琥珀色の戯言

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【読書感想】ラプラスの魔女 ☆☆☆

ラプラスの魔女 (角川文庫)

ラプラスの魔女 (角川文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
ある地方の温泉地で硫化水素中毒による死亡事故が発生した。地球化学の研究者・青江が警察の依頼で事故現場に赴くと若い女の姿があった。彼女はひとりの青年の行方を追っているようだった。2か月後、遠く離れた別の温泉地でも同じような中毒事故が起こる。ふたりの被害者に共通点はあるのか。調査のため青江が現地を訪れると、またも例の彼女がそこにいた。困惑する青江の前で、彼女は次々と不思議な“力”を発揮し始める。


 文庫で500ページ近くのけっこう長い作品なのですが、読み終えて僕が感じたのは、「ああ、東野圭吾さんって、ネットとかブログが大嫌いなんだな」ということでした。
 いやまあ、言いたいことはわからなくもないし、電子書籍否定派、自炊(紙の本をスキャンしてデジタル化すること)反対派の代表として、けっこうネットで悪口を書かれてきてもいるので、致し方ないところはあるとは思うんですけどね。
 ネットに親しんできた僕にとっては、「なんかベタなネットヘイト小説」であり、後半はずっと作者に説教されているような感じでした。
 まあ、主人公たちも大概迷惑な人たちなんですけどね。『仮面ライダー』かよ……


 率直に言うと、前半は冗長だし、中盤から後半は飽きてしまっていたし、登場人物も意味ありげに登場してきて、都合よく駒の役割だけさせられて退場、トリックも「理系」というよりは、1960年代の子供向けSFみたいというか、主人公たちの、こんな設定って、チート(ズル)だろ……としか言いようがなくて、困ってしまいました。
 こんなことができるようにしてしまったら、「なんでもあり」です。


 読んでいて、「古いよこれ……」って言いたくなったんですよ本当に。
 東野圭吾さんは、『ガリレオ』シリーズなどで、「科学的なトリック」「理系トリック」を駆使して一世を風靡したのだけれど(というか、売れているという点では、いまでも独走している作家なのですが)、さすがにこれは「科学」というより「ズル」だとしか思えなかったのです。
 ストーリーを書くとネタバレになってしまうので、なんか悪口ばっかり言っているみたいになってますが、読めばわかってもらえると思う。でも、とにかく読んでみて、とお薦めできるような作品じゃない。


 東野さんは、本人としては「ミステリの先頭集団」に立って、独自のアイディアでずっと引っ張っているつもりが、いつのまにか、同じような作品を大量生産する、西村京太郎さんみたいな存在になりつつあるのではなかろうか。
 たぶん、『ガリレオ』の短編をちゃんと調べて書くよりも、こういう超常小説みたいなのを書いているほうがラクなんだろうなあ。


 それでも、詠みやすさはやっぱり素晴らしいし、登場人物も「いかにも広瀬すずさんが演じそうな感じ」で、それなりにキャラクターが立っている。
 逆に言えば、小説を読んでいる時点で、「ああ、こんなふうに映像化されるんだろうな」というのが思い浮かべられる作品なんですよ。
 こんなの、どうやって映画にするんだろう?あるいは、役者はどう演じるんだろう?というような「期待と不安」が、『容疑者Xの献身』や『白夜行』にはあったのだけれど、この『ラプラスの魔女』は、ものすごいことが起こっているはずなのに、さらっと流し読みできてしまう。
 流し読みしているつもりでも「長っ!」って言いたくなるのですが。
 

 『ラプラスの魔女』っていうタイトル自体が、昔、『ラプラスの魔』というマイコンゲームを体験してきた僕にとっては、ネタバレみたいなものですしね。


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 映画もあまり評判が良くないみたいで、櫻井翔さんが「学芸会みたい」と批判されているという記事も読みましたが、原作がこれで、三池崇史監督となると、そういう映画にしかならないよなあ、と同情してしまいます。原作が学芸会とか学生の自主制作映画の脚本っぽいし。


 そう言いつつも、500ページ近くをなんとか読み切ってしまえたので、箸にも棒にもかからない、というわけではないのでしょうけど、正直、早く読み終わらないかなあ、とずっと思いながらページをめくっておりました。
 「こういう作品」があっても良いのかもしれないけれど、ちょっと期待値が高すぎたのかなあ……


容疑者Xの献身 (文春文庫)

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白夜行 (集英社文庫)

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