数百年後の未来。サイバー・ドクターのイド(クリストフ・ヴァルツ)は、アイアン・シティのスクラップ置き場でアリータ(ローサ・サラザール)という意識不明のサイボーグを見つける。目を覚ましたアリータは、一切の記憶をなくしていた。だが、ふとしたことから並外れた戦闘能力を秘めていることを知り、なぜ自分が生み出されたのかを探ろうと決意する。やがて、世界を腐敗させている悪しき存在に気付いた彼女は、立ち向かおうとするが......。
アリータかアリーナかアニータか、それが問題だ。
2019年、映画館での5作目。
平日の朝の回で、観客は20人くらいでした。
木城ゆきとさんのコミック『銃夢』をジェームズ・キャメロン監督が制作と脚本を手掛けて実写映画化したもので、予告では、キャメロンさんが、『銃夢』という作品への思い入れを語っておられました。
監督は、『シン・シティ』のロバート・ロドリゲスさんと、まさに「この作品らしいタッグ」となっています。
映像をみていると、『ブレードランナー』っぽい、サイバーパンク的な世界観というのが伝わってきたのですが、お金と手間と技術をかけると、ここまでスムースな映像になるのだな、と感心せずにはいられませんでした。
このあいだ観た『アクアマン』のときも感じたのですが、CGの進化で、これまでの映画では、費用と手間の関係からか、省略せざるをえなかった「世界のディテール」に、ものすごい描き込みがされているのです。
最初は、アリータの目が大きくて、『リメンバー・ミー』みたいだな、と思っていたのだけど、いつの間にか気にならなくなっていました。
なぜ、ああいう描き方にしたのだろうか、とも思うのですが、「記号化」しないと、人間とサイボーグであるアリータの見分けがつかなくなる、というのを考えたのかもしれませんね。
映像的には、よくできているがために、かえってあまり「ドヤ映像」感がない、という気がするくらいです。
ストーリーは、記憶を失った最強の戦士だとか、失われた拳法の使い手だとか、文字通り、上層に住む人たちに支配された下層民とか、「なろう小説と古典SFのネタをてんこ盛りしたような作品」なんですよ。ベタで面白みがない、のだけれど、良く解釈すれば、映像や世界観を楽しむ邪魔をしない、とも言えます。動物愛護の精神が垣間見えたりして、ちょっと微笑ましくなるところもありました。
とりあえず、映像の迫力と淀みのない展開で、2時間飽きずに観ることができる佳作だと思います。
あえて言えば、というか、僕のなかでいちばん気になっていたのは、アリータの恋人役の男のことで、ほんとこいつが僕からすれば「ひどいやつ」なんですよ、「情けないやつ」というべきか。やることなすこと、アリータや周囲の人に迷惑をかけっぱなし。本人は悪党、というわけじゃないのかもしれないけれど、とにかく自分さえよければいいのに、それを自覚していない。
アリータ、そんな自己中男、さっさとかかと落としで真っ二つにしちまえ!と思うのですが、愛というやつは人の(サイボーグだけれど)判断力を低下させるものなのでしょうね。
観終えて、そういえば、「主人公が記憶喪失で、本当はすごい存在で、大きな敵に追われていて、モーターボールに参加して……」って、アリータがおっさんだったら、『コブラ』だよなあ、とか考えてしまいました。『コブラ』は、ラグボールだったけど。
……というような、尺を引き延ばすような話を書かなければならないというのも、なんだかねえ。
端的にいえば、「映像はすごい、ストーリーはありがち、サイバーパンク好きで何も考えずに2時間楽しみたい人にはオススメ」です。
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