琥珀色の戯言

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【読書感想】生きる ☆☆☆

生きる

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Kindle版もあります。

生きる

生きる

内容紹介
生と死、愛と金ーー経験から凝縮された、優しい哲学。


"「自由になる」ってこういうことだったんだ !"ーー高橋源一郎


2014年、著書『自殺』で第30回講談社エッセイ賞を受賞した作家にして天才編集者・末井昭
18年3月には自著『素敵なダイナマイトスキャンダル』が映画化される。
1980年代には数々の伝説的雑誌を創刊し、ヒットメーカーとして羨望されることも多かったが、
その私生活は幼少期から、常に修羅場と一緒に暮らしているかのようだった。
そんな著者の激しいエピソードとそこから導かれた格言138をこの1冊に凝縮。
いま修羅場のドン底にいる人でもきっと乗り越えられるヒントが見つかるはず!


目次
第1章 自分は闇の中にいる(自殺、いじめ、表現への執着)
第2章 嘘の始まり(結婚、浮気、恋愛)
第3章 ギャンブルの川と世の支配者(借金、ギャンブル、お金)
第4章 悪魔が入ってこなくなった(聖書、離婚、愛)

 僕は『自殺』というエッセイ集を読んで以来、末井さんのことが気になり続けているのです。
 
fujipon.hatenadiary.com


 母親が他所の家の男とダイナマイト心中してしまったことすら、自分の「表現」として取り込んでしまった天才編集者・末井昭
 『写真時代』『パチンコ必勝ガイド』などの雑誌を大ヒットさせた一方で、私生活では相場にハマってすごい額の借金を作ったり、たくさんの女性と浮名を流し、ダブル不倫の末に現在の妻と再婚。でも、文章からうかがえる末井さんは、なんだかとても飄々としていてつかみどころがなくて、どうしてこの人がこんなにモテるんだろう、いや、こういう人だからこそ、人を惹き付けるフェロモンみたいなものが出ているのだろうか、とか考えてしまうんですよね。

 この本、末井さんの自伝『素敵なダイナマイトスキャンダル』(2018年3月17日公開)にあわせてつくられたもののようで、末井さんが自分の人生を象徴するような138個の短いエピソードについて語っています。
 読んでいて、芥川龍之介の『或阿呆の一生』を思い出してしまいました。
 

パチンコ台が「待ってたよ」とか、「もうすぐ出るよ」とか、話しかけて来るようになりました。


 パチンコは、ウツっぽい人がハマりやすいのではないかと思います。人と口をきかなくてもいいし、パチンコ店にいれば寂しくないし、それなりに刺激や充実感があります。僕も見事にハマり、暇さえあればパチンコを打つようになりました。
 そのうち、パチンコ台が話しかけて来るようになりました。女の人の声で「待ってたよ」とか、「もうすぐ出るよ」とか、いろんな声が聞こえて来ます。用事があってその台をやめないといけないときは、「もうすぐ出るのにもうやめるの?」と言ってるような気がしました。そういうときは、用事を済ませたら慌てて戻って来て、その台を打ちました。
 完全にパチンコ中毒になっていました。


 この「パチンコはウツっぽい人がハマりやすい」というのは、僕自身もハマっていた時期があるだけに、すごくよくわかります。僕の場合は、話しかけてくるようにはなりませんでしたが。


fujipon.hatenadiary.com


 末井さんという人は、その「多くの人が廃人になってしまうような依存」の淵みたいなところで、いつも踏みとどまって、その依存の対象を仕事に変えていたのです。
 編集者という仕事は、まさに「天職」だったのかもしれません。
 こうして「ひとりで打つもの」だったパチンコの情報を雑誌にした『パチンコ必勝ガイド』は、攻略法の掲載もあって大ヒットしました。
 お母さんのダイナマイト自殺にしても、ギャンブルへの依存にしても、それを「表現」にすることができたのが、末井さんの才能であり、幸運でもあったのでしょう。

『自殺』という本でも書きましたが、若いころの僕は母親のダイナマイト心中のことを人に話せないでいました。それが話せるようになったのは、デザインという曲がりなりにも表現に関わる仕事に就き、それから出版の仕事に就き、この人になら言ってもいいかなという人に出会えたからです。
 それからは、人がもう聞き飽きたと言っても、死んだ母親が草葉の陰で「昭ちゃん、もうやめて!」と言っても、喋り続け、書き続けて来ました。そのおかげで、『素敵なダイナマイトスキャンダル』(ちくま文庫)という本ができたし、それが映画にもなりました。
 自分の一番のコンプレックスであった母親の自殺が、僕の看板のようになったのです。それが一般論になるかどうかわかりませんが、自分のコンプレックスは人に晒し続けるほうが良いと思います。


 これに関しては、本当に「一般論になるかどうかわからない」としか言いようがないのですが、末井さんの生きざまをみていると、「ああ、人って、こんなふうにでも、生きられるのだな」と僕は少し安心するのです。真似しようとも思わないし、真似できるわけじゃないのだけれど、こういう人が世の中にいる、というだけで、なんだかちょっと救われるような気がするんですよ。
 客観的にみれば、「プライベートでは、ろくでもないことばかりしている人」なのかもしれないけれど、不思議なものですね。
 末井さんは、そこで開き直っているわけでもなく、人生に悩みを抱えつづけていて、キリスト教に触れ、『イエスの方舟』の千石イエスさんに教えを求めてもいます。

 千石さんは気さくな方で、聖書的見地からどんな質問にも答えてくれました。『MABO』のインタビューが終わったあと、個人的な質問として「妻に内緒で3人の女性と付き合っているのですが、男は何人もの女を同時に愛せるものでしょうか?」と聞くと、『それは30人が限界でしょう』とおっしゃいました。聖書に反することですからダメに決まっているのですが、僕の気持ちを楽にするためそう言ってくれたのだと思いました。


 聞くほうも、答えるほうもすごいな……というのが僕の率直な感想なのですが、末井さんという人は、なんだかこういうのも許せてしまうような感じがするんですよね。自分の配偶者がその3人のうちの1人だったら無理だろうけど。


素敵なダイナマイトスキャンダル (ちくま文庫)

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