琥珀色の戯言

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【読書感想】雑談藝 ☆☆☆☆

雑談藝

雑談藝


Kindle版もあります。

内容紹介
仏像を訪ねる『見仏記』シリーズ、武道館公演や映画化もされた大人気トークイベント『ザ・スライドショー』、展覧会の「仏像大使」活動などでおなじみのいとうせいこう&みうらじゅん
旅に出るときの新幹線の車中でもずーっとしゃべりっぱなしの仲良し名コンビが、2016年1月から2017年5月まで放送していたラジオ番組「いとうせいこう×みうらじゅん ザツダン!」(文化放送)の中から、とくに面白かった雑談を選り抜いて書籍化。


乾電池の「単」とは何なのか? ♂♀マークの意味するものは? 新幹線で時刻通りに通過されてしまう三河安城駅って? お風呂でメガネは外すのか? 手にメモを取るのにふさわしい内容とは? 新婚さんにふさわしい間取りは? みうらじゅんの美髪の秘密とは? 三途の川は何級河川なのか? 理想の葬式とは? 死ぬときに言いたい最期の言葉は?……などなど、くだらなくて笑ってしまう雑談から「なるほど!」と感心する雑談まで、怒涛の74本を収録。


笑いの中に真理あり! 読めば身につく雑談力!


雑談上手になれる「雑談藝の極意十箇条」や、新幹線車内で隠しどりした「本気雑談」も収録。転がり続けるおしゃべりは誰にも止められない! ザッツ・トーキング・ロール!


 僕もみうらじゅんさんといとうせいこうさんの『ザ・スライドショー』のステージを観にいったことがあるのです。
 有名人同士だし、二人で『見仏記』などたくさんの仕事をされていることもあり、最初は気の合う友人でも、「ビジネス仲良し」化していくのではないいたのですか、と思っていたのですが、みうらさんといとうさんは「別格」みたいです。
 

 いとうせいこうさんの「はじめに」より。

 以下は『ザツダン!』というラジオ番組でなんの打ち合わせもなくひたすらみうらさんと雑談してきたことを編集してもらった会話の数々なのですが、ほんとになんの役にも立たない素早い言葉の応酬で、何度も自分で笑ってしまいました。お先にすいません。
 みうらさんとはかれこれ四半世紀、会うといきなり雑談、二人で対談の仕事だったりすればそのまま対談、終わると雑談ーーとしゃべり続けてまいりました。
『見仏記』で仏像を見る二人旅などしていても、朝起きたらそのまましゃべり始め、お寺について仏教について語り、そのうちまた雑談になだれ込み、昼食をはさんでコソコソ話、移動のための電車に乗ってる間も必ず何かを話していて、そのまままた別のお寺、そして旅館に着いても寝るまで雑談です。
 親ともこんなに話したことはないし、ほとんど夫婦を超えているんじゃないかという密談ぶりで、それも必ずどこかで相手を笑わせようとしていますから、自然に雑談筋みたいなものが鍛錬されてしまったようです。


 漫才コンビでは、長年一緒にやっていると、ステージの上以外では、相方と別行動、という人が多いと聞きます。
 僕も年齢を重ねるにつれ、仲の良し悪しはさておき、他人とずっと一緒にいる、ましてやしゃべり続けるというのは、かなりキツイことだということがわかってきました。
 まあ、もともとそんなにおしゃべりな方ではないのだけれど。
 にもかかわらず、還暦もみえてきた二人は、ずっと一緒にしゃべる仕事をして、仕事が終わっても雑談を続けている。
 仲が良い、というだけではなく、自分の雑談力を磨いてくれる練習パートナー、という感じもします。

みうらじゅん僕、街でシンス何年って書いてある看板の写真を撮って集めているんだけど。そのために望遠のカメラまで買ってね。今のところ一番古いのがSince 1624なんだ。たぶん三代目あたりが「創業」をやめて「シンス」を導入したんじゃないかと思う

いとうせいこうメールがきてるよ。柳沢幸宏さん、三重県からね。「since 1804を発見しました」だって! 文化元年だよ。


みうら:この写真、車中から撮ってるね。


いとう:桑名市にある味噌・醤油メーカーの工場の壁です。電車内から撮りました」だって。そしてもう一通。ラジオネーム「ここでいいのかわからない」さん。「旅先の土産屋で買ったおかしなシンスをお送りします。『諏訪御柱2016 KING OF FESTIVAL THE ONBASHIRA since 1356』」。相当古いよ。


みうら:ええー!?


いとう:お菓子のパッケージだね。お菓子ンスだ。


みうら:お菓子ンス、出たかぁ(笑)。これは御柱祭が自ら言ってきてるの?


いとう:いや、御柱祭を褒め称えた人が言ってるだけだね。でも今のところ最古シンスですね。


 ああ、いいところ突いてくるなあ!
 ちなみにこの本のなかには、みうらさんが撮影したものやリスナーから送られてきた証拠写真も掲載されています。
 僕もあの「since 〇〇〇〇」って書いてあるのが、けっこう気になっていたんですよね。日本人が経営している、日本の店なのに! この「シンス店」って、そんなに昔からやっているわけでもないし、むしろ、よく今まで続けてこられたな、と感じるような店も少なくない。
 アピールしている側には「プライド」みたいなものがあるんでしょうけど……それとも、なんとなくカッコいいかな、と思って表示してみただけなのだろうか。


 このあと、「いまより未来の暦が表記された『先取りシンス』なんて存在していたら驚きだね」という話をしていたら、実際に「SINCE 2020」と書かれた野球チームのユニフォームの写真が送られてきています。
 このチームの名前が「Retired」で、その下に「SINCE 2020」と書いてあるので、「引退予告」みたいなものなのでしょうか……
 まさに「みうらじゅんさんのフィールドワーク炸裂」だよなあ。僕もこういうの、大好きです。


 クレーンゲーム(UFOキャッチャー)に関するこんな話もありました。

みうら:昔は300円くらいで落ちなきゃやめてたのよ。でも、そんな気持ちじゃダメだと思って。落とすんだって気持ちが相手に通じるまでは湯水のごとく傘を使わなきゃね。一時期、生きた伊勢海老の入った水槽みたいなUFOキャッチャーがあったの知らない? 生きた伊勢海老がバシャバシャ入ってるんだよ。それに安齋(肇)さんが挑戦したとき、じーっと見つめて「海老は後ずさりする」って真理を見つけたんだよね。それで安齋さんが海老の後ずさりを予想して待ち構えて、とうとう取ったんだよ。穴から伊勢海老が出てきてバチャバチャバチャーって。生きてるから、捕まえるのがUFOキャッチャーよりも大変で(笑)。


いとう:痛いよ。ヒゲで手を怪我するよ。


みうら:結局店の人に捕まえてもらって、ビニールに入れて持って帰ってたよ。たぶん食べたんじゃないかな。


いとう:料理するのも一苦労だよ。


みうら:小学生のとき、お歳暮でおがくずの箱に入った生きた伊勢海老が送られてきたことがあってさ。


いとう:あのおがくずって何なの?


みうら:おがくずに包まれると、伊勢海老側も「どっかいいとこに連れてってもらえるんじゃねえかな」って思うんじゃない?


いとう:安心感が生まれるのかもね。


 僕もあの「伊勢海老キャッチャー」、見たことはあるのですが、「こんなの話題作りのために設置してるんだろ、取れるわけないし、万が一伊勢海老が取れたら困るよ!」と思っていました。
 本当に取れるのか……でも、取ったあとも大変、と。
 子供時代に同じように伊勢海老がおがくずに包まれて送られてきて、家中が騒然としたことも思い出します。
 うわー!まだ動いてる!
 結構値が張るものでしょうけど、一般家庭で、いきなり伊勢海老料理するのは、かなりハードルが高いです……
 高価なのはわかっているだけに、贈られた側としては、なんとかしなきゃ、というプレッシャーもありますし。


 「『持ち込み』の話」という回での、みうらさんといとうさんのやりとりも印象的でした。

みうら:持ち込みに通ってたとき、当時の『ガロ』の編集長が「こんなのあるよ、変でしょ?」って、引き出しから漫画を出して見せてくれたことがあって。それが泉昌之久住昌之+和泉晴紀)の「夜行」ってデビュー作でさ。ダンディな男が弁当のおかずの食べる順番を必死に考えるっていう漫画で、今の久住の『孤独のグルメ』の原石は、そのときからブレずにあったんだよ。


いとう:俺もさ『ノーライフキング』って小説を急に書いてトントン拍子で売れたように思われてるけど、あれ、1年間出版社で寝かせられてて、出なかったんだよ。ゲームの話だったから、当時は早すぎちゃって編集部に理解してもらえなくて。


みうら:へえー。


いとう:当時、中森明夫くんとかが原稿の段階で読んで「面白い」って言ってくれたりしてたんだけど、それでも出なくて1年後にやっと出たの。でも1年遅れたおかげで「ドラクエ」とかのブームが来てて、みんなが理解してくれたんだよね。


みうら:ようやく時代が追いついてきたってやつね。


いとう:僕らの作ったものがどうだったかっていうのは別にして、「人が認めてくれない」って悩んでる人がいるとしたら、俺たちだってそうだったんだよと伝えてあげたいね。


みうら:ドラえもんみたいに、引き出しの時代があってこそだよね。


 どんな作品でも、万人が「面白い」と言ってくれるわけではないし、世に出るタイミングによって、理解されないこともある。
 こういう話を読むと、編集者という「他者」の存在って大きいのだな、と思い知らされます。
 もちろん、編集者の判断が誤っていて、旬を逃してしまったり、二番煎じのようになってしまった作品というのもあるのでしょうけど。


 ちょっとアカデミックな香りがして、バカバカしくて、なんとなくためになる話もある。
 まさに「雑談のフルコース」という一冊です。
 これ、番組で実際に喋っているのを聴いてみたいなあ。


ザ・スライドショー13 「みうらさん、体育館かよ! 」 [DVD]

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