- 作者: 真藤順丈
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2018/06/21
- メディア: 単行本
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- 作者: 真藤順丈
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2018/06/21
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内容(「BOOK」データベースより)
英雄を失った島に、新たな魂が立ち上がる。固い絆で結ばれた三人の幼馴染み、グスク、レイ、ヤマコ。生きるとは走ること、抗うこと、そして想い続けることだった。少年少女は警官になり、教師になり、テロリストになり―同じ夢に向かった。超弩級の才能が放つ、青春と革命の一大叙事詩!!
第160回直木賞受賞作。
とにかく、ものすごい熱量というか、「熱さ」を感じる本でした(「厚さ」も感じずにはいられませんが)。
正直、読み始めて慣れてくるまでは、けっこう読むのがつらかったんですよね。
沖縄の方言で丁寧に書かれていて、主な単語には「沖縄での読み方」がルビとしてふられているのです。
例としては、「親友(イィドゥシ)のグスク」「弟(ウットウ)のレイ」「命びろいの宴会(ヌチ・ヌ・スージ)」など。
読んでいると、知っている単語を方言での発音で読み返し、また、寓話のような語りを意識しているのか、話の途中で、語り手のツッコミが入ってきて、どうも、物語を追っていくうえでの集中力が削がれる感じがします。
太平洋戦争後の沖縄という、実際にある場所で、実際にあった出来事を駆使しながら、フィクションである3人(+1人)の物語が描かれていくのですが、あの時代の沖縄を自分があまりにも知らなかったことに、罪の意識すら感じずにはいられなくなるのです。
沖縄の人たちは、戦争末期に、絶望的な状況のなかで「自決」を迫られたり、多くの大切な人を失ってきたりしたあと、戦争が終わっても、「占領」「基地がある島」として、「占領軍」から、さまざまな屈辱的な仕打ちを受けてきたのです。
戦争が終わったあとに生まれた、団塊ジュニア世代の僕は、アメリカの占領政策は、かなりマシなもので、そのおかげで日本は高度成長を成し遂げることができた、と考えていたのです。
でも、当事者たちにとっては、そんな簡単なものでも、甘いものでもありませんでした。
この小説を読んでいると、沖縄がアメリカから返還されたことが当たり前だと感じてきたことや、沖縄の人たちが日本に所属することを望んでいるはず、と思い込んでいたことに対して、「本当にそうなのだろうか?」と自問せずにはいられなくなるのです。
内容的には、ピカレスクロマンであり、スパイ小説であり、恋愛小説であり、灰谷健次郎さんのような戦後の教育的な小説でもあり、という、さまざまな要素を持っており、飽きないとも言えるし、結局、主人公3人が成し遂げたことは何だったのだろう?とも思えてきます。
むしろ、いろんな人が、彼らのように、自分なりの「やるべきこと」を少しずつやってきた先に、今の沖縄があるのだ、ということなのだろうか。
今の沖縄の状況を思うと、「ここまでやっても、結局、彼らは大きなことは何もできなかったのではないか」という疑問は正しいのでしょう。
こんなにいろんな人が犠牲になったり、理不尽な仕打ちに耐えたりして日本に復帰したにもかかわらず、沖縄は、日本のなかで、相変わらず「貧乏くじ」を押しつけられ続けているようにみえます。
というか、僕自身も、「どうせ今そこにあるのだから、もう、そのままガマンしてもらうのが、いちばんマシな方法なんじゃない?」って、思ってしまうのです。
「基地は残るんだね」
チバナは安堵とも幻滅ともつかない表情を浮かべた。
「怒るだろうね、復帰協の人たちは」
「もうなんだか、おれは記憶喪失になりたいよ」グスクには驚きも喜びもなかった。「基地の問題はうやむやにされて、核や毒ガスもなくならない。戦闘機は墜ちつづけて、娼婦の子は慰みものにされる。この返還で喜べるのはうしろめたさに格好のついた日本人(ヤマトンチュ)だけさ」
僕は「うしろめたさすら感じていない日本人」なのだな、と、自覚せざるをえなかったのです。
でも、沖縄で起こってきたことを考えると、この小説ひとつを読んだだけで、「わかったような気分」になるのは、あまりにも厚顔無恥だよね。「知ってほしい」という願いと、「どうせ、わかるわけないけど」という諦め、みたいなものが、この小説には入り混じっています。
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