琥珀色の戯言

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【読書感想】ホワイトラビット ☆☆☆☆

ホワイトラビット

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Kindle版もあります。

ホワイトラビット

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内容紹介
仙台の住宅街で発生した人質立てこもり事件。SITが出動するも、逃亡不可能な状況下、予想外の要求が炸裂する。息子への、妻への、娘への、オリオン座への(?)愛が交錯し、事態は思わぬ方向に転がっていく――。「白兎(しろうさぎ)事件」の全貌を知ることができるのはあなただけ! 伊坂作品初心者から上級者まで没頭度MAX! あの泥棒も登場します。

 『このミステリーがすごい! 2018年版』第2位。
 伊坂幸太郎さんは、このランキングの常連なのですが、常連なだけに、最近はハードルが上がっている印象もあるなかでの2位だったので、けっこう期待して読み始めたのです。
 読み終えての感想は、「うーん、見事! ……ではあるけど、頭がこんがらがってきたな……」というものでした。
 僕は、道尾秀介さんの『カラスの親指』を思い出していました。
 あと、筒井康隆っぽいかも(とくに『虚人たち』や『夢の木坂分岐点』の時期の)。


 後半、いろんな謎や矛盾点が、ジグソーパズルのピースをはめるようにカチッとはまっていくのは快感ではあるのですが、その快感を演出するためのピースが、あまりにもできすぎ、というか、こんなに偶然って重ならないだろう、というようなものなんですよね。
 ただ、それを「何だよこの御都合主義的な、強引なミステリは!」という憤りに至る前でせき止めているのが、伊坂幸太郎という作家のディテールの描き方や演出の上手さなんでしょうね。
 ビクトル・ユーゴーの『レ・ミゼラブル』の断片をまじえることによって、リアルな事件というより、記号というか、寓話的な物語であるような気がしてきますし、オリオン座の話も「何これ?」と思わせておいて、うまく取り入れられているのです。
 「神の視点」って、現代小説では、忌避されているというか、むしろ、前世代の遺物のように考えてしまうのですけど、この作品には、それが妙に似合っているのです。
 「神の視点で全貌が見えるミステリ」を書こうという目的で、『レ・ミゼラブル』がモチーフになったのか、『レ・ミゼラブル』へのオマージュとして、この作品が書かれたのか、いったい、どちらなのだろう?
 僕は小学生くらいの頃、簡略版の『ああ、無情』を読んだ記憶はあるのですが、それ以降は、ミュージカル映画の『レ・ミゼラブル』を観た記憶しかありません。
 あれは素晴らしい映画ではあったのだけれど、けっこう長いという『レ・ミゼラブル』、一度くらいはちゃんと全編読んでみるべきなのかもしれないなあ。さすがに、5年はかからないと思うけど。
 

 この『ホワイトラビット』、正直、「うまいなあ!」と感心する一方で、うますぎて、鼻につくような気もします。
 『死神の浮力』のように、「うまさ」を二の次にして、説教くさく思えるくらいに「伝えたいこと」をぶつけてくる作品もあるんですよね、伊坂さん。
 本当に、いろんな作品が書ける人で、読む側もハードルが上がってしまいがちなのですが、この『ホワイトラビット』、会話やキャラクターは「軽快」なのだけれど、謎解きについては、登場人物の相関図をつくりながらミステリを読むのが好き、というような「本格派」向けです。


アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)

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