琥珀色の戯言

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【映画感想】アウトレイジ 最終章 ☆☆☆☆

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あらすじ
関東の山王会と関西の花菱会の間で起きたし烈な権力闘争の後、大友(ビートたけし)は韓国に拠点を移す。彼は日本と韓国の裏社会で暗躍する実力者張会長(金田時男)の下にいたが、ある時、韓国に出張中の花菱会の花田(ピエール瀧)が騒ぎを起こし、張会長の部下を殺害してしまう。この事件を発端に、張会長と花菱会の関係は険悪になり……。


注意:下の公式サイトは音が出ます!
outrage-movie.jp


2017年の映画館での25作目。祝日で、観客は70人くらいでした。

僕はこの『アウトレイジ』シリーズを全部観ているのですが、前作の公開が2012年ということもあり、これまでの内容をほとんど忘れてしまっていました。
これから観に行く方は、『アウトレイジ』『アウトレイジ ビヨンド』を全部観直してからがベストだとは思うのですが、最低限、この動画くらいは観ておいたほうが良さそうです。

www.youtube.com

ほんと、5年前に観た作品でもこんなに忘れているんだから、こんなにコンテンツをたくさん観ても、あんまり意味ないのかもなあ、なんて、ときどき思うんですよ。
まあ、その場で面白いと感じられることが、いちばん大事なのかもしれないけれど。


 『アウトレイジ ビヨンド』では、三浦友和さんの悪役っぷりと、ラストのあっけないというか、「えっ、ここでこの人?」という幕切れが印象的だったのですが、なんとなく「オチがついた」感じではあったんですよね。
 なので、今回『最終章』が公開されると聞いたときには、「それ、ヒット作だという理由で、けっこう強引に続編をつくった(つくらされた)んじゃない?」って思ったのです。
 北野武監督は「もともと3作目までの構想とシナリオはあった」と仰っていますが、2作目までと比べると、けっこう無理矢理抗争しているような感じはします。
 観終えて振り返ってみると、最初に起きた個人的なトラブルがきっかけで、多くの人の野心に火をつけ、収拾がつかないような争いになっていくんですよ。
 ひとりの人間が、自分のやったことにきちんと責任をとれば、それで済むはずの話だったのに。
 『アウトレイジ』って、極道の極端な世界の話で、マシンガンで人が撃たれまくる場面もあるので、なんか「異世界体験」をしているような感覚があるのですが、こういう「ちょっとした責任逃れや自分のメンツへのこだわりが、問題を大きくして、みんなを巻き込んで破滅に向かってしまうこと」って、けっこうよくある話で。
 最近でいえば、東芝不正経理問題なんて、まさにこんな感じだよなあ。


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 あらためて考えてみると、この『アウトレイジ』シリーズって、けっこうすごいですよね。
 主要キャストの舞台挨拶をネットで観たのですが、これだけ男ばかりの映画って、本当に珍しい。
 映画『関ヶ原』だって、有村架純さんがヒロインっぽい役で強引に出ているのに!
 

 ただ、この『アウトレイジ』シリーズって、あんまり教訓とかを見いだす映画じゃなくて、マシンガンを撃ちまくるシーンに「『セーラー服と機関銃』を思い出すなあ!『カ・イ・カ・ン』って言うのか? ……言わないか、やっぱり」みたいな感じで、「スクリーンの中で繰り広げられる暴力」に浸れば良いんじゃないかとは思うんですよ。
 ラストは、「えっ、これで終わり?」と僕は感じたのですが(もっと徹底的にすべてを破壊し尽くすかと思っていたというか、あの人が死んで、あの人は生き残るのか……というスッキリしない部分もあって)、よく考えてみると、北野武監督、そして『アウトレイジ』は、そういう映画監督であり、そういう作品なんですよね。
 

 この『アウトレイジ最終章』に関しては、どうして大友がそこまでのことをやるのか(そして、ラストでは、そこまでしかやらなかったのか)、と僕は思いながら観ていました。

 劇中で、大友が言うんですよね(映画館で一回聞いただけなので、間違ってたらすみません)


「何もいらねえ、って言ってんだろ!」


 僕はここで、ゾクッとしたんですよ。
 今の映画って、いや、世の中って言ってもいいけど、人間がやることには「理由」とか「ソース」が求められます。
 「お金のため」「承認欲求」って説明されると、みんな納得できる。
 でも、そんななかに、「なんでここまでやるのか、その理由がわからない男」である、大友が投げ込まれると、僕はひどく混乱するのです。
 この人は、なんでここまでのことをやっているんだ?
 義理、人情、何らかの責任感? 単なる破壊衝動?


 大友のこの「何もいらねえ」に、僕は西郷隆盛のこんな言葉を思い出したのです。

「命もいらず、名もいらず、官位も金もいらぬ人は、始末に困るものなり。この始末に困る人ならでは、艱難(かんなん)を共にして国家の大業は成し得られぬなり。」


 大友は「国家の大業を成す」タイプの人ではないけれど、「何もいらないがゆえに、始末に困る」って、こういう人なんだよね、きっと。
 こういう人って、幕末のような乱世に出てくれば英雄になれるけれど、平穏な世の中では、「生粋のテロリスト」になってしまう。
 僕が最近観ている、「ちゃんとなんでもわかりやすく説明してくれる映画」には、こういう「なんでこんなことをするのか、よくわからない人」って、出てこないのです。
 観客にとっては、理解できない存在で、そういうキャラクターに「違和感」とか「不快感」を抱く人もいるのだろうし。
 正直、僕も「こんなにバイオレンスに満ちあふれた映画なのに、なんかスッキリしないな」と思いながら、シアターから出てきました。
 でも、大友のような人間なら、こうするしかないし、大友のような人間でも、ここまでのことしかできない、というのが「いま」であり、「社会」なのだよなあ。
 そういう意味では、『アウトレイジ』というのは、「さすがにあんなことしたらすぐに逮捕されるだろう」という非現実的な映画のようでいて、「ひとりの人間にできるのは、せいぜいこのくらいなのだ」という、きわめて現実的な閉塞を描いてもいるのです。
 ハリウッド映画のスーパーヒーローのように、ひとりの力で、すべてを解決できるわけじゃない。


 次から次へと状況が変化していく、群像劇としての面白さは前作ほどではありませんが、エンターテインメントと北野武監督の理由なき破壊衝動みたいなもののバランスがとれた「楽しめるキタノ・ブルー」だと思います。
 いや、これを「楽しめる」とか言って良いのか、という後ろめたさも含めて、ね。


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