琥珀色の戯言

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【読書感想】なぜ仏像はハスの花の上に座っているのか ☆☆☆


Kindle版もあります。

内容(「BOOK」データベースより)
不浄である泥の中から茎を伸ばし、清浄な花を咲かせるハスは、仏教が理想とするあり方、極楽浄土に最もふさわしい花とされる。このように仏教ではさまざまな教義が植物に喩えて説かれ、寺や墓のまわりも仏教が尊ぶ植物で溢れている。球根が土砂崩れを防ぐ特性から墓地を守る花として重宝されたマンジュシャゲ、疫病を避ける物質を持つため鬼門に植えられるナンテン、神聖な花の象徴であり寿命が長いために墓に供えられるキク。人気植物学者が、仏教が理想とした植物の生きる知恵を楽しく解説。植物と仏教の新たな魅力がわかる一冊。

 
 この新書、仏教誌『ナーム』に、2008年から2014年に連載されていたコラムをまとめていたものなのだそうです。
 そうか、まだ世の中には、僕の知らないいろんな雑誌があるものなのだな、と。
 仏教にも植物にもあまり興味がない僕にとっては、「読んでいてわかるかな?」と思いつつ読んだのですが、やさしい語り口で丁寧に書かれていて、仏教への造詣が深いとは言いがたい僕でも、それなりに理解できたような気がします。
 

 これを読むと、宗教的な意味を持たされている花(ハスやキクなど)は、見た目の美しさだけではなく、さまざまな「意味」があるということがわかります。
 けっして、いいかげんに選ばれているわけではないのです。
 その中には、かなり「現実的なメリット」も含まれています。

 それにしても、どうして数ある花の中でキクが仏花として用いられるのでしょうか。
 キクは縁起が良く、邪気を払う力があると考えられているのも理由の一つですが、もっとも大きな理由は、花の日持ちが良い点にあります。キクは切り花にして水につけておくだけでも2~3週間以上、花を楽しむことができます。
 キクは秋になり、夜が長くなってくると花を咲かせるという特徴があります。そのため、夏の間も遮光して暗い時間を長くすると花を咲かせることができます。

 要するに、「日持ちがして、一年中手に入れることができる花である」というのが、けっこう大きいんですね。
 「使い勝手の良い花」だというわけです。


 また、ちょっと役に立つかもしれない知識として、「四つ葉のクローバーの見つけかた」なんていうのも紹介されています。

 四つ葉のクローバーを一枚見つけたら、その周辺を丹念に探すと、四つ葉がよく見つかります。四つ葉のクローバーが出やすいところは決まっているのです。それでは、どこを探せば見つけることができるのでしょうか。
 四つ葉のクローバーが生じる原因はいくつかありますが、一つには、葉ができあがるときに踏まれたりして傷つけられると、奇形になって四つ葉になるのです。そのため、四つ葉のクローバーは、道端や運動場などでよく見つかります。


「幸福のシンボル」ができる原因のひとつが「奇形」だというのは、ロマンには欠けますが、納得できる話ではあります。
だから、四つ葉のクローバーは同じ場所にかたまって生えやすいし、道端や運動場でよく見つかる。
ある意味、「人間に近いところ」にできやすくなっているんですね。
 こういうのを知っていれば、「四つ葉のクローバーを探してあげる」という状況で、「すごい!」と言われることができるかも。
 まあ、今の世の中、そんな状況には、なかなかなりそうもありませんが。


 ただ、率直に言うと、この新書を「十分に愉しむ」には、仏教か植物か、せめてそのどちらかには強い興味を持っていないと、ちょっと厳しいかもしれません。
 「こんな話があるのか」と感心するところはあるのだけれど、「すぐに実生活の役に立つ」とか、「日常会話のネタになる」というようなものではありませんし。

ブッダのことば―スッタニパータ (岩波文庫)

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仏像と日本人-宗教と美の近現代 (中公新書)

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