琥珀色の戯言

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【映画感想】ミッション:インポッシブル/フォールアウト ☆☆☆☆☆

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あらすじ
盗まれたプルトニウムを用いて、三つの都市を標的にした同時核爆発の計画が進められていることが判明する。核爆発阻止のミッションを下されたイーサン・ハント(トム・クルーズ)率いるIMFチームは、犯人の手掛かりが名前だけという困難を強いられる。タイムリミットが刻一刻と迫る中、イーサンの行動に不信感を抱くCIAが放った敏腕エージェントのウォーカー(ヘンリー・カヴィル)が現れる。


missionimpossible.jp


2018年、映画館での24作目。
2D、字幕版をお盆期間のレイトショーで観ました。
観客は50人くらい。
やっぱり、トム・クルーズ主演映画の字幕は戸田奈津子さんなのだなあ、などと思いつつ。


今回の『フォールアウト』、ネットでの前評判はけっこう良かったのですが、上映時間は150分近いし、いまさら『ミッション・インポッシブル』というのもねえ、みたいな、なんとなく観るのめんどくさい感があったのです。
でも、観たらけっこう面白かった、というのがこのシリーズのお約束でもあるんですよね。

ネタバレすると面白くないと思うので、ストーリーにはあまり触れないでおきますが、『ミッション・インポッシブル』って、ある意味冒頭の「この指令書はあと5秒で消滅する」のお約束に「ノレる」かどうかがすべてだと思うのです。
僕はこのオープニングの「お約束」が大好きで、テーマ曲まで聴いたら、「ああ、今日はもう仕事したな」という気分になってしまいます。

いやほんと、いまの時代に、肉体派のスパイ映画をつくることそのものが「時代錯誤」なわけで、イーサン・ハントの行動とその結果をみていると「なんてヤブヘビ野郎なんだ、お前が何かやればやるほど、事態は悪化していってるじゃないか……」と言いたくなるんですよ。


スパイ映画はつくられ続けているのですが、昔は「肉体派エージェント」の映画だったのが、最近の作品ではiT担当のメンバーが必ず存在するようになったのは、時代の変化だなあ、とあらためて感じます。


それで、今回の『フォールアウト』なのですが、率直に言うと、ストーリーは支離滅裂というか、意外などんでん返しを見せようとしすぎて、観終えても、「で、結局誰が黒幕で、誰が敵だったの?」という感じなんですよ。
イーサン・ハントは、仲間を大事にする「いいやつ」なんだけれども、それはどうよ、みたいな「不殺」を突然発動して事態を混乱させてしまいます。
「お前は緋村剣心か!」と僕は内心毒づいておりました。
殺るときゃ殺るんですけどね、あっけないくらいに。


今回、CIAからお目付役として派遣されてきたエージェント、ウォーカーがまた謎の人物なんですよ。
「敏腕エージェント」なんて、ウソだろこいつ。三国志でいえば、張飛みたいなキャラ。いいとこ見せようとして勢い良くドアから飛び出したとたんに車に轢かれるスパイ!出オチ!


この映画の割り切りっぷりには観ていてニヤニヤが止まりません。やることがとにかく派手!忍ぶつもりはござらぬよ、『ニンニンジャー』を思い出します。
 

しかしながら、「だからつまらない」とか「興醒め」ではないところが、『ミッション・インポッシブル』とトム・クルーズの人徳みたいなものなのでしょう。
町中を全力疾走するイーサン・ハント!
オフィスに迷い込んで、ナビゲーションに従うために、みんなの前で窓ガラスをぶち破って出ていくイーサン・ハント!
「こんなスパイ、いねーよ!」と思いつつも、トム・クルーズが全力で走っているところをみると、「がんばれ、トム!」という気分になってくるのです。
世界はどうなってもいいから、狭心症を起こすなよ、トム。
このシーン、撮るのキツかっただろうなあ、実際に走っていたのはスタントマンかもしれないけど。
カーチェイスも空でのチェイスも、「こんなのよく撮ったなあ!」と観ていて脱帽してしまいます。ストーリー云々よりも、「ここまでやるのか!」という、痛みが伝わってくるシーンの連続です。
まるで息子の運動会を観ているような、そんな気分になってくるんですよ。
「もう何番でもいいから、最後まで諦めずにがんばってくれれば、それで十分だから」
ストーリー的には、まさに「王道」であり「お約束」なのですが、ここまで全力で「お約束」をやられると、けっこう気持ち良い。


IT系エージェントとドローン、大量破壊兵器の時代、キャプテン・アメリカがどんなにがんばっても、アイアンマンの火力とは「破壊効率」が違い過ぎるというのが明らかな時代に、ひたすら全力疾走し、敵に体当たりをするイーサン・ハントに、「老害寄り」である僕としては、共感せずにはいられないのです。マッチポンプ野郎とか思っていたけれど、僕はやっぱり、イーサン・ハントを応援せずにはいられない。


この映画の凄さって、いまの時代のスパイ映画をつくろうとしているところではなくて、「旧き良きスパイ映画」を、いまの技術で思いっきり豪華につくっているところだと思います。
2時間半の上映時間も、「ここまでやるのか」というアクションの連続で退屈しません。


中島らもさんが芝居をやるときに目指していたという、「上演中はみんな笑って普段の嫌なことを忘れられて、終演後は笑った記憶があってもどんな話だったか思い出せない、そんな作品」が、この『フォールアウト』なんですよね。


読み返してみると、全然褒めてない感じなのですが、僕はこの映画、大好きです。
なんのかんの言っても、トム・クルーズって、スターだよなあ、やっぱり。


ミッション・インポッシブル(スパイ大作戦)

ミッション・インポッシブル(スパイ大作戦)

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