琥珀色の戯言

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【読書感想】ダ・ヴィンチ絵画の謎 ☆☆☆

カラー版 - ダ・ヴィンチ絵画の謎 (中公新書)

カラー版 - ダ・ヴィンチ絵画の謎 (中公新書)

内容(「BOOK」データベースより)
誰もが知っている『モナリザ』。しかし、よくよく見ればさまざまな謎に満ちている。モデルは誰か、なぜ微笑を湛えているのか。なぜ左右の背景はつながっていないのか、そもそもなぜこんなに荒涼とした風景なのか…。鏡文字で書かれたダ・ヴィンチの手稿を研究し、彼の抱く世界観を知悉する著者が、俗説を退けながら、現存する主要な絵画のテーマや来歴について、ダ・ヴィンチ自身のものの見方に立って解読する。


 書店で見かけて購入。
 「モナリザ(のモデル)は誰か?」というのは、美術史上の定番の謎なのです。
 カラー写真も多そうだし、ダ・ヴィンチの絵のことをひと通り勉強するにはちょうど良いかな、って気軽に読み始めたのですが……


 読んでみて、正直、面喰らってしまいました。
 レオナルド・ダ・ヴィンチの生涯と絵の話かと思いきや(もちろん、それも語られてはいるのですが)、著者は、僕が予想もしなかったアプローチで、ダ・ヴィンチの仕事を分析していくのです。

 レオナルド・ダ・ヴィンチは、長いとは言えない67年の生涯の間に、ごくわずかな絵画作品——彼の師匠の絵に筆を入れたものや、未完成のまま放棄してしまった作品までを含めても、全部で十数点あるかないか——しか残さなかった半面、われわれには読むのが厄介な文字——鏡文字——で書いた膨大なノートブックを残してくれた。
 そう言うわたしは、その彼の書いたノートブックの研究者で、彼が一生にわたって記録し続けた自然観察や科学的考察、人間観や世界観、そして遠い未来のことだが、この地球上で人類が滅亡した後に、最終的にこの世界がどうなるかを見通した彼の宇宙論などの研究をしてきた。


 この新書を読みながら、僕は「観光スポット紹介を期待して、『ブラタモリ』を観てしまった視聴者って、こんな気分なんだろうな」と、ずっと思っていたんですよね。
 著者は、地層とか地形とか、ダ・ヴィンチがリアルタイムで考えていたであろう、いわゆる「地質学」の話を、ダ・ヴィンチが遺したノートをもとに、丁寧に説明してくれています。
 そうか、ダ・ヴィンチには、世界がこんなふうに見えていたんだな……
モナリザ』も、描かれている女性にばかり目が向いてしまいがちだけれど、背景に注目してみると、けっこういろんな情報があるものなんですね。
 写真であれば、偶然映ってしまう、ということもありえるのですが、絵画の場合は「これを描こう」という画家の意図があるからこそ、そこにそのパーツは存在しているのです。

 さて、『モナリザ』はその上半身で背景の中央部分を遮って、見る者に向かって微笑みながら「わたしの背後で風景がどう繋がっているのか、分かる?」と問いかけている。実際、彼女の右側と左側に展開する風景がチグハグで、両者が彼女の背後でどのように繋がっているものか、これまで誰も納得できるような説明をしたことがなかった。


 そう言われて、収録されている『モナリザ』を眺めてみると、たしかに人物の左右の背景がアンバランスというか、繋がっているように見えないのです。
 人物でその接合部は隠れているので、特殊な地形だと言い張ることも不可能ではないのでしょうが、なんだか不自然なんですよね、やっぱり。
 著者は、その不均衡の理由をダ・ヴィンチの世界観や「地形への興味とこだわり」なども含めて解説しています。


 ちなみに、『モナリザ』のモデルの正体についても、史料をもとに考察されているのですが、正直なところ、僕はそこまでモデル問題に興味はないので、ふーん、そういう考え方もあるのか……という感じでした。


 ダ・ヴィンチという人や『モナリザ』に強い興味があって、予備知識も豊富な人が「ひとつの説」として読むと刺激的な内容だと思うのですが、僕のような初心者には、けっこうハードルが高いなあ、と。
 それこそ、タモリさんなら、喜んで読むのではなかろうか。


 ダ・ヴィンチって、芸術家であるのと同時に、あるいはそれ以上に技術者・地質学者だったのかもしれないな、と考えさせられる新書でした。
 ただ、あまり初心者向きの内容ではないです。正直、僕にはハードルが高かった。

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