琥珀色の戯言

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【読書感想】BOOK BAR: お好みの本、あります。 ☆☆☆☆

BOOK BAR: お好みの本、あります。

BOOK BAR: お好みの本、あります。

内容紹介
今までにない本との出会いが見つかる!
女優・杏と旅人・大倉眞一郎。2人が紹介してきた1000冊あまりの本から厳選した50冊を紹介。小説、ノンフィクション、絵本、マンガ……。面白い本はベストセラーだけじゃない! ユニークな魅力たっぷりのセレクトに、思わず読んでみたくなる。
10年続くJ‐WAVEの大人気ラジオ番組「BOOK BAR」が待望の書籍化。


 こんなラジオ番組があったんですね。
 しかも、10年も続いていたのか……
 僕が住んでいる地域では聴けないのが残念なのですが(ネットラジオで聴くことは可能なのだろうか?)杏さん、10年前から大倉さんと二人でこの番組のパーソナリティを務めておられるそうです。


81.3 FM J-WAVE : BOOK BAR



 これまで番組内で紹介してきた1000冊をこえる本のうち、50冊と、その本に関する番組での二人のやりとりが紹介されているのですが、いわゆる「書評」というよりは、読書体験をきっかけに、二人がそれぞれ考えたことや日常の話など、けっこう自由に語り合っている感じなんですよね。
 なかには「これ、あんまり本の話してないのでは……」と思うような回もあったり、杏さんが「歴女」として新選組への思い入れを熱く語る回があったりもするのです。
 漫画『乙嫁語り』から、『葉隠』、『秘島図鑑』など、採りあげられている本のジャンルも年代もさまざまです。
 「歴女(歴史好きの女性)」として知られている杏さんが、佐藤憲一さんの『伊達政宗の手紙』を紹介している回より。

杏:大倉さんは、伊達政宗のイメージってどうですか?


大倉眞一郎:あんまりイメージはないなあ、仙台の人?


杏:実は、もともとは山形の人なんです。領地が替わって仙台になり、最後は完全に仙台の人となりました。伊達政宗は、20年遅く生まれてきた英雄と言われます。70年の生涯の半々を戦国時代と江戸時代とにまたがって過ごしました。戦国時代に覇者の争いに参加するには若すぎたけれども、破天荒なエピソードや、強い個性により、現在に至るまで広く人気があります。彼はやんちゃだったり、型破りだったりと、いわゆる戦国武将というイメージが強いかと思うんですが、実は誰よりも手紙を残した人なんです。


大倉:みんな自分で書いたんですか?


杏:はい、その数、優に千通。当時は右筆という書記のような役割の人がいたんです。多くの武士は口述筆記で手紙を書いたので、書きあがったものをチェックして出すのが主流でした。しかし、伊達政宗は自筆だけでも千何百通、右筆の手紙も含めると何千通にもなるくらい、手紙を書いた人なんです。当時、密書などは読んだ時点でびりびり破いたり燃やしたりと処分します。残っている手紙だけでこんなにあるのは政宗だけです。息子に注意する手紙なども残っていて、それも「手紙は自分で書け、たとえ下手でも書くのが一番の練習なんだから。ちなみにこの手紙の返事も自分で書きなさい」というような。すごく家族思いなところだったり、家来に対する愛情だったり、ユーモアがあふれている部分だったりが浮き彫りになっています。


 伊達政宗には、そんな面があったんですね。
 そういえば、僕も政宗直筆の手紙を、書の展覧会で見た記憶があります。
 筆まめな人、といえば好感度が高いのですが、身内にとっては、「しょっちゅうLINEでメッセージを送ってくる、めんどくさい人」だったのかもしれません。


 また、『熊 人類との「共存」の歴史』(ベルント・ブルンナー著:白水社)の回では、こんな話が出てきます。

杏:全世界的に熊を認めていて、人間が変わってしまった姿だったり、すごく近い隣人だという考え方があるのはとても不思議ですよね。


大倉:サーカスは虐待ではないの?


杏:今はないのかもしれないんですけど、本で紹介されていたスモルゲンという町には「熊大学」というのがあるらしいんですね。熊たちが卒業試験をちゃんと受けて、世界各地に派遣されるんです。つまり芸を仕込まれてサーカスとかに運ばれていくんです。芸の仕込み方についても書いてあります。たとえば自転車に乗る芸は、ペダルをこぐ動きを覚えさせるのに、ペダルに熊の足をかけたら、くすぐるんですって。片方の足が上がって、ペダルが回りはじめたら、また下に来た足をくすぐる。その繰り返しで、しまいにはちゃんとこげるようになるそうです。


大倉:本当かなー!


杏:ダンスを教えるときは、音楽をかけながら熱い鉄板の上に乗せる。そうすると、けんけんするようになる。繰り返し行うと、だんだん熱い鉄板がなくても音楽をかけただけで踊るようになるのだそうです。現代のサーカスはまた別だと思うのですが、当時のその賛否を、両方の視点から書いています。昔からあるサーカスというのをなくしていいものだろうか、でも動物愛護的な視点からはどうなのか……というような、フラットな視点で読み解かれた熊が盛りだくさんです。


 熊を「人間に近い動物」と考えている地域が、世界各地にあるそうなのです。
 その熊と人間の関わりの歴史について書かれた本の紹介なのですが、このサーカスで熊に芸を仕込む方法を読んで、僕も「本当かなー!」って思いました。なんだか村上春樹の小説に出てきそうなエピソードだ……考えてみると、こういう方法以外に、「熊に芸をさせる方法」というのは思いつかないのですが……説得しても、聞いてくれそうにないし。

大倉:これまで紹介した本のなかでも、特に紹介しにくい本を持ってまいりました。中身については一切言えないという、『わたしを離さないで』。”Never Let Me Go”という原題で、2005年に英語で出版され、世界中で大ベストセラーになりました。著者は元日本国籍カズオ・イシグロさん。5歳まで長崎にいて、両親と一緒にイギリスに渡って、今はもう英国籍を取ってらっしゃる方です。日本語はもう、ほとんどお話しにならない。著作もすべて英語で書かれています。まず言っておきましょう。この本は「小説好きの方のための小説」です。同世代の女性に「この本読んだほうがいいよ、ちょっと泣いた」と紹介されて読みました。先日も、アートパフォーマンスで知り合ったイギリス人の女性が、もうわんわん泣きながら読んだって。ちなみに僕は泣きませんでした。泣きませんでしたが、心が荒野になったような、あまりの空虚感の中に、ぽんと置かれたような、そんな気分になる本ですね。


 「特に紹介しにくい本」を、どんなふうに番組で紹介するのか?
 これはなかなか難しい問題のように思います。
 「あらすじ」ばかりでは「そんなのわかってるよ」と言いたくなるし、読む前にネタバレをされるのも困る。
 「最後にすごいどんでん返しが!」という宣伝文句はよく見かけるのですが、そういう予備知識があるだけで、観ていても「どうせこのままじゃ終わらないんだろう」と、身構えてしまうのです。そうなると、せっかくの「どんでん返し」も、「ああ、こんな感じなんだ」で終わってしまう。
 とはいえ、何らかの興味を引くポイントを提示しないと、相手も「読んでみよう」「観てみよう」とは思わない。
 そう考えると、続編ものばかりになるのも、有名人が本のオビのコメントに起用されるのもわかるのです。
 この大倉さんの紹介も、内容ではなくて、「読んだ人の反応を積み重ねることによって、興味を持ってもらおうとしている」のです。
 カズオ・イシグロさんがノーベル文学賞を受賞し、『わたしを離さないで』を原案としたテレビドラマが日本でも綾瀬はるかさん主演で放送されたこともあり、今となっては多くの人に知られた作品なのですが、2010年4月の時点では、こんなふうに語られていたんですね。


 「濃い書評」ではないけれど、「いつもとちょっと違う本を手にとってみたい、それも、あんまり難しくないもの」という人や、杏さん、大倉さん、この番組のリスナーにはオススメできる本だと思います。もちろん、ラジオで番組を聴くのがいちばん良いのでしょうけど。


fujipon.hatenadiary.com

杏の気分ほろほろ

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伊達政宗の手紙 (洋泉社MC新書)

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熊: 人類との「共存」の歴史

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