琥珀色の戯言

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【読書感想】ダントツ企業 「超高収益」を生む、7つの物語 ☆☆☆☆

ダントツ企業―「超高収益」を生む、7つの物語 (NHK出版新書 544)

ダントツ企業―「超高収益」を生む、7つの物語 (NHK出版新書 544)


Kindle版もあります。

内容紹介
ニッポンの底力! あの企業が儲かる理由


セブン銀行の収益率がセブン─イレブンの40倍なのはなぜか? 長野の中央タクシーはなぜ他社の2・5倍を売り上げるのか? アイリスオーヤマが家電で圧勝する理由は? ダントツ企業の経営手法を知れば、ビジネスの秘訣が見えてくる。不況でも「超高収益」を生み続ける7社に注目し、読みやすいストーリー仕立てで「儲かる仕組み」を明快に解説する!


[内容]
第1章 セブン-イレブンをしのぐ40倍の超高収益──セブン銀行
第2章 ネスレはなぜコーヒーマシンを無料で配ったのか?──ネスレ日本
第3章 3年で4000種類の超スピード商品開発──アイリスオーヤマ
第4章 伝説を作り続ける地方タクシー会社──中央タクシー
第5章 世界最大の気象情報会社はなぜ日本で生まれたか?──ウェザーニューズ
第6章 「切る・削る・磨く」のニッチで世界一──ディスコ
第7章 ソフトバンク孫正義が3・3兆円で買収した謎の会社──ARM


 世の中には、みんなが名前もその仕事の内容も知っていて、ちゃんと利益をあげている大企業もあれば(自動車メーカーのトヨタとか任天堂とかがその代表格でしょう)、名前は知られているのに、経営危機に陥っている、東芝のような大企業もあります。
 そして、この本で紹介されているような、名前は知られていても、そんなに稼げそうになかったり、名前も聞いたことがないのに、そんなに儲かっているのか!と驚かされたりするような企業もあるのです。


 コンビニで遅い時間や休日でもお金がおろせるようになって、かなり便利になりましたよね。
 とはいえ、ATMを店内に設置するというのは、その店舗の経営者にとっては、心理的な負担も大きそうです。
 僕はあのセブン銀行というサービス、手数料で多少は儲かっているとしても、設置してあるコンビニにお客を呼ぶのが主な目的なんだろうな、と思っていました。
 とりあえず、お金を下ろしたら、ついでに何か買っていこう、という人も多いだろうから。
 ところが、セブン銀行というのは、ものすごく儲かっているのです。
 

 そのセブン銀行の業績をみてみよう。セブン銀行セブン&アイとは別に個別に決算情報を公開している。それによると、2017年3月期の業績は、経営収益(売上高に相当)1216億円、経常利益367億円、経常利益率30.2%となっている。
 利益の絶対額でいえば、セブンーイレブンにはるかに及ばない。しかし、単位床面積あたりで稼いでいる利益を比較するとどうであろう。ATM1台が占める面積は、わずか幅45センチメートル・奥行き60センチメートルだ。セブンーイレブンの平均的な床面積はおおよそ100平方メートル程度であるから、ATM1台が占める床面積の400倍ほどだ。利益の絶対額の違いは10倍程度なので、単位床面積あたりで比較すると、セブン銀行の利益はセブンーイレブンの40倍と極めて高収益であることがわかる。
 もちろん、その高収益性はセブンーイレブンの中にあればこその結果である。しかし、そこにセブン銀行の巧みさが隠されている。


 著者は、普通の銀行は、預金者からお金を集め、それを「融資」することで稼いでいることをまず説明しています。
 しかしながら、セブン銀行は「融資」をしない銀行なのです。

 ではセブン銀行はどうやって収益を上げているのか。実は、ATMの利用料で稼ぐシンプルなビジネスモデルである。しかも利用者が手数料を支払うのではなく、600以上の提携金融機関(銀行も含まれる)が手数料を支払うというのがミソだ。
 たとえば、セブン銀行の提携先にA銀行があるとする。A銀行に口座を持つ顧客は、普通はA銀行の支店に出向いてお金を出し入れするだろう。それとまったく同じように、顧客はセブン銀行のATMを使ってA銀行の口座からお金を出し入れできる。つまり、セブン銀行のATMは、この利用者にとってはA銀行のATMとして機能するのである。これはB銀行でも、C信金でも同じだ。
 基本的に利用者はATMの手数料を支払う必要はない。利用者に代わってATMの手数料を支払っているのは、利用者がお金を引き出している(あるいは入金している)A銀行なのである。つまり、「セブン銀行の顧客は銀行」なのだ(厳密に言えば、提携金融機関や時間帯によって利用者が利用料を払う場合もある。その場合は利用者が顧客となる)。
 A銀行の顧客は、支店よりセブンーイレブンが家の近くにあり手数料もないとなれば、セブン銀行のATMを使うだろう。しかも銀行と違って、セブンーイレブンは365日24時間、休みなく開いている。ついでにセブンーイレブンで買い物をする人も多いだろう。まさに「コンビニ」の名の通り、セブン銀行は便利(コンビニエンス)なのだ。 では、金融機関がお金を払ってまでセブン銀行のATMと提携するのはなぜか。もちろん、自分たちでATMを設置することはできるだろう。しかし、自らATMを設置するには、それなりのコストがかかる。セブン銀行のATMと提携して、顧客が利用したときだけ手数料を支払うほうが、金融機関にとってもはるかに安上がりだ。


 当初は、うまくいかないのではないかと危惧されていたセブン銀行なのですが、わずか2年半で黒字化され、人々のライフスタイルにも大きな影響を与えています。
 ちなみに、銀行に導入されている一般的なATMの機械は800万円から1000万円くらいするそうなのですが、セブン銀行のATMは、機能を絞って約200万円にまで価格を下げているそうです。

 また、各店舗の売り上げの紙幣を設置しているセブン銀行のATMから行えるようにして、オーナーの負担を軽減するのと同時に、そのお金が入金されることによって、ATMに紙幣を補充する回数を減らすことにも成功しているのです。


 このビジネスモデルであれば、融資先の調査をする必要もないし、貸し倒れのリスクも避けられます。顧客は便利だし、金融機関も自前でATMを増設するコストをかけなくてすむ。
 本当に、うまく考えたものだなあ、と感心してしまいます。
 そうか、コンビニに行って、お金だけ下ろして出るのもなんか悪いなあ、って思って買い物をすることが多かったけれど、あのATMを利用するだけでも、店にはメリットがあるのだなあ。


 アイリスオーヤマの家電製品、そういえば、最近よく見かけるけど、どんなメーカーなんだろう?と疑問に感じてはいたのです。
 家電なんて、そう簡単に参入できるジャンルではなさそうだし。
 この本を読んで、アイリスオーヤマが、景気低迷のためにリストラされた大手電機メーカーの技術者たちを集めて、必要な機能だけに特化し、コストダウンをした製品を開発することによって伸びてきた会社だということを知りました。
 アイリスオーヤマは「いかなる時代環境に於いても利益の出せる仕組みを確立すること」を企業理念の最初に掲げているそうです。

 大山社長が10%の利益にこだわる姿勢は、インタビューの発言にしばしば登場する。


大山社長「結局、お客様目線、お客様がいくらで買っていただけるか、これ値ごろ価格と言うのですけれど、これなんです。お客さんは原価を知らないんですよ。開発者は原価を知っているんです。ここにおおきな溝があるんですね。ですから、持って帰って奥さんに聞くと、お父さん、これ安いとか高いとか、奥さんはすぐに言うんです。原価は知らないけれど、高い安いってすぐに言うんです。ですから、一番大事なことは、お客様の値ごろ価格をまず設定して、そこから当社の場合、10%利益を我々の努力で引き出すことです。これを引き算の経営というのですけれどもね……」


「本当に良い製品でも10%の利益が確保できなければ止めます。でも本当に良い製品であれば10%の利益は確保できるはずなんです。価値を決めるのはメーカーでもなければ流通でもない。お客様が決めるんですね。そんなに良い製品であれば認めていただける価格で買っていただけるはずなんだというような商品開発をしています」


 では、価格競争を仕掛けられた場合、アイリスオーヤマはどうするのであろうか。


「当社の場合、ほとんどが市場創造をしてあとから追いかけられてくるのでね。我々より1割安く持って来られるわけですね。私は追いかけてきたものを叩くよりも、次に新しい市場を開拓していくというんですかね。もちろん、高いよりも安いほうがいいんですよ。でも値ごろ価格よりも安くしたからといって、お客様が1つ買うものを2つ買っていただけないんですね。それよりも新しい畑・新しい種を植えた方がいいんではないかと、こう思うのです」


 本当に必要とされるものを「値ごろ」な価格で、自社の利益も最低限確保しながら売ること。
 ある意味、当たり前のことをやっているだけなのですが、これを徹底して続けるというのは、ものすごく難しいことだと思うのです。 


 長野県の「中央タクシー」の事例を読んでいると、効率化やコストダウンも大事だけれど、そういう時代だからこそ、本当に心のこもったサービスに対するニーズも大きくなっているような気がするのです。
 「そんなことまでやらされるのは、働いている人間にとっては負担になるだけ」と考えてしまいがちですが、顧客に対して丁寧、・親切な対応をすることによって、顧客から感謝され、それが仕事のモチベーションになるというのも、やっぱりあると思うのです。


 この中央タクシーにしても、現在は「素晴らしいタクシー会社」として多くのメディアでとりあげられていますが、最初の頃は、社長の方針をドライバーたちがなかなか理解してくれなかったそうです。
 それでも、地道な成功体験を積み重ねることによって、ドライバーたちも仕事に誇りを持てるようになってきました。
 この本を読んでいると、ひとりの力だけで組織が変わるわけではないけれど、変革することができた組織には、あきらめずにやり遂げたリーダーがいることもわかります。

 AIが多くの仕事を担っていくであろうと言われていますが、まだまだ「人」の要素は大きいみたいです。
 結局、サービスを受けるのは人間なのだし。


fujipon.hatenadiary.com

アイリスオーヤマ 一目瞭然の経営術

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