琥珀色の戯言

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【読書感想】コンビニ外国人 ☆☆☆☆


Kindle版もあります。

コンビニ外国人(新潮新書)

コンビニ外国人(新潮新書)

内容(「BOOK」データベースより)
全国の大手コンビニで働く外国人店員はすでに四万人超。実にスタッフ二十人に一人の割合だ。ある者は東大に通いながら、ある者は八人で共同生活をしながら―彼らはなぜ来日し、何を夢見るのか?「移民不可」にもかかわらず、世界第五位の「外国人労働者流入国」に日本がなったカラクリとは?日本語学校の危険な闇とは?丹念な取材で知られざる隣人たちの切ない現実と向き合った入魂のルポルタージュ


 そういえば、僕が生活している九州の地方都市でも、コンビニで外国人の店員を見かけることが増えたなあ、と、この1年くらい思っていたのです。
 東京では、コンビニで働いているのが外国人ばかり、と聞いていたのですが、人口10万人もいない、こんな地方の街にも、その波が押し寄せてきたのか……と感じます。

 東京二十三区内の深夜帯に限って言えば、実感としては6~7割程度の店舗で外国人が働いている。昼間の時間帯でもスタッフが全員外国人というケースも珍しくない。名札を見るだけでも、国際色豊かなことがわかる。
 しかも、この傾向はいま急速に全国に広がりつつある。大阪、神戸、名古屋の栄、福岡の中州・天神といった繁華街のコンビニでは、すでに外国人スタッフは珍しい存在ではなくなっているし、今回取材で巡った沖縄でも実に多くの外国人がアルバイトとして働いていた。
 全国のコンビニで働く外国人は大手三社だけで2017年に4万人を超えた。全国平均で見るとスタッフ20人のうち1人は外国人という数字である。
 こうした状況が広がる背景には、コンビニ業界が抱える深刻な問題がある。
 人手不足である。


 僕の居住地での実感としては、5人に1人くらいは外国人の店員なんですよね。
 近くに学校が多いことも影響しているのだろうか。
 ちなみに、ローソンは、コンビニ他社に先駆けて、すでに海外に専用の研修施設を作っているそうです。

 次に、また別の数字を取り上げてみよう。
 247万1458人――。
 これは、現在「日本に住むすべての外国人」の数だ。入国管理局が2017年6月末時点で集計した「在留外国人」の数で、外国人労働者の数と同じく、統計を取りはじめてから過去最高の数値となっている。
 この数には、コンビニで働いている留学生はもちろん、永住者や技能実習生など、入国の目的や動機の如何は問わず、中長期にわたり日本で暮らしている外国籍の人たちが含まれている。

 とくにこの数年は増加率も高く、2015年末から2016年末にかけては6.7%増と、伸び率も過去最高を記録した。

 韓国・朝鮮籍の人たちが徐々に減っている一方、この数年で急増しているのが「ベトナム」(約23万人)、「ネパール」(約7.4万人)といった国や地域の人たちだ。ベトナム人とネパール人に関しては、この3年でそれぞれほぼ倍増という劇的な伸びを示している。
 現地では日本語を学ぶことがブームになっているのだという。


 日本は移民の受け入れが少ない、というのはよく話題になるのですが、日本で働いている外国人労働者は急速に増えているのです。
 ひとくちに「外国人」といっても、その出身国の内訳も変わってきています。
 一時期、偽造テレホンカードなどであまり良くないイメージを持たれていたイラン人は、現在はだいぶ減ってしまったそうです。


 著者は、慢性的な人手不足が続いているコンビニ業界で、その打開策のひとつとして、外国人技能実習制度の新たな対象職種に「コンビニ」が加わる可能性がある、と紹介しています。
 ただ、この技能実習制度というのは、現状、かなり問題があると言われているのです。

 現在、全国には約25万人の外国人技能実習生がいる。
 彼らのほとんどは単純労働者だ。住居(寮)と仕事場を往復する毎日で、労働環境はいわば閉鎖的な空間と言える。コンビニや居酒屋でアルバイトをしている留学生とは違って、就業中に多くの日本人と関わることもなく、働く様子が世間の目に触れることもない。
 その過酷な実態が新聞や雑誌で取り上げられることも多い。
 長年にわたって外国人の労働問題なとを取材しているジャーナリスト・出井康博氏の『ルポ・ニッポン絶望工場』(講談社+α新書)などでも詳しく紹介されているので本書では割愛するが、出井氏のルポでは、ホタテの殻剥き工場や宅配便の仕分け現場、新聞配達など、さまざまな職種で働く実習生の様子がリアルに描かれている。
 ブローカーや送り出し機関に半分騙されるような形で多額な借金を背負って日本にやってきたのに、搾取されるばかりのまさに絶望的な環境で働かされてきた実習生も少なくない。


 もちろん、技能実習制度を利用している経営者が、すべて酷いことをしているわけではなくて、良心的な経営者もたくさんいるのですけどね。

 茨城県は実習生の数が多いだけでなく、ここ数年は毎年300人以上の失踪者を出しており、近年は立て続けに全国ワースト1位、2位を記録。失踪率は全国平均の1.7%を大きく超えて4%以上になることも珍しくない。
 失踪した実習生はどこへいくのだろう。
 入国管理局によると、2016年に茨城県内で不法就労が発覚した外国人は2038人にものぼるという。こうした外国人は入管に収容されてほとんどの場合は母国に送還されることになるが、入管に捕まる前に犯罪グループに合流したり、最悪の場合、失踪後に何らかの犯罪に巻き込まれて死に至るケースさえある。


 諸外国での外国人労働者の失踪率を調べてみても信頼できそうなデータを見つけることはできなかったのですが、この「失踪率4%以上」というのは、かなり高い割合だと感じます。

 法務省の報告によると、失踪する実習生の数は年々増加している。2011年に1534人だったものが2015年からは3年連続で毎年5000人以上が失踪している。
 今回の法改正によってそれが改善されるかどうかは、2018年以降の結果を見ていかなければならないが、もし「コンビニ」が技能実習制度に適用された場合、どうなるのだろう。
「コンビニ」はほかの技能実習制度の職種と違ってレジを扱う。当然、現金だけでなく、電子マネーやクレジットカードを扱うことになる。はたして全国平均で1.7%、つまり50人から60人に1人が失踪してしまうような制度に則って運営していくことができるのだろうか。


 この「技能実習制度」は、「現代の奴隷制度」なんていう人もいるくらい、問題が多い制度なんですよね。
 果たして、コンビニ業界は、この制度を良心的に利用することができるのだろうか……


 日本語ブームが起こっている国では、悪質な「留学ビジネス」が横行していることも指摘されています。

 まず、「自分の国を出て海外で勉強したい」「働きたい」と考えている若者が世界中に大勢いる。裕福な環境にある人もいれば、そうでない人もいる。
 どこかに僕/わたしが行ける国はないか……。
 調べてみると、日本は政府が「留学生三十万人計画」を推していて、アルバイトをしながら勉強ができるらしい。留学資金は少し足りないが、街の日本語学校やブローカーに頼めばなんとかしてくれるようだ。
 一方、日本にある日本語学校も学生を求めている。しかし、自校のホームページで宣伝するだけでは生徒を集めるにも限度がある。現地の日本語学校やブローカーと組んで生徒を集めたほうが効率的だ。
 こうして何本ものパイプができ、ヒトとカネの循環がはじまる。
 現地の日本語学校やブローカーは、留学希望者から仲介手数料を取り、日本の日本語学校からも手数料を受け取る。
「いま日本には7万人以上のネパール人がいますが、ネパールでは一時期、留学希望者を一人日本へ送るごとに20万円が手元に入ったそうです。いまではだいぶ値崩れして、一人当たり3万円とか、高くても7万円くらいが相場だと言っていました。でも、おおざっぱに5万円で計算しても50人送り出せばそれだけで250万円ですよね。仮に年2回送り出せば500万円です。ネパールは公務員の月収がだいたい3万円なので、留学ビジネスで一山当てようと新規参入組も後を絶たない感じでした」
 留学ビジネスの裏側にはこうした人買いビジネスのような側面がある。
 しかし、これはネパールに限った話ではないだろう。いま日本で留学生が増えている国々でもおそらく似たような状況になっているはずだ。


 借金を負わせて日本に送り出し、生徒100人に日本語教師が1人もいないような「日本語学校」に籍を置かせて、きつい仕事を安い給料でやらせる、という悪質な留学ビジネスも横行しているのです。
 著者が留学生たちに聞いた話では「本当に勉強したい優秀な学生はアメリカに留学することが多い」そうですし。あるブローカーは、今後、東京オリンピックが終わって、日本の景気が悪化していけば、日本以外の国への留学を選ぶ人も多くなるだろうと発言していました。
 雇う側からすれば、「とにかく人手不足なので、どんな経緯でもいいから、(とくにサービス業や単純労働で)働いてくれる人がほしい」という現状でもあるのです。


 「移民」は少ないけれど、イメージ以上に、「外国人労働者」は増えてきているのです。
 これから人口が減り続けている日本としては、これはもう、「見て見ぬふり」はできない問題なのです。
「よりお互いのメリットが大きいような付き合いかた」をつくりあげていかないと、「こっちが受け入れると言っても、相手から断られる国」になりかねません。
 正直、いまの日本でも、こんなに「働きたい」という外国人がいるのだな、と少し驚いてもいるのですけど。


コンビニ店長の残酷日記(小学館新書)

コンビニ店長の残酷日記(小学館新書)

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