琥珀色の戯言

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【読書感想】噂は噂 壇蜜日記4 ☆☆☆☆

噂は噂 壇蜜日記4 (文春文庫)

噂は噂 壇蜜日記4 (文春文庫)


Kindle版もあります。

噂は噂 壇蜜日記4 (文春文庫)

噂は噂 壇蜜日記4 (文春文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
くしゃみの止まらない猫のために空気清浄機を買い、「不条理の利用」を女子に説き、寿司屋の看板を見て「寿司良いなぁ」と涙し、男の優しさの先にある苦くて甘い「取り返しのつかない何か」をかじりたくなる…“壇蜜”の日常を瑞々しくも不穏な筆致で綴って大反響を呼んだシリーズ、これがまさかの読み納め!?書下ろし日記第四弾。


 壇蜜さんの日記は面白い。
 僕はもともと、いろんな人の日記を読むのが好きなのですが、壇蜜さんの日記は、いまも続いて、公開されているもののなかでは、白眉だと思います。


fujipon.hatenadiary.com


 僕はこの『壇蜜日記(1)』を読んで以来、壇蜜さんの文章のファンなのですが、日常生活の話が多くて、精神的に不安定な感じがしていた最初の頃の日記に比べて、この『4』は、壇蜜であることにそれなりに慣れてきて、余裕をもって自分自身を観察しているようにみえます。
 「つきあっている男」の話とかも書かれているのですが、なんというか、存在を隠してはいないけれど、のろけているという感じもしない、微妙な雰囲気なんですよ。
 でも、そういう人の存在は、壇蜜さんを落ち着かせているのだろうな。
 

 この日記を読んでいると、壇蜜さんの日常のところどころに、思わず付箋を貼りたくなるような文章を見つけて、けっこう得した気分になります。


 2016年9月4日の日記より。

 明日か明後日帰宅の予定だったが、思いの外撮影が早く進み、帰宅できることになった。新幹線乗り場から見える夕焼けが綺麗で、写真におさめることが勿体ないくらい立派だったので、何もせずただ黙って見ていた。誰かに恩着せがましく伝えようとするエネルギーは、ここでは何だか無駄に感じた。自動販売機でお茶を買って、もう一度夕焼けを見ておこうと乗り場の窓辺に目を向けると、すでに日は暮れていた。また明日が来る。嫌われものにも明日は来る。しんどくもあり、うれしくもある。


 途中まで読んでいて、「一瞬の美しさが失われてしまうことの寂しさ」を描いた文章なのかな、と思ったんですよ。
 でも、壇蜜さんは、その「夕焼けの消失」は、明日が来ることにつながっている、と書いたのです。
 ああ、そうだ。僕にも明日が来る。
 壇蜜さん、そんなに嫌われてないですよ、って言いたくなるのだけれど、そういうのは、誰かから慰められたところで、やっぱり、「しんどくもあり、うれしくもある」のだよなあ。
 

 この本で、2016年の夏から、2017年の秋までの壇蜜さんの仕事ぶりをみていると、芸能界で生きていくためには、自分の「商品価値」や、どういうふうに露出していくか、という戦略をつねに意識していかなくてはならないということが伝わってきます。
 役者としての仕事やナレーション、グラビア、そして、この本のような文章仕事など、壇蜜さんは多くの方面に才能を発揮しているのだけれど、どの方面でも、いろんなことを言われてしまうようです。

 周囲は皆出している。だからお前ももったいぶらずにさっさと乳首を出せよ……と言われても、過去のではダメだろうかとしか答えられない。なぜ出せないのか。今のTVや広告の仕事という新しい「現在進行形で裸になると色々と言われる勢力」が怖いからだ。見せたところで酷評はされるだろう。仮に見せたとしてもそれが転じて急に「イロモノは撤退しろ」とヌードになった自分を他者が責めるような流れになることも避けられない。ほとんど、仕事のため、生活のために見せないのだ。


 見せたほうがお金になるのではないか、と考えてしまうのだけれど、今の壇蜜さんの立場だと、「見せることのデメリットのほうが大きくなってしまった」ということなんですね。
 どこまで露出するか、というのも、簡単なことじゃないというか、どんどん見せればいい、というものでもないみたいです。


 壇蜜さんの日記を読んでいると、壇蜜であることのめんどくささと、壇蜜を演じている自分への興味が、齋藤支靜加(壇蜜さんの本名)のなかに入り混じっているのがわかります。

2016/9/10 晴れ
 

 朝から床の上で原稿を書く。見てるか。これが本当の枕営業だ。


 やっぱり、壇蜜さんの日記は面白い。



合本 壇蜜日記【文春e-Books】

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たべたいの(新潮新書)

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