琥珀色の戯言

【読書感想】【映画感想】のブログです。2016年8月より、『はてなブログ』に移行しました。

【読書感想】アマゾンが描く2022年の世界 すべての業界を震撼させる「ベゾスの大戦略」 ☆☆☆


Kindle版もあります。

内容(「BOOK」データベースより)
小売り・流通に変革をもたらしてきたECの巨人・アマゾン。近年は、リアル店舗への進出にとどまらず、クラウド、宇宙事業、AI、ビッグデータなどの分野へも展開、米国ではアマゾンに顧客と利益を奪われることを意味する「アマゾンされる」という言葉が生まれるほどに、その勢いを増している。本書は、大学教授、上場企業の取締役、コンサルタントという3つの顔を持つ著者が、膨大な資料と独自のメソッドで、「アマゾンの大戦略」を読み解く一冊。


 「2022年」って、いま(2017年)から、わずか5年先なんですね。
 Amazonは世界をこんなに急激に変えてしまうのだろうか……と正直、半信半疑でもありました。
 通販だけじゃなくて、本もレンタルビデオもCDも、店に行かなくてもオンデマンドで手に入るようになった一方で、リアル店舗Amazonの影響で潰れるところがたくさんあり、現時点では、モノを各家庭に届けるのは流通業者の手が不可欠です。
 ヤマト運輸の「値上げ」も話題になりました。
 これに対しては、Amazonは今後、独自の流通・配送網をつくっていくのではないか、という憶測もあります。
 また、欧米や日本でネット通販市場を支配しているAmazonの「一人勝ち」かと思いきや、中国発の「アリババ」が、Amazonの牙城を崩そうとしているのです。
 中国の企業だし、いろいろと杜撰なんじゃない?とか思ってしまったのですが、この本を読んでみると、合理性や自社の利益を優先し、何かと他者や行政と衝突しがちなAmazonに比べて、さまざまなサービスを取り込み、「共存共栄」を目指しているようにみえるアリババは、大きな可能性があるようにも感じます。


 この本を読んでいて驚いたのは、通販の会社だと思い込んでいたAmazonで、現在、AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)の存在が大きくなっている、ということでした。

 アマゾンの地の利を語るうえで、いま最も重要なのはAWSです。AWSはテクノロジー企業としてのアマゾンに大変な競争優位性を生み出すとともに、収益面でもアマゾンを牽引するドル箱事業に成長しています。
 AWSはネット通販を支えるために多大な人、モノ、カネを投入して開発したクラウドコンピューティングの仕組みを社外に開放しビジネスとしたもの。アマゾンはクラウドコンピューティングにおいてもコストリーダーシップ戦略と差別化戦略を発揮し、今では世界のクラウド市場のシェアの3割を占めるに至っています。
 そして、図表12はアマゾンの売上や利益に占めるAWSの割合を示したものです。今や、AWS事業は全社売上の9%、営業利益では驚くべきことに74%をAWS事業が占めています。営業利益率も高く、アマゾン全体の利益率が3%であるのに対し、AWS事業の利益率は25%にも及んでいます。AWSが公開以来、60回以上も値下げを繰り返しているのはよく知られている話ですが、この利益率を見る限り、まだまだ値下げ余力はあると見るべきでしょう。
 よく「アマゾンは利益をため込まず、顧客に還元している」と語られますが、正確には「AWSであげた利益を他の事業に回している」という構造であることが、ここからよくわかります。


 Amazonはサイバーセキュリティの技術が高く、多くの企業からITシステムがAWSに移管されているそうです。自社開発より、アマゾンに外注したほうが低コストで安全だから、と。
 僕には無縁のサービスだったのでイメージできなかったのですが、利益の74%がAWS事業ということは、ここで儲けて、他の部署に投資をしている、ということなんでしょうね。

 アマゾンは「ビッグデータ」という言葉がこれほど普及するはるか以前から、ECサイトにおいて、購買利益から商品のリコメンデーションを行ない、サイト内の行動履歴やクリック率からサイト環境を改善するなど、ビッグデータを徹底的に活用してきました。「Data is King at Amazon」とは、アマゾンにかつて在籍したRonny Kohavi氏の言葉。アマゾンの本質はECサイトでも、システム会社でもなく、ビッグデータ企業であると言うことも可能でしょう。
 ビッグデータの集積装置としては、ECサイトキンドル、アマゾン・エコー、アマゾン・アレクサ、アマゾン・ゴー、ホールフーズなどがあります。これらはすべて、顧客に対するサービスそのものでありながら、ビッグデータの集積装置でもあるのです。


 AWSだけやっていたほうが儲かりそうな気もしますが、Amazonの場合、通販事業を通じて顧客のビッグデータを集めたり、セキュリティのノウハウを蓄積しているのです。
 通販ではあまり儲けなくてもよくなってしまったAmazonと価格競争をしても、勝てないですよね、それは。


 あと、アマゾンの「意識決定システム」については、こんなふうに紹介されていました。

 4つの秘訣のなかでも、ここではとくに高速の意思決定システムのルール1について解説しておきたいと思います。それは、このルールが、日本企業においてもスピード経営とそれを実現するための組織における権限委譲の秘訣になると思うからです。先に述べたように、ベゾスは「自分自身は賛成しないけれど、みんながそう決めていくのであれば、決めた以上は自分もしっかりコミットする」ことがあると言っています。
 それは、ルール1で規定されている「意思決定方法を2つに分類する、つまりは、意思決定には後戻りできるものと、できないものに分類する、そして後戻りできるものに関しては失敗する可能性も織り込みつつどんどん決定すればいいが、後戻りできないものは深く議論する」という内容から理解すべきなのです。
 つまり、「後戻りできる項目」については部下に権限委譲を進めて、「自分自身は賛成しないけれど、みんながそう決めていくのであれば、決めた以上は自分もしっかりコミットする」と言っているのです。ベゾスが「後戻りできない項目」についての意思決定に深く関与しているであろうことは容易に想像できるでしょう。「組織のなかでできるだけ現場に近いメンバーに意思決定を委ねたい、でもそれは後戻りできることに限定するよ」ということなのです。


 著者は、後戻りできるものとできないものを分けることの難しさについても言及しているのですが、ジェフ・ベゾスは、「大事なことは自分で決める」ということなんですよね、基本的には。
 

 ちなみに、アマゾンに対して、アメリカでの反応も好意的なものばかりではなく、労働環境の悪さや低賃金、たくさんの小売業者を閉店に追い込んでいること、一民間企業が政府以上の影響力を持つことへの危惧、利用者の個人情報を蓄積しているため、それが悪用されるのではないかという不安など、さまざまなネガティブな声もあるのです。
 アマゾンの「節税」のために、税収が減っている、という指摘もされています。


 現状のアマゾンは、外部から攻められて落城することはなさそうですが、内部崩壊を起こしてくる可能性はあるかもしれません。
 中国からの挑戦者・アリババと、その創業者のジャック・マーさんが、中国の若者から社会を良い方向に変えくれた企業とカリスマ経営者として尊敬されているのに対して、Amazonは、日本でも、大勢の人に利用されつつ、けっこう辛辣な意見を浴びせられているんですよね。


 これからのアマゾンは、どこへ向かうのか? 
 極論すれば、個人情報を提供してくれさえすれば、商品をタダでくれる通販サイト、みたいな感じになっていくのかもしれません。それも、けっこう近い将来に。


ジェフ・ベゾス 果てなき野望?アマゾンを創った無敵の奇才経営者

ジェフ・ベゾス 果てなき野望?アマゾンを創った無敵の奇才経営者

イーロン・マスク 未来を創る男

イーロン・マスク 未来を創る男

ワンクリック

ワンクリック

アクセスカウンター