琥珀色の戯言

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【読書感想】放送作家という生き方 ☆☆☆

放送作家という生き方 (イースト新書Q)

放送作家という生き方 (イースト新書Q)


Kindle版もあります。

内容(「BOOK」データベースより)
テレビ・ラジオ・ネット番組など、放送業界のあらゆる場面で裏方として活躍する放送作家。顔と名前の知られているごく一部のスター放送作家を除き、その実態は謎に包まれているのではないでしょうか。本書では、放送作家生活30年超のベテランが、企画書出しやテロップ作成などの具体的な仕事内容から、放送作家ならではの魅力、過酷なスケジュールの理由、恋愛事情、アイデアのつくり方、放送作家になるための心得まで、徹底紹介。


 「放送作家」とは、どんな仕事なのか?
 ずっとラジオ好きだった僕は、「ラジオの深夜放送で、芸能人パーソナリティの『相方』として聞き手になる人」というイメージを持っていました。
 元お笑い芸人で放送作家として成功している人の例も聞いたことがあって、けっこう表に出ることが多い、華やかな仕事、だと思い込んでいたのですよね。
 『炎の体育会TV』『ジャンクSPORTS』など、スポーツバラエティの名手として知られる著者は、テレビとラジオの放送作家の違いをこんなふうに述べています。

 番組から放送作家になるというパターンではラジオ番組のハガキ職人さんがネタを採用されているうちにスタジオに呼ばれるようになり……という話を聞きます。なぜ、あやふやな記述かというと、テレビの放送作家とラジオの放送作家は実はあまり接点がないからです。どちらも兼ねている方がごくたまにいて、その人をきっかけに交流することはありますが、基本的にはラジオの作家さんはラジオ番組を、テレビの放送作家はテレビ番組を……とはっきり分かれています。特にラジオの作家さんはひとつのラジオ局で何本も掛け持ちする専門職っぽいスタンスの方が多く、テレビの放送作家とは立ち位置もキャラもかなり違います。台本を書いたり、送られてきた投稿を選ぶなど同じような仕事もしていますが、本番中にラジオブースに入ってタレントさんの相手役を務めたり、時間管理をアシストしたりという特殊な任務もあります。テレビの現場以上に、より制作スタッフに近い立場のようです。


 同じ「放送作家」でも、テレビとラジオでは、かなり仕事の内容が異なるみたいです。
 著者は、テレビの放送作家の日常をこんなふうに紹介しているのです。

「テレビ業界の話なのに、派手な場面がほとんど出てこない……」
 華やかなイメージのあるテレビ業界への印象や、まがりなりにも”作家”である放送作家という言葉の響き。メディアに登場する有名放送作家の目覚ましい活躍ぶりなどから、もうちょっと華々しいイメージを抱いていた方が多いかもしれません。
 実はほとんどの放送作家はとても地味な日々を送っています。テレビ局や制作会社で行われる会議に出る、自宅ないしはカフェで台本や企画書を書く……実態はほぼどんな毎日です。制作スタッフとは密に顔を合わせますが、それ以外のテレビ関係者に会うことはほとんどありません。
 唯一、晴れ舞台に顔を出す機会ともいえるのがロケ現場やスタジ収録の立ち合い。とはいえ、そこでも出演者との直接的なカラミはほぼありません。主な仕事はスタジオの隅から収録の流れをチェックして何を扱うべきなのか、あるいは逆に何を短くすべきなのか……などを演出サイドに俯瞰の意見として伝えることです。必死に考えた上でロケをし、さらに何日もかかって編集してきた思い入れの強いディレクターとは違う目線で気になったことを進言する立場として現場にいることがほとんどです。


 著者の話を読んでいると、放送作家というのは、基本的に原稿書きと会議の繰り返し、というような生活をしているようです。
 芸能人と直接接する機会もあまりなく、著者も親密にしている芸能人はごく少人数なのだとか。
 「あまり社交術に長けたタイプじゃなくてもできる、数少ないテレビ関係の仕事」だという面もあるのだとか。
 面白いアイデアを出せて、それを文章にして人に伝える力があれば、内向的な人でもやっていける。
 もちろん、仕事をもらったり、会議でうまくやったりするためには、最低限の社交性は必要なんでしょうけど。
 夜中に突然の会議が行われたり、原稿の締切に追われたりすることが多く、睡眠時間は十分にとれないことが多いそうなので、寝ないとダメな人には向いていない仕事だそうです。
 こういうのって、けっこう職業選びで大事なことなんですよね。
 世の中の頭脳労働とされていることのなかでも、体力がないと続かないものはけっこうありますし。


 この本のなかでは、放送作家の収入についても、けっこう具体的な数字が書かれています。

 そして、肝心の1本あたりの構成料ですが……レギュラー番組は3万円から20万円程度。スペシャル番組は5万円から100万円まで……という感じでしょうか。1本20万円とか100万円とか聞くと、「割のいい仕事だなぁ」と思うかも知れませんが、これは長い作家生活の中でもごく稀なケース。特にスペシャル番組はそれくらいいただける番組は半年以上かけて担当するので、1か月に換算すると特にコストパフォーマンスのいい仕事というわけでもありません。レギュラー番組でも20万円もらえるのは企画書から立ち上げてチーフクラスになったゴールデン番組くらい。最近は制作費そのものが下がっているので、先ほど提示した額の平均にも届かないのが現状です。
 それでも10本以上のレギュラー番組を抱えるような売れっ子放送作家になれれば、1000万円を上回る年収を得ることは可能です。ただし、半年ごとに変動するリスクが常に付きまといますので、それを何年もキープできるのは限られたトップクラスのみ。
 最近は企画が採用されたら1万円……というような低予算番組もあると聞きます。これだと仮に毎週採用されたとしても月4万円程度。レギュラーを3本抱えていても年収は100万円ちょいということになります。
 恵まれれば1000万円オーバー、恵まれなければ100万円程度。しかも、半年ごとの改編のタイミングで収入ゼロのリスクもあり得る。それが放送作家の収入の実状です。


 時間に不規則で、常に締切に追われ、企画が採用されなければ仕事がないし、担当していた番組が急に打ち切られることもある。
 うまくいっているときでも、年収1000万円、というのは、リスクを考えると、けっして高収入ともいえない気がします。
 テレビの番組をつくる、という仕事に関われることに喜びを見いだせる人じゃないと、お金のためだけにやるには、そんなに旨味はなさそうです。

 
 あと、放送作家にも、それぞれ得意とするジャンルがあるのですが、こんな「プロ」もいるのです。

 クイズの世界にもプロ中のプロがいます。矢野了平さんはクイズ番組の構成には欠かせないクイズ名人。「高校生クイズ」「オールスター感謝祭」「ミラクル9」など、名だたるクイズ番組で活躍しています。クイズ作家さんでなによりも尊敬するのは解答者の答えを聞いて正解と不正解を一瞬で判断してピンポン(正解)か、ブー(不正解)かを押すスイッチを担当すること。一瞬の判断力はもちろん、微妙な言い回しで正解か否かを推考する知識量、プレッシャーに負けない強い平常心……本当に選ばれし者しかできない役割です。私も何度かクイズ番組に携わりましたが、一度もこのピンポンブーを担当したことがありません。正確には誰からも頼まれたことがありません。いい判断だと思います。


 僕はクイズが好きで、けっこうよく観るジャンルなのですが、問題のなかには、答えがひとつではなかったり、人名では「シーザー」と「カエサル」のように、同一人物でも呼び方が違う、ということもありますよね。
 もちろん、クイズをつくる側も、複数回答や固有名詞の言語による呼び方の違いは想定していて、準備もしているはずなのですが、それでも、真剣勝負で微妙な解答の正誤を即座に判定するのはすごく緊張するはずです。
 想定問答集があったとしても、解答が出るごとにそれを参照していては、テンポが悪くなりますし。
 そうか、あれは放送作家がやっているのか……


 みんなその職名は知っているけれど、具体的な仕事の内容はよくわからない「放送作家」。
 けっこう狭き門ではありますし、僕自身がこれから目指すのは無理ですが、こういう形でメディアに関わる仕事もあるのだな、という新たな発見がありました。


笑いのカイブツ

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