害者の妻役が斉藤由貴さんだったのだけど、これはあまりに間が悪い、悪すぎる。
 実は、この映画で1ヶ所だけ個人的に笑いが止まらなくなってしまって、それは「被害者の妻」として、斉藤由貴さんが登場してきたシーンだったんですよ。
 ものすごくシリアスな状況なんだけれど、斉藤さんが画面に映っただけで、写真週刊誌に載っていた、不倫相手のパンティー被り写真を思い出し、笑いがこみあげてきて困りました。どんなにそれはそれ、これはこれ、と自分に言い聞かせても、やっぱりダメだった。
 この映画のことを考えると、最悪のタイミングでのスキャンダルだったな、斉藤由貴さんの不倫とあの写真は。
 『FLASH』に掲載されていたのは2年前の写真、ということだったので、今、それが出てくるのは、是枝監督に恨みを持つ人か、フジテレビが出資しているこの作品になんらかの妨害をしようとしている組織が絡んでいるのではないか、とさえ思えてきます。
 仕事は仕事、プライベートはプライベート、なんだけどさ……役者というのは、それじゃ通じないのだな、とあらためて思い知らされました。
 せめて、あの不倫相手の写真を見ていなければ……憧れのアイドルとそういうことになって浮かれる気持ちはわからなくもないし、恋愛というのは人間に果てしなくバカバカしいことをやらせてしまいがちなものではありますが、他人事としてみると、そりゃ「面白がる」しかないわけで。


 うわ、本筋とは関係ない話が長くなりすぎてしまった……
 

 是枝監督は、「福山雅治が演じれば、計算高い感じの悪い男でも『中和』できる」という、「福山雅治のうまい起用法」を編み出した人だと思います。
 そして、この『三度目の殺人』の「三度目」は、死刑制度のことを指しているのでしょう。
 これって、「ほのめかし映画」というか、あまりにもいろんな情報が出てきて、収集がつかなくなっているのではなかろうか。
 要素をひとつひとつ考え直してみると、三隅が(本人にとっての)善意だけであの犯行に及んだとは考えにくいし、「善意」を100%否定することも難しい。
 そもそも、他者の内心なんて、知る方法はどこにもありません。
 本当の「動機」なんて、第三者にはわからないのです。いや、本人にだってわからないことが多いのかもしれません。
 結局のところ、第三者には「本当のこと」は何もわからなくて、自分が信じたいものを、「報道されているもの」に投影しているだけなのです。
 

 是枝監督は、そういう「どちらともつかないもの」を、どちらともつかないままドラマにするのが上手いよなあ。
 ただ、この映画に関しては、どちらに転んでも救いがない、という絶望感ばかりが残ってしまう。
 そして、あまりにも「作り込みすぎてしまっている」ようにも感じます。
 観かたによっては、重盛がサイコパス犯罪者・三隅にどんどん搦め捕られていく映画、でもあるのだよなあ、これ。


 ワイドショーを観て他者を責めるのは簡単だけれど、みんなそれぞれ、複雑な事情を抱えて生きているんだよね。
 彼女のパンティーを被ったことがない者が、まず、この男に石を投げよ。


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三度目の殺人【映画ノベライズ】 (宝島社文庫)

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